先行きが見えない戦争による、石油不足。これから影響が深刻化しそうな航空業界と医療の現場を取材すると、病気の治療や検査ができなくなる恐れも…
【写真を見る】透析やMRIができなくなる恐れも…医療現場に迫る危機 医師「やっていけない」 深刻化する“石油危機”
(大石邦彦アンカーマン)
「中部空港のスカイデッキに来ています。駐機場には、何機か航空機がいます。ここで使われるジェット燃料にも、中東情勢の影響が出ています」
年間約1100万人が利用する、東海地方の空の玄関口「中部空港」。旅行客の関心も、やはり石油です。
(シンガポールから)
Q.シンガポールのオイルは高い?
「高い。上がっている。(50セント上がって)3ドル/Lになっている」
(親戚に会いに韓国へ)
Q.燃油サーチャージ値上げという話もあるが?
「それを気にして、4月ならまだ大丈夫かなと。韓国のお盆に行くのが一番いいかなと思ったけど、(韓国がお盆の)10月ぐらいだとちょっと高くなるかなと思って」
航空機の主な燃料は、石油由来の「ケロシン」。やはり、中東情勢の影響が拡大しています。
巨大な燃料タンクは満タンでも6日分
(大石)
「今から、中部空港の燃料タンクがある場所に向かいます。なかなか入れない場所ですが、特別に入れさせてもらいます」
保安上、場所は非公開という燃料の貯蔵エリアに入れてもらいました。
(大石)
「お~!大きいですね。見上げんばかりの高さ。これは何階建てぐらい?」
(中部国際空港 テクニカルコネクト 酒井亮さん)
「高さは18メートル(6階建てビルくらい)あります」
6000キロリットル入るという巨大なタンク。満タンで、6日しか持ちません。
燃料価格は戦争開始後「2.5倍」に
(大石)
「巨大タンクがパイプで繋がっています。パイプがむき出しのまま駐機場に行く?」
(酒井さん)
「駐機エリアでは埋設されています。パイプは総延長で12キロ」
燃料は、地下のパイプを通って駐機場まで運ばれ、航空機に補給されます。
現時点で、供給量に影響は出ていませんが、価格は戦争が始まった後、2.5倍にも跳ね上がっています。
日本航空と全日空 6・7月分の「燃油サーチャージ」大幅引き上げへ
航空各社は、緊急声明を出して燃油サーチャージの値上げにも言及。
(日本航空・鳥取三津子社長 4月1日)
「経費の削減など、やれることを全てやった上で、お客さまに負担をかけるような検討もしていかなければいけない」
(ANAホールディングス・芝田浩二社長 4月1日)
「4月と5月の実勢価格を見ながら、必要に応じて改定も検討していく」
日本航空と全日空は、6月と7月分の「燃油サーチャージ」を大幅に引き上げる見通しで、ヨーロッパやアメリカなどを結ぶ路線では、全日空が2万3100円、日本航空が2万1000円それぞれ値上がりする予定です。
(大石)
「今は、このタンクが定期的にいっぱいになるわけですが、中東情勢が長引いて、タンクがいっぱいにならなくなったら、我々も旅行とかにも行けなくなるということですか?」
(酒井さん)
「そうですね。影響が出たら、そうなるかもしれませんね」
医療現場にも深刻な不安「石油製品なかったらやっていけない」
石油不足も心配される中、深刻な不安が医療現場にも。
(名古屋掖済会病院・北川喜己院長)
「石油製品がなかったらやっていけない。帽子・マスク・ガウン・手袋、これは全部石油製品」
名古屋掖済会病院、病床数600を超える地域の拠点病院です。
(北川院長)
「透析室は、石油製品をたくさん使っている」
血液をきれいにする「人工透析」。腎不全の患者に2、3日に一度必要な治療です。
透析治療にも必要な石油製品
(北川院長)
「透析のカラム・チューブは石油製品」
チューブなどの医療器具は使い捨てで、原料は石油から作る「ナフサ」。ここでは1日約30人が透析治療を受けていて、そのたびに新しいものが必要です。
(北川院長)
Q.今のところ物品不足はない?
「今はないので、安心していただければと思うが、透析自体が命と直結しているので、なくなるということになると、透析の患者さんは不安になるし、心配されると思う」
非常用電源の燃料は重油 なくなったら「患者の命が危ない」
他にも点滴の容器や、錠剤を包むシート、粉薬の袋など、医療現場では石油由来のプラスチック系製品が欠かせません。さらに、屋上に向かうと…
(大石)
「何やら複雑な機械が、お目見えしましたが…」
(北川院長)
「停電した場合の非常用電源」
病院では非常用電源の燃料に、約1600リットルの重油を貯蔵しています。これで、5日分の電力を賄えるといいますが…
(北川院長)
Q.重油が入ってこず、非常用電源が動かなくなったら?
「命に直結している。電気が来なくなれば、人工呼吸器や輸液のポンプが動かなくなる。本当に患者さんの命が危なくなる」
MRIの装置に必要な「液体ヘリウム」にも不安が
戦争で供給不安が心配されるものは、石油以外にも。
(名古屋掖済会病院・川口範洋技師長)
「この装置の中に、液体ヘリウムが約1000リッター入っています。それがなくなってしまうとMRI検査ができない。液体ヘリウムは、そんなに早く減ることはないが、戦争が長く続いて供給が難しくなると、装置はあっても検査ができない状況に陥る」
MRIの冷却に必要な液体ヘリウムは、4割が中東からの輸入。このままだと、検査に支障がでる恐れも。
(北川院長)
「元々日本の病院の7割が赤字の中、コスト高で赤字が膨らみ経営が成り立たなくなれば、倒産になる。石油が止まっても医療は止められないので、本当に原油が入ってこないとなれば、(国内の)優先順位を考えていかないといけない」
問題の根本にある戦争はいつ終わるのか。日本政府も外交で、どのような役割を果たすのかが注目されます。


