名古屋鉄道 高崎裕樹社長:
「いよいよ建設に進もうという段階で、このような事態に直面するとは全く想定しておらず、無念の思いでいっぱい」
名古屋鉄道が2025年に発表した名古屋駅周辺の再開発計画の見直し。工事の入札に唯一応募していたゼネコンが入札を辞退した結果でした。入札辞退の要因とされたのが建設業界の「人手不足」と「建設費の高騰」です。
建設業界の「人手不足」と「建設費の高騰」は全国的に問題となっていて、県内では名古屋駅の再開発計画だけでなく、名古屋市が進めてきた金山駅周辺の再開発計画も見直されることになりました。
※名鉄・高崎社長は「はしごだか」に「たつさき」
鉄の支柱は2倍から3倍、ベニヤは倍に価格高騰
建設業界が置かれている現状について、愛知県の建設会社に話を聞きました。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「リーマンショック(の時)と比べて、今の一般的なマンションの請負価格は3.5倍くらいになっている」
渡會さんの会社は、建物を建てる際にコンクリートを流し込む型枠をつくっています。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「これは2025年仕入れました」
見せてくれたのは型枠を支える鉄の支柱です。10年ほど前と比べると高騰しているといいます。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「(価格は)2~3倍になっている」
資材の値上がりは他にもあります。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「ベニヤです。5年ぐらい前と比べると、(価格は)倍になっている」
苦しめられているのは資材の値上がりだけではありません。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「われわれとしては、本当に人手が足らないと。仕事があって受けても、人を回せないということで倒産(する建設会社)が多い」
全国で建設業に就業した人の数は、ピーク時から約3割減っています。特に深刻なのが建設現場ごとで働く職人ら建設技能労働者の人手不足です。
人手を確保するため賃金を上げていった結果、国が建設技能労働者の賃金の実態をもとに定めた公共工事の人件費、いわば建設業界の平均賃金は14年連続で上昇。2012年と比べると約2倍です。
人件費が上がったけど「価格転嫁できない」現実も
人件費が上がった分、建設業者は工事を請け負う金額に価格転嫁したいところですが、渡會さんの会社では、その人件費をまかなえないような金額で仕事を受けることもあったといいます。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「(昔は)ゼネコンが泣いていました。はっきり言って。昔は施主やディベロッパーからゼネコンが無理やり(安い値段で)押し付けられた仕事もあった」
そこで国は建設工事の契約の適正化を目指し、2025年12月、建設業法を改正。人件費の下限値や工事を発注・受注する際の禁止事項を定めました。
加向建設 渡會武則代表取締役:
「ゼネコンがものを言える時代になった。典型的なのが名鉄の再開発ですね」
2025年12月に改正された建設業法→適正な人件費を確保し、建設業界の人手不足解消へ
2025年12月に改正された建設業法について改めて見ていきましょう。
ポイントは、建設業界における人件費の基準が作られ、実質的な下限値が示されたことです。発注者は、この下限値を下回らせるために価格交渉することが禁止になりました。また、事業を受注する建設業者が、この下限値を下回る人件費で見積書を作ることも禁止になっています。
人件費の基準ができたことで、国も違反の取り締まりを強化しています。通報窓口に寄せられた情報などをもとに、国土交通省の専門調査チーム、いわゆる建設Gメンが価格交渉の実態などを調査。違反した発注者には勧告が出され、違反した受注者には指導・監督が行われます。
適正な人件費を確保し、建設業界の人手不足解消を図る狙いです。経済界からは期待する声が上がっています。
「より魅力的な建設現場になることが大事」中部経済連合会
中経連が2026年4月21日に開いた建設業界の課題と対策についての会見で、清水誠調査部長は改正建設業法が人手不足の解消につながるという見解を示しました。
中部経済連合会 清水誠調査部長:
「(改正建設業法で)労務費(人件費)が適正に支払われて、現場の労働者に行き渡ることが期待される」
その上で、人手不足を解消するために産学官が連携して、建設業を担う人材の育成にも力を入れるべきだと提言しました。
中部経済連合会 清水誠調査部長:
「建設業を志す技能労働者の若者を増やしていくというところでは、この仕事の魅力を伝えるという意味で学校教育との連携も大事になってくる。建設業界に若い人に入ってもらうことが、持続可能な産業にしていくために一番大事。働き方改革や生産性向上というところで、より魅力的な建設現場になるよう進んでいけば」


