名古屋市長選の争点 6年間閉鎖の「名古屋城天守」木造復元はどうなる
11月24日投票の名古屋市長選、名古屋城天守の木造復元が争点の1つとなっています。14日の名古屋城も外国人観光客でにぎわっていました。候補者の考えは…
24日の投開票に向けて、過去最多タイの7人の候補者が訴えを続ける名古屋市長選。河村市政の「継承」か「刷新」が問われるなか、争点の一つが…。
徳川家康が築いた「名古屋城」。400年以上にわたり、名古屋の街を見守り続けてきた「シンボル」です。
天守は戦災で焼失したものの、戦後、鉄筋コンクリート造りで再建され、広く親しまれてきました。しかし天守閣は現在も閉鎖されています。
訪れた人は――。
「今日は(天守に)入れないと聞いて。知らなかったです。(入場できないことを)入口で知って、入れると思ってきたがちょっと残念」(茨城から訪れた人)
天守は、老朽化や耐震性の問題により2018年から閉鎖されています。改修が必要となる中、市が目指したのが「史実に忠実な復元」、つまり築城当時と同じ「木造」での復元です。
名古屋城の木造復元
戦後、鉄筋コンクリート造りで再建された天守を「木造」で復元するという、河村たかし前市長「肝いり」の計画。
2009年の初当選当初から、意欲を示してきましたが、4回目の当選を目指した、2017年の市長選では「木造復元」を看板政策に掲げ、慎重派の対立候補に圧勝しました。
ただ、文化財としての保全が求められる石垣の扱いなどをめぐり、計画は停滞。
去年3月、整備基本計画の大筋での取りまとめが進み、市は、計画を文化庁に提出する予定でしたが――。
「(車いすの人は)平等とわがままを一緒にするな。どこまで図々しいのという話『がまんせいよ』という話なんですよ」(参加者)
それは去年6月、市が主催した「名古屋城のバリアフリーに関する市民討論会」での出来事でした。
河村前市長も参加して開かれた討論会。車いすの男性がエレベーターの導入を求める意見を述べると、障害者差別の発言が――。
市は、この問題に最優先で対応するとして文化庁への計画提出を延期。
「木造復元」はさらに遅れることになりました。
「ただ一つしかない名古屋の宝」
この問題をめぐっては9月に検証委員会が最終報告をまとめ、差別発言を止められなかったのは「市長や市職員の人権問題への意識の低さ」が要因の一つと指摘。
報告書を受け取った河村前市長は――。
「(人権意識が)希薄だったというのは自分の意識と違うが、それでも気付くべきだったと。世界一のバリアフリー都市を実際に作っていく」(名古屋市 河村たかし前市長)
それでも天守のエレベーターをめぐっては――。
「天守は別個の文化財として、ただ一つしかない名古屋の宝ですよ。本物を大事にしていくことも人権ですから」(河村 前市長)
Q.(エレベーターを)5階までつけたくない?
「そうですよ」
木造復元についてバリアフリーを求めてきた人は
名古屋城を訪れた観光客に木造復元への意見を聞くと――。
「城として残すのであれば鉄筋でなくて木造のほうが後々のためにはいいと思う」(宮城から)
「個人的な思いを言えば、昔の再現でというところはあるが、今の時代の流れで行くとどんな人でも見られるというところが大事だと思う」(岐阜から)
バリアフリーを求めてきた人は木造復元をめぐる議論をどう見てきたのでしょうか…。
「せっかくの木造復元をするんだったら、誰もが上がることができるようにしてほしいとは思う。今時エレベーターを使うのは車いすのひとだけとは限らないし、ベビーカーの方も見えるかもしれないし、お年寄りの人もいる。そういう人たちが来た時に誰もが利用しやすいものになるべきだとおもう。公共のものだから。文化財とみない人もいれば、みなす人もいると思う。もう1ついうと500億の税金を使ってやることかなと。本当にいいことなのかということを改めて選挙で考え直すのが良いのかなと個人的に思っている」(名古屋市在住 バリアフリー推進の活動をしている人)
名古屋市長選7人が立候補
前市長の”置き土産”が、今回の市長選の争点のひとつに。
市長選には、届け出順に7人が立候補しています。
「ちゃんと、設計図どおりに木造で復元することで文化財としての価値が出る、これはしっかりやらせていただきたい」(無所属・新人 広沢一郎氏)
名古屋市の前副市長、広沢一郎氏。事業は河村前市長の方針を引き継ぎ、継続・推進の立場をとっています。
「みなさんにきちんと説明しないと。あいまいなイメージで、名古屋城は前にも後ろにも進めなくなっている」(無所属・新人 大塚耕平氏)
前参議院議員の大塚耕平氏は、「市民への説明」が最優先とし、そのうえで今後の対応を探っていくとしています。
「名古屋城の天守閣を木造化、そんなところにお金を使っている暇がありますか。そんなにお金持ちなんですか名古屋は」(無所属・新人 尾形慶子氏)
政治団体の共同代表、尾形慶子氏は「木造復元事業は中止」、現在の天守の耐震改修を進める考えを示しています。
元会社員の太田敏光氏(無所属・新人)は「無理・無駄がある」として、事業は中止し、現在の天守の耐震化を行うとしています。
旅行会社社長の水谷昇氏(無所属・新人)は、事業を取りやめ、耐震化したうえでインバウンドのための施設として活用すると訴えています。
元大学講師の不破英紀氏(無所属・新人)は、事業について「時間をかけて、慎重に進めていくべき」としています。
元自治大学校教授の鈴木慶明氏(無所属・新人)は、財源次第だとはしながらも、災害に耐えられるコンクリート造りが望ましいとしています。