アプリでも視聴可能(無料)

“飲めるパン”!?ユニークなアイデアがいっぱい 有名ベーカリーと小学生がコラボ「コロナ禍の子供達に楽しい事を」

 ジェイアール名古屋タカシマヤの人気ベーカリーショップ、ポンパドウル、ル・シュプレーム、メゾンカイザー、ブールアンジュ。

 この4店舗のパンを、とある“試食会”でほおばるのは、名古屋の小学生たちです。


男子児童:
「めちゃくちゃウマイ!今までのパンよりウマイ!」


女子児童:
「サツマイモとゴマが合わさっていて美味しいです」

 実は、食べているパンは全て、その小学生たちのアイデアが形になったもの。11月4日からタカシマヤで発売が始まりました。

 有名ベーカリーと子供たちとのコラボ、その裏側に密着しました。

■仕掛け人「コロナ禍の子供たちに楽しいことを」


 このプロジェクトは、今年5月にスタート。仕掛け人はジェイアール名古屋タカシマヤ・パン売場マネージャー、可児茉梨江さんです。

仕掛け人の可児さん:
「コロナ禍で子供たちが学校にも行けないという報道を見て、何か地域の子供たちに私の仕事を通じて楽しいことが出来ないかなと思ったのがきっかけでした」


 声を掛けたのは、自身が卒業した名古屋市中川区の常磐小学校。4年生の総合学習で一緒にパン作りをすることになりました。


常盤小学校 安井教頭:
「コロナ感染防止で様々な事が中止又は延期ということになっています。その中で子どもたちが考えたことを実現してくれる素晴らしいご提案。ぜひ取り組ませて頂こうと思い、協力させて頂きました」

 6月下旬。感染拡大で直接子どもたちには会えない時期。可児さんはこんなビデオを作って語りかけました。


可児さん(子供たちへのビデオメッセージ):
「今回、常磐小学校の皆さんにイチジクとサツマイモを使って新しいパンを作ってもらうことになりました」

 共に進めるプロジェクトでは、愛知県産の材料を使って秋の発売を目指します。選んだ食材は、愛知が日本一の生産量を誇るイチジクと、秋に美味しさを増すサツマイモです。


 このビデオメッセージを見た4年生143人から、7月下旬に集まった様々なパンのアイデア。生産者とパン職人たちによるアイデアの選定会が始まりました。

<可児さん(選定会の席上)>
「これはちょっとビックリしましたね、『飲めるオリジナルパン』。ジュースのように飲みたいという気持ち。やっぱりパンを飲もうという発想が私たちには無かったので」

 他にも、秋の落ち葉や、ネコの肉球、キツネの顔をイメージしたパンなどユニークなアイデアがいっぱいです。そこにはこんな思いも書かれていました。

<子供たちからのメッセージ>
「今はコロナウイルスだから、健康に良いようにヨーグルトを入れたり、食べた人がニコニコしてくれたりするように、思いを込めました」

「いつかマスクを外してみんなが笑顔を見せられる日が来ると言う思いをパンに込めました」 

 選定会のメンバーが悩んだ末に決めたのは、6種類のパン。そこに、他の児童たちのアイデアも盛り込んで形にすることに。このうち2種類のパンを作ることになったポンパドウルの製造チーフ・濱村さんは…。

ポンパドウル 濱村さん:
「子供たちの発想が柔らかくて。自分たちが『常識』と思ってやってきたことも一杯あったので、もっと柔らかく考えないといけないなと気づかされました」

 早速4店舗が分担して試作です。子供たちのアイデアをどう演出すべきか、腕の見せ所ですが…。


同・濱村さん:
「お客様に買って頂くパンなので安易なパンは作れないし、子供たちの気持ちも考えながらやらないといけないというのは難しいですね」


 まず仕上げたのは、サツマイモのメロンパン。見た目からは想像がつかない味のミスマッチがアピールポイントです。

同・濱村さん:
「美味しいなぁと思えるメロンパンが出来たと思います」


 ところが、もう一つのサツマイモのデニッシュには少々苦戦。焼き上げたデニッシュパンが冷めた時、サクサクとした食感が生まれますが、思ったイメージに近づけるため、試作は10回を超えました。

同・濱村さん:
「何回も生地を切って、どんな形にしたらサツマイモっぽくなるのかを考えながらやるんですけど、焼いてみたら全然違ったりとか…」

 みんなが笑顔になれるパンの追求は続きました。

■選ばれたアイデア発表も…静かな子供たちにコロナ禍の現実


 10月上旬、仕掛け人の可児さんは小学校へ選定会の結果報告に訪れました。ようやく新型コロナの感染状況が落ち着き、体育館で子どもたちと初顔合わせ。選ばれた6種類のアイデアを伝えます…。

可児さん:
「(子供たちに対して…)一個目がサツマイモパン、サツマイモの角切りを上に乗せて…」

 待ちに待っていたコラボパンの発表に、子供たちは大騒ぎ…と思いきや、可児さんからの発表に静かに耳を傾けます。実は、感染予防のため「大勢で集まる時には大声を出さないように」と半年以上も指導されているため、それを守っているのです。

 しかし、一人一人に話を聞くと、子供たちからは期待感が伝わってきました。


児童:
「自分のパンが選ばれて楽しかったです。サツマイモのメロンパン」

別の児童:
「自分たちが考えたパンを作ってもらえるのが楽しみで、どうしても心が落ち着かない…」

■子供たちと一流パン職人がコラボ…そのお味は?


 その2週間後、ついに試食の日がやって来ました。

 早朝のパン工房で1人パンを焼くポンパドウルの濱村さん。普段の仕事と並行して、夜を徹し、2種類のパンを焼き上げました。サツマイモのメロンパンは思い通りの仕上がりに。一方、苦戦していたデニッシュの焼きあがりは…。


濱村さん:
「本社の製品開発の方々のアドバイスももらって、子供たちで考えたアイデアもあって、良いパンが出来るのかなと思います」

 濱村さんは横浜にある本社の開発チームの協力も仰ぎ、最後に塗るトッピングソースをひと工夫したといいます。

濱村さん:
「(食べて…)うん、大丈夫です!」


 こうして完成した小学生と有名ベーカリーのコラボパン6種類。


ポンパドウルが作ったのは『さつまいものメロンパン』と『さつまいものデニッシュ』。ル・シュプレームが作ったのは『秋のもりつけ食パン』。メゾンカイザーが作ったのは『さつまいものくしパン』。そしてブールアンジュが作ったのは『ルレ・さつまいも』と、『いちじくとクリームチーズのデニッシュ』。どれも美味しそうです。


 プロジェクトスタートから約5か月。いよいよ小学校で、待ちに待った試食タイムです。

男子児童:
「サクサク感がモリモリだから、めちゃくちゃうまい!」

女子児童:
「普通に食べるメロンパンと違う味がする」


別の女子児童:
「みんなで考えて作ったし、すごい良いアイデアだから、とても美味しかったです」

 大喜びの子供たち。その反応に、企画した可児さんは…。

可児さん:
「今日実際に試食会をやって、やっぱり子供たちの笑顔を見られたのが一番よかったです」

 コロナ禍の中で、子供たちと一流パン職人たちが一緒に作り上げた特別なパン。ジェイアール名古屋タカシマヤで11月17日まで販売されています。