8月4日、小泉防衛大臣によって「令和8年版の防衛白書」が発表された。その表紙には、今置かれている自衛隊の2つの現状が垣間見えた。若者たちが集うイラストは、防衛省のイメージとは懸け離れたポップなイラスト、その上空には小さくドローンが描かれていた。
【写真を見る】「防衛白書」の表紙にはポップな絵とドローン… ある日突然日本が攻撃されたら?変わる防衛の形【戦後81年・大石邦彦取材記】
和気あいあいとしている若者たちのイラストからは、自衛隊の深刻な若者離れからくる人材不足を解消したいという思惑が見える。
自衛隊の定員は24.7万人だが、実際は約22万人と10%ほどの定員割れという現実がある。学生にとって売り手市場の中で、少しでも自衛隊に目を向けてもらうためのイメージ戦略だ。
もう一つが、今や戦争のゲームチェンジャーとも言われるドローンだ。防衛白書を開くと、すぐに「新しい戦い方の登場」という文字が現れる。ロシア、ウクライナの戦争では、このドローンが戦場の主役になっているというのだ。
戦争で使われるドローン 特徴は
出資しているウクライナのドローン製造会社と共同開発した「terraA1」という迎撃用ドローンを実戦で配備しているテラドローンの徳重徹社長は、この1年弱の間で14回もウクライナに足を運び、戦地でのドローンの有効性と必要性を実感したという。ロシアから容赦なく飛来するイラン製の無人機シャヘドなどを迎撃するドローンが、ウクライナの生命線とも言える。
しかも、一機約40万円と安価なため、戦争が長期化すればするほど相手国へのダメージを与えることになる。軍事費、兵力など総合的な戦力が大幅にロシアに劣っていたウクライナが、4年以上も戦える理由の一つが、今や国内に100以上の企業を有するドローン産業の飛躍と言える。
では、戦場で使われるドローンとはどんなものなのか?
世界大会でも優勝したドローン撮影世界1のスキルをもち、現在はドローン撮影会社で映画、ドラマ撮影などを行なっている小澤諒祐さんに見せてもらった。
小型ドローンは建物内部にも…
最も小型のドローンは両手を広げたサイズで、重さは数百グラムと超軽量。実際に目の前で飛ばしてもらったが、離陸した後にトップスピードに達するまでが早く、しかも時速180キロでアクロバット飛行も可能、大空を縦横無尽に飛行できる。
一方で、建物の中など狭い空間にも侵入できるため、これまでに不可能とされた映像化が可能になったという。しかし、舞台が戦争になれば、カメラではなく爆弾を積んだドローンが、敵にも高速でアタックでき、建物の中まで入り爆破も可能になるため、小澤さんは複雑な心境だという。
もちろん、操縦技術は必要だが、映像によるシミュレーション操縦もできるため、訓練もしやすいというドローン。
ある関係者が、自衛隊の訓練の様子を明かしてくれた。自衛隊には、すでにドローン部隊が編成されていて、日々実機での訓練に余念がないという。
自衛隊が想定する敵を沿岸部で迎撃する「SHIELD構想」では、すでにヒトカネモノが動き始めていて、日本の「新しい守り方」は動きだしている。
かつて戦禍で荒れた日本 繰り返さないために
これまで私は、戦争を体験した幾人もの元日本兵、広島、長崎の被爆者、名古屋空襲で失明した人、大火傷を負って、何年経っても苦しめられてきた人たちに話を聞き、時が経過しても終わらない戦争の現実を目の当たりにしてきた。
「戦争こそ唯一の幸福への道」と信じて疑わなかった時代、その洗脳は政府が、教育が、そしてマスコミが果たしてきた。
戦後81年の今年、ロシア、ウクライナの戦争の先が未だ見えない中、アメリカがイランを攻撃するなど国際環境は目まぐるしく変化している。殺傷能力のある武器を全面的に解禁するなど日本のスタンスも大幅に変わった。多くの戦争体験者が私に教えてくれた「戦争だけは絶対にやってはいけない」という教訓。
頭と心では深く理解しているが、もしも、ある日突然他国に攻撃されたら?戦争をしたくなくても、巻き込まれてしまったら。防衛白書の冒頭にこう記してある。
防衛白書に記してあった言葉は…
相手国に「侵攻はやめた方がよい」と思わせる防衛態勢の構築が必要だと。ウクライナから避難してきた女性が「あの日まで戦争の兆候は全くなかった」と語った言葉が示す通り、平和は突然破られる。
81年前の戦争の教訓を風化させず、4年前のロシアによる侵略の教訓を活かすにはどうすればいいのか?
今を生きる私たちに課せられた、真の「不戦」の意味を1人1人が考える必要があるし、我々もありのままに伝えたい。かつての教訓を忘れてはいけない。
【CBCテレビ論説室長 大石邦彦】


