工藤公康氏は“令和版の落合博満氏”!? 中日・涌井投手が語る対戦相手として恐れた“ホークス野球” 選手らが期待することは【若狭敬一解説 後編】

中日ドラゴンズの来シーズンからの監督に、工藤公康さんの就任が決定的になりました。なぜ工藤氏なのか?ドラゴンズはどう変わるのか?組閣は?

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若狭敬一アナウンサーが、独自取材を交えて新監督人事の背景とチーム再建の展望を徹底解説します。

■若狭 敬一(CBCアナウンサー)
1998年CBC入社。
中日ドラゴンズ応援番組「サンデードラゴンズ」のMCを18年間務め、現在は「チャント!」「newsX」CBCラジオ「若狭敬一のスポ音」などを担当。
中日ドラゴンズの取材歴は四半世紀を超える。

この記事は後編です。前編と中編は以下のリンクから読むことができます。

【前編】中日ドラゴンズ・来季監督に工藤公康氏が就任へ 球団社長が語ったオファーの“舞台裏” なぜ外部から?

【中編】中日・工藤新監督 就任へ 「愛知出身」は人選に関係なかった!? 工藤氏が考える監督像は「中間管理職」 令和の指導スタイルで強竜復活目指す

選手たちに聞く “新監督”への期待

(若狭敬一アナウンサー)
私、選手にも電話しちゃいました。快く取材を受けていただいたのは、まず柳裕也投手です。

柳投手は工藤さんとは接点はないそうですが、「球界のレジェンドで監督としてもホークスで日本一を5回も経験されている名将というイメージです」と話していました。

「ピッチャーのご出身なので、ピッチャーに対する目は厳しいと思います。1から鍛え直してアピールできるよう頑張ります」とのこと。

そして、涌井秀章投手にも取材しました。

「楽しみです。僕はパ・リーグ時代、ずっと強いホークスと対戦していました。当時、敵として戦っていて感じたことは『ホークスはやってみたい野球をしている』ということです」

「やってみたい野球」とはどんな野球なのか。

涌井投手が語る“対戦相手として恐れたホークス野球”

「1点を確実に取る野球です。1点が取れる時に確実に取ってくるのがホークスでした」

 私の当時のホークスのイメージですが、それこそ柳田選手がガンガン打ってて、デスパイネもいて、今宮さんは小技もドカーンもあって、内川さんがしょっちゅうヒット打つ、といった、どちらかというと相手を圧倒しているっていうイメージがありますが、涌井投手こう続けていました。

「確かにボコボコにやられるっていうこともあったんですが、実はソフトバンクとやってると『あれ、知らない間に1点取られてる。あれ、気づけばその1点が2点になって2点が3点になって』という感覚がありました。そして、最後は強力なリリーフ陣が出てきて、結局やられる」

「例えば2対0とかでリードしている展開でも、気づけば1点入って、2対1、あれ気付けば2対2になり、2対3になり、9回またすごいピッチャーが出てきて…。あーっ、ていう試合がむちゃくちゃ多かったんです」と続きます。

九州でこの記事をご覧なってる方は「そうだよ!そういうチームだったんだよソフトバンクは」とお思いの方がたくさんいると思います。

これは涌井さんがロッテのエースとしてガンガンやっていた時代です。ソフトバンクって、「なんかやられた」っていうよりも、緻密に緻密に、ねちっこく確実に、1点をリードしている展開でもビハインド展開でも、積み重ねていって結局勝つっていう試合が多かったそうなんです。

これが涌井さんのやってみたい野球とのこと。「これを今の若いドラゴンズに浸透させたらどうなるのか楽しみです」と涌井さんは話していました。

これが先ほど球団が話していた通り、工藤さんの知見経験、筑波大学大学院でも勉強されている、いろいろな経験をゲームに落とし込んだときに、勝ちに繋げられるのではないか。日本一5回ですから。

工藤さんは西武ライオンズなどで現役時代も日本一を何度も経験しているので、「勝つとはこういうことだ」ということはご存知です。

それを具体的にゲームに落とし込んだ時っていうのは、実はバカバカ打って、ぴっしゃぴしゃ抑えるんじゃなくて、そういう細かいところの1点の積み重ねで結果勝ってるっていうことなんですね。

さらに、ワンシーズンのマネジメントに関して言うと、和田毅さんとのYouTubeの中で、工藤さんは「監督って勝たなきゃいけないと思う反面、ワンシーズンで50敗できるんだよ」と言っていました。

この逆算です。

「50敗できる」1シーズンを見据えた逆算のマネジメント

例えば、選手を酷使して、目の前の一勝を追い求めてパンクして、夏場ズルズルズルズルっと落ちてしまうのではなく、「50敗できる」という逆算のマネジメントから、「もうこの試合はもう捨てる」っていうマネジメントをしながら、結果最終的に勝つっていう。

1試合にすると1点1点をちゃんと積み重ねていきますが、トータルマネジメントでいうと「50試合は負けられる」という意識の方なんですね。来ているファンに対してはきっと「申し訳ない」とは、当然、工藤さんも思っていると思う。

ドラゴンズも球団として、メンバーが揃ってきました。組織改革もしている。そこに外部の知見や経験が必要だということで工藤さんがやってくる。工藤さんには勝ってきた実績がある。

これを来年以降見たい…また来年と言ってしまいました。私が一番焦っている。早く結果が見たいと思ってしまっています。笑

そうじゃなくて、100周年に向けて、 ちょっと気を長く持ちながら見守りたいですね。楽しみでしかありません。

48歳まで現役だった工藤氏

さらに涌井さんはこうも話していました。

「僕や大野(大野雄大投手)としては、工藤さんから長く現役生活を続けられるためのヒントを聞きたい。まだまだ我々にも伸びしろがあると信じています」と。

涌井投手も大野投手も大ベテランです。そうした中で彼らのアスリートとしての「まだまだやりたい。まだまだ上を」という心にも火をつけたという今回の監督人事なんだと思います。

工藤さん、48歳までやってますからね。ぜひ涌井投手にも、大野雄大投手にもそれこそ40を過ぎて45過ぎても頑張ってほしいなと思います。

ドラフト 競合したらくじは誰が引く?

