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なぜ?町工場が開発した"土鍋"が人気!余熱で調理が可能!秘密は高度な"削りの技術"

町工場が開発した"土鍋"が人気

鉄やチタンなどの素材を高精度な技術で削る町工場「中村製作所」(三重・四日市市)。今でこそ引く手あまただが、かつてはリーマン・ショックの影響で倒産の危機にあった。


「悔しかったらメーカーになれば?」。依存していた大手メーカーから受けた屈辱的な一言…。その悔しさをバネに、3代目・山添卓也社長が新たに仕掛けたのは、思いもよらない商品だった。


【動画】なぜ?町工場が開発した“土鍋”が人気!余熱で調理が可能!秘密は高度な“削りの技術”

削りのプロ集団が手掛けた「土鍋」


  • ベストポット


リーマン・ショック後、どん底の状態から取引先を広げ、今では潜水艦や航空機、ロケットの部品まで手がける中村製作所。新しく目をつけたのが「鍋」だった。
その名も「ベストポット」は、四日市市の伝統工芸品「万古焼」を採用した土鍋。山添社長は、「我々が精密に削ることによって、無水調理に使えるハイブリッド鍋を開発した」と話す。



  • 音が鳴ったら火を止める。余熱で調理が可能


「ベストポット」は、フタに穴がないため、火にかけて沸騰するとフタが蒸気で浮き上がり、カタカタと音が鳴るのが特徴。これを合図に火を止めれば、余熱で調理が可能だ。



  • 無水カレー


自社が運営するカフェ「中村製作所 オープンファクトリー」では、「ベストポット」で作った無水カレーなどが楽しめる。「家で作る水ありのカレーとは違って、具材もゴロゴロしていておいしかった」「家でも鍋でご飯を炊くが、この鍋で炊くと本当においしかった」。客からは絶賛の声が上がる。


実はこの「ベストポット」、カフェの裏で作られている。ついに中村製作所は、自ら製品を生み出すメーカーになったのだ。
しかし、削る技術はどこに使われているのか? 早速、その工程をのぞいてみた。


削りの技術を支える「ぜいたく」な秘密


  • やすりを使ってバリと呼ばれる不要な部分を丹念に削る


まずは、型に流した土を押し固めて成型。2日間乾燥させたら、やすりを使ってバリと呼ばれる不要な部分を丹念に削っていく。



  • 「ベストポット」に吸盤を付け、釉薬へ


「ベストポット」に吸盤を付け、釉薬へ。こうすることで、電気釜で焼き上げた時、表面にガラスの膜をまとわせることができる。




  • 電気釜は全方向から焼き上げることができ、ムラが出にくい


そして焼き上げの工程へ。電気釜は全方向から焼き上げることができ、ムラが出にくい優れものだ。



  • 蒸らしも含めて2日間…釜を開けると、美しく上品な仕上がりに!


蒸らしも含めて2日間…釜を開けると、美しく上品な仕上がりに! だが、これで完成ではない。肝心の“削る”作業が残っている。




  • 鍋の気密性を高めるため、細かく削り、隙間をなくす


マシンを使って削るのは、フタと接触する部分。鍋の気密性を高めるため、細かく削り、隙間をなくす。こうすることで熱が長時間逃げず、余熱調理が可能に。中村製作所の「削る」技術が「うまい」につながっているというわけだ。



  • 工業用のダイヤモンドをまぶした砥石


さらにこの作業には、ぜいたくな秘密があった。作業員に聞くと、「工業用のダイヤモンドをまぶした砥石を使って鍋を削っている。割れやすい陶器も簡単に削れる」とのこと。
さまざまな素材を試した結果、デリケートな陶器を削るのに最適だったのがダイヤモンドだった。「空気以外はなんでも削る」その技術力が、思わぬところで発揮されていた。


最後に山添社長は、「今は陶器を削ることが一番注目されているが、我々としては、金属も削っているという自負がある。金属と陶器を融合したハイブリッドなもの、我々にしかできないようなものを検討していきたい」と語った。