
“備蓄米”は3月末には店頭に…これでコメは安くなる?関係者から「NO」の声があがる背景【チャント!大石邦彦が聞く】

政府の備蓄米の入札は3月10日から始まり、3月末には店頭に並ぶと見られる。これによって日本の主食でもあるコメ不足は解消され、米価は下がるのか?食卓の最大関心事を取材した。
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市場に流通する備蓄米は、全体で21万トンだが、まずは15万トン放出される。その内訳は去年の新米が10万トン、一昨年の古米が5万トンで、銘柄は新潟コシヒカリ、宮城ひとめぼれ、山形はえぬきなど、24道県の41品種にものぼる。
では、これらの備蓄米が市場に出回ればコメ不足は解消されるのか?
コメの小売り、卸売り、農家、JAなどに取材を試みた。答えは全員が「NO」、つまり備蓄米では供給量は足りないという見解だ。理由は明確で、コメの民間在庫の不足を指摘している。
昨年度と比較した今年度のコメの在庫は、ここ半年間40〜50万トン不足し続けていて、今年1月でも前年度と比べ44万トンも足りなかった。
そこに備蓄米15万トンを投入しても不足分の3分の1程度、仮に21万トンを投入しても半分にも満たない現状なのだ。
これではコメ不足は解消できず、価格も大きく下がることはないと予測していて、取材した方の答えは「下がらない」が2人、「横ばい」が2人だった。
「コメを出し渋っている業者」は実在する?
先行きにあまり期待のできない現状の中、私は最新のスーパーのコメ販売価格を見ながら、ある疑問を抱いた。それは政府の言う「コメを抱え出し渋っている業者」は実在するのか?という疑問だ。
最新のデータでは2月17日から23日までのコメ5キロの販売価格は3939円だったが、実はそれ以前の2月14日には、政府が備蓄米の詳しい内容を公表していたのだ。
つまり、政府が言う通り「出し渋っている業者」がいれば、備蓄米の放出を見据えて、コメを今の高値で売っていてもおかしくない。
しかし、実際は思ったほど市場にコメは出回らず、コメ不足は解消されず、むしろ価格は上昇に転じたのだ。
政府の備蓄米の観測気球は、残念ながら当てが外れたと言わざるを得ないだろう。
では、集荷や卸売りなどの業者はコメを持っていないのか?実際は持ってはいるが、先を見越してストックしているのだと言う。
実は、去年はすでに春からコメ不足が始まり、夏までには枯渇していた業者が多く、契約している取引先にコメを渡せなかった業者もいた。
その反省も踏まえて、今年は契約している取引先の分は残して、その時に備えているのだという。
これは、出し渋っているというより、去年と同じ轍を踏まないようにリスクヘッジをしているともいえる。
端的に言えば、倉庫にコメはあるが、いま市場に出せるようなコメはないのだ。
「一度米作りを止めた田んぼで、すぐにコメはできない」
去年から「コメはある」と言い続け、消費の先食いをし、この問題の本質をごまかしてきたのか?国が計画的に水田を減らし、生産量を調整してきたつけが出てきた形だが、取材したある農家の言葉が刺さった。
「一度米作りを止めた田んぼでは、すぐにコメはできない。それ以上に今やそれをやれる農家ももういない」
未だ続いている令和の米騒動の陰で、米作りの担い手が急速に減っている現状を忘れてはならない。
【CBCテレビ解説委員「チャント!」アンカーマン 大石邦彦】