羽毛布団の価格が高騰するなか、布団を簡単にリサイクルする技術が注目を集めています。カギとなるのが製糸会社と開発した「溶ける糸」です。
【羽毛高騰に悩む老舗旅館】万座温泉『日進舘』がリサイクル羽毛布団でコストカット実現

群馬県嬬恋村。万座温泉にある日進舘は、明治6年創業の老舗旅館です。今、ある課題を抱えていました。それが羽毛布団の入れ替え。

万座温泉 日進舘 黒岩まいみ常務:
「羽毛布団が今、本当に高騰していまして、古い布団を捨てないでどうにかできないかが一番の悩みでした」

羽毛布団はカバーをつけていても、汗の汚れなどで劣化します。

日進舘では、長年使用した羽毛布団を100枚以上廃棄していたことも。

一方、羽毛の輸入価格は10年前より4割高い水準。羽毛布団の価格も5年で2倍近くに。

羽毛価格が高騰する中、日進舘は2025年に50枚の古い羽毛布団をリサイクルで新しくしました。
万座温泉 日進舘 黒岩常務:
「当館のコストダウンにも直結している」
【熱水で溶ける特殊な糸】縫製会社『東和』が開発 生地を傷つけず簡単に解体・リサイクル

価格は1枚1万5000円ほど。新品よりも20%程度安く、今後もリサイクルができます。

このリサイクル布団を作るのが、福島県の縫製会社・東和です。官公庁や民間向けの制服、自社ブランドのスーツを手掛けています。

東和が羽毛布団のリサイクルに着手できた背景には、同社が独自開発した特殊な糸の存在があります。

水溶性ビニロンを原料とするこの糸は、約95度の熱水に3分ほど浸すことで溶けて消失し、縫い合わされた生地を傷つけることなく簡単に分離させることができます。
東和 佐藤恵一社長:
「繊維製品の課題であるリサイクルをしたい。そのためには縫い糸が邪魔になってしまう」

そこで、製糸会社と共同開発したこの糸。縫製に使えるよう、染色をしても溶ける性能を保てるのが独自の技術です。その溶ける糸で実現したのが、リサイクルが容易な羽毛布団。

羽毛布団は通常、カバー1枚で覆われますが、布団自体が汚れると羽毛を取り出してリサイクルするのが煩雑なため、多くは廃棄されてきました。

一方、リサイクル布団は羽毛を包むパックと布団カバーの間にもう1枚生地があり、それを交換することで簡単にリサイクルできます。

羽毛パックと交換用の生地は溶ける糸で縫い付けてあります。使用後に汚れた布団を回収して95度の熱水に浸すと、縫い付けられていた糸だけが溶けて解体され、汚れた外側の生地のみを容易に交換できます。

東和 佐藤社長:
「貴重な羽毛原料を廃棄せずに再生利用でき、かつコストを抑えて安価に提供できる点が最大の特徴です」
【2026年度2000万円の売上目指す】羽毛布団から衣料品へ 将来は100億円事業への成長を描く

まずは宿泊施設向けに提供。販売を本格化させる2026年度は2000万円ほどの売り上げを見込みます。そして、次に力を入れたいのが衣料品です。

東和 佐藤社長:
「衣服をリサイクルしようとなると、表地、裏地、あとボタンとかファスナーとか綺麗に分解しないとリサイクルができません」
溶ける糸を使うことで、将来リサイクルを100億円の事業に育てたい考えです。

日本経済新聞社 郡山市局 荒木望支局長:
「世界の持続可能な(サステナブル)ファッション市場は2兆円規模を超えると試算されています。今後さらに拡大する市場へ参入するにあたり、羽毛布団のリサイクルで培った解体技術やサービス基盤を衣料分野へいかに波及させられるかが鍵となります」

東和 佐藤社長:
「繊維製品もこれからは今までの大量生産、大量消費、大量廃棄の時代からリサイクルをする時代になると思いますので、そこにはこのアメルティス『溶ける糸』が非常に活躍するというふうに思っています」


