
現役バリバリの89歳から25歳の孫まで…親子3代が営む街のケーキ店 時代を超えて受け継がれる手作りの味


愛知県尾張旭市で創業59年の「ふらんす菓子屋エミリー」は、89歳の初代と家族3世代が営む街のケーキ店です。看板のシュークリームや旬のフルーツを使ったケーキが人気で、昭和から令和まで世代を超えて地元に愛されています。
■世代を超えて受け継がれる菓子づくり
尾張旭市の「ふらんす菓子屋エミリー」は、89歳にして現役バリバリのパティシエ・小野康雄さんと、息子で2代目の善秀さん(56)、孫の和樹さん(25)の親子3代でお店を切り盛りしています。

ショーケースには、できたてにこだわったケーキや焼き菓子が100種類以上並びます。 午前7時半。9時のオープンを目指し、前日に仕込んだケーキを仕上げていきます。 2代目の善秀さん: 「こだわりは個人店なので、手作りのところですね」

オープンに間に合わせるため、厨房は大忙し。89歳の康雄さんも担当のケーキ作りに取り組みます。 康雄さん: 「このケーキはサバランっていってアルコールに漬けてね、ヨーロッパの方では伝統のお菓子。今また復活してきた」

昭和の高度経済成長期に“ハイカラなケーキ”として流行したサバラン(430円)や、シナモンをしっかり効かせたアップルパイ(410円)、甘さ控えめのモンブラン(430円)など、康雄さんのケーキは素朴で懐かしい昔ながらのスタイル。昭和レトロブームにのり、再び脚光を浴びています。

一方で、2代目の善秀さんが手掛けるのは、生チョコをのせた「スペシャルショコラ」(500円)や、焼きたてのパイ生地を何層にも重ねた「ミルフィーユ」(410円)。味はもちろん、見た目や食感にもとことんこだわったケーキです。

善秀さん: 「焼きたてで出すのが一番おいしいので、それがうちの強み」 また、妻・由里さんの実家がある山梨の農家で収穫されたシャインマスカットを使った「シャインマスカットのタルトレット」(700円)や「シャインマスカットごろごろ入ったゼリー」(550円)もあります。旬の素材を活かした独創的なケーキは、ショーケースを華やかに彩ります。

客: 「ここは何食べてもおいしい。ここしか来ない」 別の客: 「すごく安いのにおいしい。この苺のチーズケーキは絶対食べたいので、そればかり買っている」 まさに、地域の人々に欠かせない存在となっています。
■89歳でも元気に厨房へ…康雄さんの原動力
7時半から忙しく働く康雄さんに疲れはないのでしょうか。 康雄さん: 「楽しい。嫌いだったらもうダメだね」 妻の光子さん(85)も看板娘として店を支えています。 光子さん: 「昨日血液検査したら、血液は61歳ですって言われて」

50年来の常連客もいます。 常連客の女性: 「どこで会っても名前呼んでもらえるからびっくり」 光子さん: 「私もこうやっておしゃべりできているから元気でいられる」
■不振脱却への起死回生の一手は「焼きたてシュークリーム」
今の繁盛ぶりからは想像できませんが、2代目の善秀さんが店を継いだ30年前は苦しい時期もありました。 善秀さん: 「かなり静かでしたね。タバコの配達が主だったので、ケーキを売ろうにも売れない」

タバコの販売の傍らケーキを販売していましたが全く売れず、クリスマスですら店頭で呼び込みが必要なほど集客には苦戦していたといいます。そこで善秀さんが打った起死回生の一手が「焼きたてシュークリーム」(240円)でした。

善秀さん: 「焼きたてのシュークリームがエミリーの最初のヒット作になった」 営業中にオーブンで次々と焼き上げ、常に焼きたてを提供したことで、1日300個売れるヒット商品に。クッキー生地をのせて焼き上げたサクサク食感のシューに軽やかなカスタードクリームが癖になる逸品です。

客: 「サクサクでおいしい。焼きたてがくすぐられますよね」 別の客: 「甘みが口の中に残らない。3個くらいは余裕でいける」
■初代・2代目の情熱を受け継ぐ若き3代目の挑戦
そして今、祖父と父の思いを受け継ぐ3代目・和樹さん(25)が新しい挑戦をしています。製菓学校を卒業後、東京や三重で修行を積み、2023年にお店に戻ってきました。

この日、和樹さんが夢中で作っていたのは「まるごとシャインマスカット」。小さなロールケーキにゼラチンで固めたシャインマスカットを丸ごと乗せた、シンプルながら果実の味を存分に引き出したスイーツです。 和樹さん: 「シャインマスカットそのもののおいしさが伝わるように」

試作品を祖父と父に試食してもらいます。 康雄さん: 「おいしい」 善秀さん: 「お客さんに喜ばれる味で非常にいいと思います。シャインマスカットの味が生きている」

2人から合格点をもらった「まるごとシャインマスカット」(600円)はショーケースに並びました。 昭和、平成、令和と時代を超えて受け継がれる手作りの味が、これからも地域の人たちを笑顔にし続けます。 2025年9月15日放送