マンションを買うのか。それとも、ずっと賃貸で暮らすのか。
人生で一度は考える人も多い「持ち家か、賃貸か」という問題。
SKE48の松本慈子さんは、
「私はもう、ずっと賃貸でいいやって思ってて」
と話します。
仕事やライフスタイルに合わせ、その時々で住みたい場所を選びたい。
一方、岡田愛マリーアナウンサーはすでにマンションを購入しています。
では、不動産のプロは「買う」「借りる」のどちらを選んでいるのでしょうか。
オラガ総研代表取締役で、不動産事業プロデューサーの牧野知弘さんに聞くと、返ってきた答えは意外なものでした。
「僕は実は両方です」
名古屋証券取引所とテレビ愛知が共同で運営するYouTubeチャンネル「あしたのマネー」。
前回に続き牧野さんをゲストに迎え、マンション購入と賃貸、家選びで本当に大切なこと、値上がりしたマンションの「売り時」、そして新築と中古の違いまで聞きました。
不動産のプロは「持ち家」と「賃貸」の両方

牧野さんは現在、二拠点で生活しています。
仕事の拠点となる東京都内では、駅から徒歩1~2分という交通の便がいいマンションを賃貸。
一方、神奈川県の湘南エリアには一戸建てを所有しています。
東京のマンションは「仕事をするための場所」。
湘南の家は「生活を楽しむための場所」。
それぞれに違う役割を持たせています。
都内でマンションを借りる理由について、牧野さんは「気楽だから」と話します。
大規模修繕について自分で考える必要がなく、仕事の状況が変われば解約して別の場所へ移ることもできます。
一方、湘南の一戸建ては、自分自身の生活そのもの。
将来いくらで売れるのかを調べたこともないといいます。
理由はシンプルです。
「売る気がないから」
同じ「家」でも、目的が違えば「買う」「借りる」の答えも変わる。
牧野さんの暮らし方から見えてくるのは、不動産を資産だけで考えないという視点です。
「どの街が値上がりしますか?」に正解はない

マンション価格が上がると、つい気になるのが「資産価値」です。
「どのマンションが上がりますか?」
「どの街に住めば得ですか?」
牧野さんのもとにも、こうした質問は数多く寄せられるといいます。
ところが牧野さんは、
「あんまり正解はないんです」
と話します。
仕事場までの距離を最優先する人。
静かな環境で暮らしたい人。
若い人が多く、刺激のある街に住みたい人。
自然の近くで暮らしたい人。
家族との生活を一番に考える人。
その人の生き方や価値観によって、「いい街」の条件はまったく違います。
不動産は、私たちが毎日生活するためのインフラ。
だからこそ「値上がりしそうな場所」だけでなく、
「自分はどんな生活をしたいのか」
から考えるべきだといいます。
30物件で迷った女性に「全部書いてください」

とはいえ、大きな買い物だけに、いざ家を探し始めると迷います。
牧野さんの知人にも、マンション選びで迷っていた女性がいました。
候補となる中古マンションのチラシは約30枚。
「駅から近い」
「緑が多い」
「この物件も魅力的」
30分ほど話を聞いたあと、牧野さんが伝えたのは、
「今言ったことを、全部紙に書いてください」
ということでした。
そして、書き出した条件に1位から順番をつけてもらいました。
駅からの距離なのか。
周辺環境なのか。
広さなのか。
資産価値なのか。
自分が本当に譲れないものは何なのか。
すべての条件を満たす物件を探そうとすれば、どれを見ても「いいところ」と「悪いところ」が出てきます。
だからこそ、自分の中で優先順位を決める。
その女性は最終的に、自分の条件に最も合うマンションを購入し、約10年たった今も暮らしているといいます。
「いい物件に巡り会えた」
そう感謝されたそうです。
自分が住む家は「第六感」でいい

そして牧野さんは、自分自身が住む家について、さらに意外なアドバイスを口にします。
「第六感でいいです」
投資用の不動産は別。
しかし、自分自身が暮らす家なら、実際に見に行き、
「ここに住みたい」
と感じた感覚を大切にしていいといいます。
岡田アナも、現在のマンションを購入する際、
「絶対ここに住みたい」
と思ったそうです。
それを聞いた牧野さんは、
「それは間違ってないです」
と即答。
ただし、
「価格が下がったからって怒らないでください(笑)」
と付け加え、スタジオは笑いに包まれました。
牧野さん自身も、湘南の一戸建てを見つけた時は、細かな資産価値を計算したわけではありません。
遊びに出かけた際に偶然目にして、
「ここに住む」
と直感で決めたそうです。
購入を決めたあとに「どうやってお金を集めよう」と考えたというから驚きです。
モデルルームだけで決めない 「雨の日に街を歩く」

ただ、直感だけで何も確認しなくていいという意味ではありません。
マンションを検討する時、牧野さんが勧めるのは、
「その街を歩くこと」
です。
モデルルームはきれいに作られています。
マンションの共用部分も魅力的に見えるでしょう。
しかし、実際に生活するのは建物の中だけではありません。
駅までの道。
スーパー。
周辺の人通り。
街の雰囲気。
そこで毎日暮らすことになります。
しかも牧野さんは、
「天気の悪い時に歩くとよく分かります」
と話します。
晴れた昼間だけではなく、雨の日や風の強い日、朝や夜にも歩いてみる。
すると、
「雨が降った時に水がたまりやすい」
「思った以上に風が強い」
「夜になると街の印象が変わる」
など、物件資料では分からないことが見えてきます。
牧野さん自身も、湘南の自宅を購入したあと、海に近いことから想像以上に風が強いことに気づいたそうです。
それでも売るつもりがないほど家を気に入っている。
つまり、欠点が一つもない家を探すのではなく、
「その欠点があっても、自分はここに住みたいか」
と考えることも大切なのかもしれません。
値上がりしたマンション 売る?貸す?