さて、8日と9日にスカウト会議が行われています。

9日が球団フロントも参加してのスカウト会議ですが、9日は工藤さん来ません。ドラフトに関しても「ベースは球団におまかせしますという」スタンスです。

でも、「こういうリストが上がっています」「こういう選手を獲得しようとしています」という選手情報は工藤さんと共有するそうです。

ではドラフト会議当日の10月22日に会場に来るのかどうなのか。これは現時点ではまだわからないそうです。工藤さんのスケジュールとドラフト会議がうまくはまるかどうかはまだ分からないそうです。

ただ、競合した場合はくじ引かなきゃいけないですよね。「誰が引くか問題」があるわけですが、くじを引くのは新監督じゃないという場合もあり得ます。

新監督の正式契約の日もまだ現時点では分かりません。正式に判子を押すとなると名古屋にいらっしゃるでしょうし、その時に新監督就任会見みたいなことが行われる可能性もあります。

ではいつ名古屋に来るのか。まもなく1軍の秋季練習がスタートします。今もう既に2軍は残留組の秋季練習を行っていて、多くの選手が宮崎のフェニックスリーグに行っています。

工藤さんは「スケジュールの合間を縫って顔を出したい」との意向を示しているそうです。だからある日突然来る可能性もあります。秋季キャンプも同様に11月なんですが、スケジュールの合間を縫って、 顔を出したいとの意向を示しているそうです。

加藤球団社長も話していましたが、工藤さんはドラゴンズを年がら年中見ているわけではないので、まだ全選手を隅々まで知っているわけでは無い。

秋季練習や秋季キャンプで実際に来ていただいて、しっかり見てもらってチームを把握してもらうところから始めるということなんでしょうね。

大事なことは「勝つこと」ではない

工藤さんは監督にとって大事なことについて、「見ること」と「知ること」と言っています。当然、勝つことは大事ですが「勝つこと」とは言っていないんです。

では「知ること」とは何なのか。選手たちが「どうなりたいか」を知ることだそうです。選手たちがプロ野球選手としてどうなりたいかを共有することが監督にとって一番大事だと話していらっしゃいます。選手たちの理想像を共有して、そのために必要ならばハードワークを課していくということなんですね。

さらにそれを全員にやらせるのではなく、個別最適化をしていくということなんで です。

色々とお話ししてきた中で、ストンと落ちてきていることがあります。ここからが今回のまとめです。

工藤公康は“令和版の落合博満”

工藤公康さんはひょっとしたら、令和版の落合博満さんかもしれません。落合さんが一番大事にしていたことは、選手を「見ること」「知ること」です。

落合さんは、試合前のバッティング練習をいつも三塁側のベンチとバックネットのちょうど間の場所から見てました。

「もっと見やすいところあるでしょ」「何で決まったようにそこから年がら年中見てるんだろう」と思っていましたが、落合さんは「いつもと同じところで見た方が違いがわかるだろう」と言っていました。

落合さんは「見ること」「知ること」を徹底していたんですね。

落合さんに「監督としてどうやってワンシーズンをマネジメントしていますか?」 と聞いたことがあります。「大事なのは夏場だろう。でも、負けられるもん」と言っていました。実は落合さん、負けの計算もしていたんですね。

1試合1試合を全力120%でやっていくと必ずどこかで疲れてくる。そうした中で、「残念ながらもう捨てなきゃいけない」という試合はなるべく労力をかけずに負けていくんです。それで全てのマネジメントをしていたんです。

あと、落合さんが常々言っていた言葉があります。

「現役選手には1年でも長く現役でいて欲しいんだ」

私の取材と、落合博満さんから出てきた言葉、加藤球団社長の話、工藤さんがYouTubeで語ったこと、それに選手たちの言葉を総合すると、過去の落合博満さんと共通する部分はたくさんあるような気がします。

…私、工藤公康さんと1回も会っていないのになんか工藤さんのことすごい知ってるみたいな感じになっていてごめんなさい。笑 

万が一工藤さんがご覧になっていて、間違っていたらコメントください。笑

1点落合さんと違うところがあるとすれば、工藤さんは球団側にベースの部分を相当任せるというところでしょうか。落合さんも球団側に任せていた部分もありますが、コーチ人事やドラフトなど、チーム編成に意見は出していました。

涌井投手の話を思い出してください。「強い時のホークスというのは、バカバカ打って圧倒するんじゃなくて、一点一点を緻密に取っていく」と話していました。この野球は、落合野球です。

強かった時のドラゴンズというのは、隙なく、緻密に一点一点もぎ取れるところで取っていく。強固な投手陣が逃げ切り、勝ちを積み重ね、相手を引き離し、リーグ優勝するという流れがありました。

工藤さんは、“令和の落合博満さん”かもしれません。

この記事は後編です。前編と中編は以下のリンクから読むことができます。

【前編】中日ドラゴンズ・来季監督に工藤公康氏が就任へ 球団社長が語ったオファーの“舞台裏” なぜ外部から?

【中編】中日・工藤新監督 就任へ 「愛知出身」は人選に関係なかった!? 工藤氏が考える監督像は「中間管理職」 令和の指導スタイルで強竜復活目指す

【後編】工藤公康氏は“令和版の落合博満”!? 中日・涌井投手が語る対戦相手として恐れた“ホークス野球” 選手らが期待することは

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