日本国憲法の第1章、第1条です。「天皇は日本国の象徴で、この地位は、国民の総意に基づく」。今回、改正された皇室典範について、皆さんはどう思われますか。「名古屋の声」を聞きました。

17日の参議院本会議。
「投票総数241、賛成184、反対57、よって本案は可決されました」
改正皇室典範が賛成多数で可決成立しました。1947年に施行されて以来、初となる本格的な改正。背景にあるのは後続数の確保です。
国際親善や地方の訪問、被災地のお見舞いなど、公室の役割は多岐にわたっています。しかし将来的に皇族の人数が減りこうした活動が続けられなくなる恐れが出てきたため、公室の在り方を変える必要が出てきました。
と、ここまでは誰もが理解できるのですが…今回の改正に対しては疑問の声が上がっています。
皇室制度に詳しい名古屋大学の河西教授は…。
「私は非常に国民をバカにしていると言っていいか分からないですけど、非常に軽視していると思うんですよね。象徴天皇のこの何十年の在り方って国民と共にとか国民にいかに理解されてきたかってことを天皇を含めて皇族の方々っていうのは一生懸命考えて、一生懸命考えられて行動されてきたと思うんですよね。それをちょっと正直言うとそれを踏みにじるっていう行動だと思うんです」(名古屋大学文学部 河西秀哉教授)
今回の改正でクローズアップされたのは、父方の血筋を引く男子、男系男子。当初、衆参両院で取りまとめられた「立法府の総意」では、戦後間もなく皇籍を離れたいわゆる「旧11宮家」の男系男子を養子に迎える案が示されましたが、皇位継承権には踏み込んでいませんでした。

しかし、その後、閣議決定された政府の改正案では「養子のもとに生まれた男の子に天皇になる資格がある」と明記されていたのです。
「皇族数確保策として始まった議論が結果として新しい皇位継承資格者を生み出す制度にすり替わっていると。私たちはだまされたんでしょうか」(立憲民主党・水岡俊一代表 15日)
「衆参の正副議長にリードしてもらった議論の取りまとめにおいて法制化させていただいたということです」(高市早苗総理大臣 15日)

「男系男子」の維持が強調された今回の改正に、河西教授は。
「今回の改正は、天皇や皇族がしてきた公務や国民によりそうあり方ではなくて、血がよくあればいいんだ男の血があればいいという論理に持ってきてしまった。男系男子というところがものすごく強化されたということは言える」(名古屋大学・河西教授)
河西教授によると、海外のオランダやベルギーなどでは女性が皇位継承の資格を持っています。
国連の女性差別撤廃委員会は2年前、皇室典範を改正し、男女平等を認めるよう勧告を出しました。
皇室をめぐり、明確な「男女の差」がある現状に、名古屋の人からは…
「総理も女性になったし、女性でもいいのでは」(高校3年生)
「今の時代、女性が何かすることについて、批判的に捉えるのは良くないと思う」(男子大学生)
ANNが5月に行った世論調査では、女性の天皇を認めることに賛成か反対か、という質問に対し、85%の人が「賛成」と答えました。
しかし現状では、愛子さまのご即位を望む声が高まったとしても皇位を継承することはできません。
さらに、今後、愛子さまが結婚されて男の子が生まれたとしても「女系の男子」となるため、同じく皇位を継承できません。
一方で、旧宮家からの養子となった男系男子と、配偶者との間に男の子が生まれた場合は、皇位継承の資格を持つことになります。
「(今回の改正は)理解得られないと思う。なぜ今の天皇家から続く人たちが追いやられて、よくわかってない人が継ぐかと、私は長子優先が望ましいと思う。小さい頃から(天皇の)側にいて、なぜ両親がこんなことをやっているのかというのを理解している人のほうが望ましいのでは」(河西教授)
さらに、河西教授は「男系男子」という制約がある限り、皇族数の減少という、本来の問題が解消されないと指摘します。
「皇族数の確保が最初だったが、皇族数も確保できるのかという問題が出てきている。今のままでは男子を生まないといけないというのは変わらないのでまたいつか減っていくと思う」(河西教授)

今回の改正では、女性の皇族が、基本的に結婚後も皇室に残ることになりますが、一般の国民と同じ住民基本台帳に登録される上、夫や子どもについても皇族になる規定を設けられていません。
河西教授の見解では、
■女性皇族を巡る問題は、日本社会における男女問題と如実に関係している
■今回の改正をもって「終わったこと」とするのではなく、1人1人が自分のこととして考えて、声を上げていくことが必要
としています。

野党の反発もある中で、高市政権はなぜ今、皇室の在り方を変える一手に踏み込んだのでしょうか。
名古屋の人からは、こんな声が。
「スーパーに行っても値上げラッシュなどといっている。それを見るとこっちとしてもとどうやってここをしのいでいけばいいのか」(30代男性)
「買い物したりしてても高いなと思うし。どうしても苦しいのでそこが解決されないと話にならない」(女子大学生)
厚生労働省が全国の約33万世帯を対象に行った調査によりますと、生活が「苦しい」と答えた世帯が55.4%にのぼりました。
子どもがいる世帯に限ると60%を超える結果に。
「皇室典範も大事だと思うが、今は国民の生活を優先させるべきだと思う」(女子大学生)
暮らしに直結する政策実現を求める声が上がる中での皇室典範の改正。なぜこのタイミングだったのでしょうか。
政治ジャーナリストの青山和弘さんは保守色の強い高市政権だからこその思惑があると話します。
「2月の総選挙で圧勝したことで環境が整ったということで、これは一気にやってしまおうという機運が盛り上がったんです。しかも、立憲から中道に代わって議員数が減った。惑星直列のように、非常に保守派にとってみればいいタイミングが訪れたわけです」(政治ジャーナリスト青山和弘さん)
日本国憲法が第一条に定めるのは、「天皇の地位」について。「主権の存する日本国民の総意に基づく」と定められています。
高市政権は“国民の総意”を形成できたと捉えているのでしょうか。
「高市政権からすれば『総意なんてできるわけがない』っていう思いがある。なので一定程度、総意とみられるものを作るっていうことが大事だったわけで、国民から選ばれた国会の中で、少なくとも野党第1党が参加してくれればいいっていうところに総意っていうものの意味を見いだしちゃった。高市さんが万が一総理じゃなくなったり、中道や立憲の体制が変わったりしたらまたどうなるかわかりませんので、この国会で何としても通したい。この勢いのまま突き進んできたということ」(政治ジャーナリスト青山さん)

今国会で皇室典範改正にこぎつけた高市政権の今後について、政治ジャーナリストの青山さんは支持率が焦点だと話しています。
ANNが先月行った世論調査では、高市内閣の支持率は60.1%と高い水準を維持しています。
支持率が高いからこそ、「やりたいことを一気にてんこ盛り」にしても周囲がついてきてくれると青山さんは話します。
ただ、ひとたび支持率が下がりはじめると、チーム高市の内部で「やはり無理をするからだという不満が一気に出てくる可能性がある」と指摘しています。
消費税減税などの経済政策は?というと、支持率を下げないためにも進めたい思いはあるものの、高市総理が掲げる「積極財政」を進めれば進めるほどさらなる物価高や円安を招く恐れもあり、「思うようにできないジレンマを抱えている」とも、青山さんは指摘しています


