「TKB48」子どもたちの防災力が重要に 中学生が避難所運営訓練 岐阜・飛騨市

大きな災害時に子どもたちが自ら命を守る。キーワードは「TKB48」です。
先日、岐阜県飛騨市で中学生や地元で活動する防災士などが参加した避難所運営訓練が行われました。
訓練のテーマは「TKB48のライブ体験」。
「TKB48」はアイドルグループではありません。いま防災界隈で注目されている言葉です。
それは――
「T」=トイレ
「いつものトイレみたいで衛生面もいいと思いました」(中学生)
「K」=キッチン
「災害食って冷たいイメージだったけど、温かいし栄養も取れているのでいいと思います」(中学生)
「B」=ベッド
「広さもちょうどいい。柔らかさもちょうどいい。寝心地良かったです」(避難者役の市民)
「TKB48」はこの3つを、災害の発生から48時間以内に整備しようというものです。
能登半島地震でも問題となった「災害関連死」を防ぐことに繋がります。
充実した「TKB」の実現には、子どもたちに防災力が重要

「TKB48」をテーマにした訓練をプロデュースするのは、飛騨市防災危機管理課の吉川慶さんです。
「飛騨市では昨年度からTKB48の実践型の訓練をやっておりまして、飛騨市の最大の特徴は、中学校と行政が連携してやるということで、主役は中学生ならびに防災士」(飛騨市 防災危機管理課 吉川慶 課長補佐)
吉川さんは、いざ地震などの大きな災害に見舞われた際、大人たちの力には限界があると考えています。
「我々地方自治体、市町村の職員というのはどんどん減っています。市役所の職員だけで避難所を運営するというのは、絶対誰が考えても無理だと思う。中学生や高校生も入って、若い人の発想で、快適な避難所を作っていきたい。TKBがいかに大事か、理解していただく訓練にしていきたいと思っています」(吉川 課長補佐)
充実した「TKB」の実現には、子どもたちに防災力をつけてもらうことが重要だというわけです。
「TKB48」は、官民が一体となったイタリアの防災体制にヒントを得た考え方で、避難所・避難生活学会が提唱しています。
避難所の「TKB48」を実現するため、横浜市は今年度中にトイレカーなどをそろえることにしています。
「避難所・避難生活学会」の水谷さんも体験型訓練の重要性を訴えます。
「普段やっていないことは、本番ではできないので、地元の人の力というのは非常に大きい。いかに健康被害や災害関連死を防ぐかという観点では非常にいい取り組み」(避難所・避難生活学会 水谷嘉浩 代表理事)
避難所運営の主役は中学生

11月15日、古川中学校の生徒たちに加え、オレンジ色のベストを着た防災士も続々と集まってきました。
「防災士としてきょうは参加します。避難所を開設して避難所に来た人を受け入れたり、炊き出しの訓練とか」(防災士)
会場には、100人余りの中学生に50人以上の防災士、視察に来た県内の各自治体職員も合わせると、総勢約300人。この大人数で、TKBを体験します。
訓練は10人ほどの1年生と数人の防災士に高校生を加えた12のグループに分かれました。
避難所運営の主役は中学生です。
避難者の情報を確認し、ベッドが置いてあるテントに誘導します。
「古川中学校の中村です。困りごとはありますか?」(中学生)
「今のところ、ございません」(避難者役の市民)
中学校は災害時に実際に避難場所となります。慣れない環境に戸惑う避難者を案内するのは勝手知ったる中学生の役目。
「ここは何?」(避難者役の市民)
「ここは小会議室です。ここでご飯を食べます」(中学生)
「TKB」を学ぶ

「TKB」の「T」。マンホールトイレの使い心地を確かめたり、簡易トイレの使い方を学んだりしました。
「TKB」の「K」。ランチタイムは仮説食堂で地元のシェフが作った温かい食事を試食。
避難所の生活空間と食事の場を分ける「寝食分離」は、被災者の健康維持やストレス軽減の意味で重要だと考えられています。
「パンだけの生活だと栄養が偏ったりするし、こういう食事が避難所でも毎日出るといいなと思います」(中学1年生)
「食事が温かくて温かいご飯を食べると、いろいろやる気が出てきたり、エネルギーになったりするので、大事だと感じました」(高校生)
「TKB」の「B」。ベッドの訓練では、段ボールベッドを完成させるまでの時間をチームで競いました。
また、参加者全員で新聞紙を使ったスリッパ作りにも挑戦しました。
「災害が起きて避難所生活になった時は、自分が動けるようにしたい」

「TKB48」を学んだ生徒たちは――
「例えば段ボールトイレのこととか、詳しく知ることができて良かった」(中学生)
「環境を大事にすることや段ボールベッドの作り方を教わったので、災害が起きて避難所生活になった時は、自分が動けるようにしたい」(中学生)
飛騨市の防災力向上を目指す吉川さんの手ごたえは――
「中学生の時にこういった多様な世代、大人も交えて防災について体験する。知識じゃなくて、手足を動かし、体を動かし、体験をすることで記憶に残ると思います。何らかの形で防災に関わることは、長い人生の中で必ずあると思うので、きっと彼らにとって今後に役立つのではないかなと思っています」(吉川課長補佐)





