日本時間3月20日未明に開催された日米首脳会談についてです。緊迫するイラン情勢を受け、石油の輸送路・ホルムズ海峡が事実上封鎖となっています。焦点となったのは、トランプ大統領による「自衛隊派遣」の要求でした。これに対して、高市総理はどう対応したのか。まず、会談を振り返ります。
日本時間の20日未明、トランプ大統領に出迎えられた高市総理。世界が注目する中、日米首脳会談がホワイトハウスで始まりました。
トランプ大統領:
「2026年3月23日は選挙で記録的な圧勝をおさめた特別な人がここに来ている。非常に人気があり、パワフルで、素晴らしい女性だ。あなたをお迎えできて光栄だ」
冒頭、高市総理を称賛したトランプ大統領。これに対し、高市総理がまず口にしたのは…
高市総理:
「中東情勢も含め、世界中の安全保障環境が非常に厳しい状況にある。世界経済も厳しい影響を受けつつある。世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っている」
さっそく、緊迫化するイラン情勢について切り込みました。今回の会談の焦点となっていたのが、ホルムズ海峡への自衛隊の艦船派遣です。トランプ大統領は、事実上の封鎖が続くホルムズ海峡の安全確保をめぐり、同盟国に艦船の派遣を求めていました。
仮に、日本が自衛隊の艦船を派遣する場合、主に考えられる選択肢は4つあります。1つ目が「存立危機事態」です。これが認定されると、日本が直接攻撃を受けていなくても、アメリカなどの密接な国が攻撃されたら一緒に反撃をすることができます。4つのうちで唯一、武力の行使と戦闘地域への派遣が認められてますが、「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」などの厳しい要件があります。
残る「重要影響事態」と「海上警備行動」、「情報収集」の3つは、どれも戦闘が行われている場所での活動は想定されていません。日本は、1991年にペルシャ湾へ艦船を派遣した実績がありますが、停戦後という条件のもとでした。現在、戦闘状態にあるホルムズ海峡への派遣は難しいとみていて、アメリカの要求に対して慎重な姿勢を示しています。
トランプ大統領は日本に直接的な艦船派遣は要請せず

会談で記者団から日本の支援に満足しているか問われたトランプ大統領は、次のように話しました。
トランプ大統領:
「日本が主体的に動くことを期待している。日本には4万5000人の米兵が駐留し、多額の資金を投じてきた。日本は90%以上の石油をホルムズ海峡経由で輸入していると聞いている。それこそ日本が主体的に動くべき大きな理由だ」
日本により一層の貢献を求めましたが、メディアの前で艦船派遣について直接的な要請はありませんでした。今回の会談をどう評価するのか、アメリカの政治外交に詳しい専門家は次のように話しました。
笹川平和財団 渡部恒雄上席フェロー:
「トランプ大統領との人間関係を維持したということで評価できる。今回はNATOが協力してくれない、そういう意味ではトランプ大統領は孤立感があったと思う。その中で高市総理が寄り添う形で対応してくれたことはトランプ大統領にとってはとても精神的に安定剤になったと思う。高市総理が嫌がるようなことをあえて突いたりしないとなったのでは」
日本の具体的な貢献についての結論は先送り

会談は、非公開部分もあわせて1時間半にわたって行われました。
高市総理:
「ホルムズ海峡における航行の安全、エネルギーの安定供給を含む中東地域の平和と安定の実現に向けて、日米間で緊密に意思疎通を続けていくことを確認しました」
高市総理:
「艦船の派遣については機微なやり取りではあるが、やはりホルムズ海峡の安全確保は非常に重要だということだった。ただ日本の法律の範囲内でできることとできないことがあるので、これについては詳細にきっちりと説明した」
ただ、具体的にどう貢献するのか、結論は先送りの形となりました。
笹川平和財団 渡部恒雄上席フェロー:
「停戦がいつまで経っても進まずに、日本の石油の備蓄が無くなるということもあり得る。こういう状況まで追いつめられたら、最悪の手段を考えざるを得ない。それは自衛隊の艦船を送ることではない。イラン側とコミュニケーションチャンネルを持っていれば、イラン側と話をすることができる。これは間違っても外交当局は言ってはだめだし、におわせてもだめだが、そういうことを頭に入れて、幸いにも200日以上の石油の備蓄があるので、難しい外交を進めていくことが必要だと思う」
元防衛大臣「法律をつくり休戦を条件に艦船派遣すべき」