すでにマンションを持っている岡田アナには、別の悩みがあります。
今のマンションに一生住むイメージはなく、いつか住み替えたい。
その時、
「売るのか」
「貸すのか」
で迷っているといいます。
牧野さんは、思い入れが強く、立地も良い物件であれば、当面は所有したまま貸すことも選択肢だと話します。
マンションは築年数とともに老朽化していきますが、築10年、20年程度であれば、物件の状態や市場環境にもよるものの、保有を続ける考え方もあります。
一方、そこまで思い入れがなく、経済的な事情などもあるのであれば、
「売れる時に売る」
という考え方もあるといいます。
マンション価格が高い局面なら、売却を考える機会にもなります。
ただし、大切なのは「売ったあと」です。
5000万円→7000万円 でも「2000万円儲かった」とは限らない

例えば、5000万円で買ったマンションが7000万円になったとします。
数字だけを見れば、2000万円値上がりしています。
「だったら売って、新しいマンションに買い替えよう」
と考えるかもしれません。
しかし、同じエリアで次の家を探せば、周囲のマンション価格も同じように上がっている可能性があります。
自宅だけが値上がりしたわけではないのです。
「それ無理ですから」
牧野さんは笑いながら指摘します。
同じ地域で、同じような生活水準の家へ住み替えれば、売却益がそのまま手元に残るとは限りません。
むしろ、新たに住宅ローンを増やすことになるケースもあります。
牧野さんは、
「含み益を実現する時は、自分のライフスタイルを変える時」
と話します。
例えば、より住宅価格の安い地域へ移る。
家の広さや住み方を変える。
そうして初めて、値上がりした分を実際のお金として残せる可能性が出てきます。
自宅の価格が上がったからといって、その数字がそのまま自由に使える利益になるわけではないのです。
新築より「7~8年前の中古」の方がいいことも?

これからマンションを買おうとしている人には、さらに気になる話も。
岡田アナが、
「中古の方が、少し前の資材価格で建てているから、設備などを見るとコストパフォーマンスがいいのでは?」
と尋ねると、牧野さんは、
「その通り」
と答えました。
近年は建築資材や人件費などのコストが上昇しています。
マンションを建てる側も販売価格を抑えるため、さまざまなところでコストを調整する必要があります。
そのため物件によっては、7~8年前に建てられた中古マンションの方が、設備や仕様にお金がかけられているケースもあるといいます。
例えばサッシやガラス。
以前は付いていた設備が、新築では省かれていることもあります。
もちろん、中古マンションなら何でもいいわけではありません。
建物の管理状態や修繕計画、築年数など確認すべきポイントはあります。
それでも、
「新築だから全部いい」
「中古だから劣っている」
とは限らない。
価格だけでなく、実際の設備や建物の中身まで確認する必要があります。
「値上がりしそうだから買う」は危ない

マンション価格が上がっていると、
「もっと上がる前に買わなければ」
「今買えば、自分も儲かるかもしれない」
という気持ちになることがあります。
しかし牧野さんは、こうした周囲の空気に乗って購入することに警鐘を鳴らします。
住宅は金額の大きな買い物です。
誰かが「これから上がる」と言っているから。
世の中でマンション投資が話題になっているから。
それだけで購入するのではなく、
「自分はなぜ、この家に住みたいのか」
という軸を持つ。
牧野さんによると、不動産選びでうまくいく人には、自分なりの信念があるといいます。
家を選ぶ前に「どんな人生を送りたいか」を考える

買うのか、借りるのか。
新築か、中古か。
売るのか、貸すのか。
資産価値を優先するのか、暮らしやすさを優先するのか。
不動産を考えると、次々に「どっちが正解?」という疑問が出てきます。
しかし、牧野さんの答えは一貫しています。
すべての人に当てはまる「正解」はない。
まず考えるのは、
「自分はどんな生活をしたいのか」
ということです。
家は、数字だけで見る「資産」である前に、毎日を過ごす場所でもあります。
資産価値を追いかけるあまり、自分が暮らしたくない場所に住む。
値上がりを期待するあまり、家を買う本来の目的を見失う。
それでは、せっかくの住まい選びが苦しいものになってしまいます。
自分が大切にしたいことを紙に書き、優先順位をつける。
街を実際に歩く。
そして最後は、
「ここに住みたい」
という自分の感覚も信じてみる。
人生でも特に大きな買い物だからこそ、価格だけでは測れない「自分にとっての価値」を考えることが、後悔しない家選びにつながるのかもしれません。


