「エスカレーターは立ち止まって」条例施行から2年 「条例を知らない」人への周知が今後のカギ

名鉄名古屋駅のエスカレーター。その中に、ひと際目立つ「手形」を背負った背中が。これは、エスカレーターに立ち止まって乗るよう呼びかけるキャンペーンです。「とまってくれて、ありがとう」と書かれたボードを背負ったスタッフがエスカレーターに乗り、利用者に立ち止まるよう周知しました。
名古屋市は2023年から、エスカレーターでの転倒などの事故を防ごうと、立ち止まっての利用を義務つける条例を施行しています。普段の乗り方について街の人に聞きました。
10代:
「(駅で)アナウンスがあったり(ポスターが)貼ってあったりするので、歩いたらダメだと思い、止まっている」
20代:
「急いでいることが多いので、右側を結構歩いてしまっている。(条例について)知らなかったので気を付けようと思う」
10月15日は名古屋駅の前でも、市の職員らがエスカレーターの安全な利用方法を周知しました。
名古屋市 広沢一郎市長:
「エスカレーターは右も左も立ち止まってご利用ください」
名古屋市の広沢一郎市長も、エスカレーターで歩く人を減らすため、片側を空けずに立つ「両側立ち」を徹底するよう呼びかけました。
名古屋市 広沢一郎市長:
「転んだりすると(エスカレーターは)硬い鉄なので、鋭利で転ぶとケガする。必ずエスカレーターでは立ち止まってほしい」

名古屋市は、市内の交通機関や商業施設などでエスカレーターの利用実態を定期的に調査しています。
3年前の2022年は立ち止まって利用する人の割合が78.7%でした。2023年10月に条例が施行されて以降、立ち止まって利用する人の割合は増加していて、2025年6月から7月の調査では、95.3%の人がエスカレーターを立ち止まって利用するという結果になりました。
この調査結果の推移について、全国各地でエスカレーターの利用状況を調査している東京科学大学の水野智美教授に聞きました。
東京科学大学 水野智美教授:
「(同じ条例を施行した)埼玉県で歩く人は相変わらず多いことから、名古屋市がここまで歩く人が減った状態が長く続き、右側に立つ人も決して珍しくないことは、非常に全国的にみてモデルケースになる。名古屋の人は、左側だけに立つのではなく、右側に立つ人も(条例施行)以前からいて、それほど不自然ではなかった。条例が施行されて、右側に立つことも推奨されることでプレッシャーなくできるようになったのでは」
今後、さらに立ち止まって利用する人を増やすために必要なことは。
東京科学大学 水野智美教授:
「私たちが行った調査では、若い人を中心に『条例を知らない』と答える割合が高かった。条例について皆さんがよく知っていると、右側に立とうかな、急いでいても歩いてはいけないかなという意識につながってくる。若い人たちにいかに条例について伝えていくかが、名古屋市では大きな課題ではないか」