一方、元防衛大臣の森本敏さんは、新たな法の枠組みをつくり、休戦という条件のもとで艦船を派遣すべきと指摘します。
元防衛大臣 森本敏さん:
「掃海作業の技術が優れているのは、日本とイギリス海軍。アメリカはおそらくこの技術に一番期待しているのではないかと。掃海作業は、国際法でいうと武力の行使にあたるので、戦闘行為をしに行くようなもの。休戦協定ができた後で、多国間とともにホルムズ海峡の掃海作業を行う、あるいはこれに伴いもし不安定な状況があれば艦船の護衛をするということについては、できれば法律をつくっていつでも出られるような状態にしておくことを考えるべきでは」
貢献の姿勢を見せることが重要、結果的には艦船派遣

ここからは、米中の安全保障などに詳しいキヤノングローバル戦略研究所の峯村健司上席研究員に話を聞いていきます。
ーー笹川平和財団 渡部恒雄上席フェローは「最悪の手段でも戦艦派遣はせずイラン側と対話を」と、元防衛大臣 森本敏さんは「新たな法の枠組みをつくり、休戦という条件で戦艦派遣すべき」と戦艦派遣の可能性について意見を述べました。峯村さんはどうお考えですか。
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員:
「私は今の二人の意見の間に近いかと思うんですが、まずこの外交努力で休戦、停戦に持ち込む努力をする。その上で、停戦がある程度できた段階で、やはりその掃海も含めた艦船を派遣するという。やはり貢献する姿勢を見せることが重要だと見ています」
ーー貢献の姿勢を見せることが重要。結果的には艦船派遣だというご意見だと思うんですが、そのあたりどうしてそうお考えなのかという理由を詳しく聞かせていただけますか。
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員:
「今このホルムズ海峡を誰が一番利用していて、誰が一番その利益を得ているかというと、明らかに日本なわけですね。 なので日本がこれまで何もしないということは、おそらくこれはアメリカだけではなくて国際的にも許されない状況になるだろうと見ています。なので、今の憲法の制約がある中であっても、停戦した段階では掃海作業とか後方支援ですね。アメリカ軍への給油などで貢献して積極的にホルムズ海峡の安全をしていく。これは日本の国益になると考えています」
ーー国益のために。国際的にはもう日本はホルムズ海峡に艦船を派遣しないことは許されないようなフェーズに達しているので、憲法上の制約の中での派遣ならいいのでは、というのがご意見ということですか。
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員:
「アメリカが始めた戦争なんですが、最近のトランプ大統領の言説を見ていると、もう手を引くというようなことを言い始めているんですね。アメリカが手を引いた場合一体どうするんだという意味では、これはもうアメリカに言われてどうのこうのではなく、日本自体の石油・原油がなくなるとなったとき、じゃあどうするんですか、アメリカお願いします、というのではないこともやはり考えるときが来ているんだと見ています」
トランプ大統領は日本に前向きなメッセージを要望

ーーアメリカ抜きにした時の原油確保のルートを守るためにもそういった取り組みは必要であるということですね。
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員:
「トランプ氏はこの1期目の時も見てきましたが、ディールとか交渉するときはすごくやる気を出して成果を求めようとするんですが、うまくいかなくなったり硬直化してくると投げ出す習性があるんですね。なのでそこは日本にとっての本当の最悪のシナリオ、船を出す出さないの話ではなく、その超大国であるアメリカしか、ある意味そのホルムズ海峡に送れる能力がある国ってのはほとんどないわけですから、そこが手を引いたときどうするんだということをやはりもう考える局面に入っています」
ーー今回の会談でトランプ大統領あえてこの艦船派遣について日本には触れなかったという話もありました。これはどういう意図があるんでしょう。
キヤノングローバル戦略研究所 峯村健司上席研究員:
「もともとこの水面下の両国政府間の交渉の中で、アメリカ側にある要望がありました。 具体的な何か艦船を出せということは今回言わないようにするから、少なくともポジティブな前向きなメッセージを出してほしいと、どうも日本側に要望をしていたという話なんですね。 というのは最近石油の値段が相当上がっているところで、これにはトランプさんも相当困っている。さらにはもう孤立化しているというところで、NATOともかなり関係が悪化したという中で今もうアメリカが孤立している中をなんとかとりもってほしいというのがアメリカ側の実は求めだったんですね。 そのため直前、本当に会談の2時間前にですね、日本・イギリスなど6か国の中での共同声明という形で協力していく、イランに対する批判をした共同声明をまとめたことによって、亀裂が入っていたアメリカとNATO、そして国際的な協力の枠組みを日本が作ったというところは私は大きな成果だというふうに位置づけています」


