来日のきっかけは日本赤十字社の支援…外国人初“日本一の介護士”となったネパール人女性 日本式介護を世界へ

 愛知県清須市で働くネパール人介護士、ラマ・サビナさんが、福祉の全国大会で“日本一”に輝きました。利用者に寄り添う“日本式介護”を実践し、「日本の介護の魅力を発信したい」と話すサビナさんは、将来は母国へ広めたいと奮闘しています。

■「利用者に寄り添う」日本式介護を実践したサビナさん

 愛知県清須市の介護士、ラマ・サビナさん(30)。2019年に、ネパールから日本へやってきました。 日本語能力試験1級の流暢な日本語で、利用者にやさしく語りかけながら食事の手助けからトイレの介助までサポートし、寄り添います。

サビナさんは2026年1月、介護など福祉の体験や思いをプレゼンする全国大会で「日本式介護を世界に広めたい」と訴え、外国人としては初めて最優秀賞に選ばれました。 サビナさん: 「自分の母国には、介護と言われる業界、日本みたいにしっかり施設まで建てて、お年寄りの世話をするのはあんまりない。その人らしく人生の最後まで生きてもらうサポートをしているところが、すごく素敵なところだなと思っていて」

サビナさん: 「ベッドに横になろうかな。こちらの足上げますね。腰持ってください、いちにのさん!」 「足組んどったらやれないよ~」 名古屋弁も使いこなし、利用者が大好きな歌も覚えたというサビナさん。介護で大切にしているのは「利用者に寄り添う」こと。それこそが、日本式介護の本質だと考えています。そこには、来日当初のつらい経験がありました。 サビナさん: 「トイレの介助とかを拒否される方がいたんですね。介助の途中で機嫌が悪くなって、便のついたパットで私をパンって殴られたんですよ。何で理解してもらえないの、悪いことしたのかなって思って。ずっと泣いていました。(別の利用者が)『あなたは悪いことしていない。ありがとう』って抱きついて泣いてくれたんですよ、一緒に。そこから、どんどん利用者さんにも自分の思いをしゃべったりして」

辛い経験を乗り越えるきっかけとなったのも、利用者。わかってくれている利用者もいると信じて、拒否をされても繰り返し1対1で向き合い寄り添うことで、信頼関係を築いてきました。 利用者の希望を聞いて定期的にイベントをするのも、「日本式介護」ならではのホスピタリティだといいます。この日開いていた「抹茶会」でも、利用者が喜んでいる様子でした。 利用者: 「性格がすごくいい。しゃべりやすいの。だからとっても人気がいいよ」

■「日本ってどんな国だろう…」大地震の医療支援チームに感謝

 来日する前は、母国・ネパールで看護師をしていたサビナさん。日本に来ることになった大きなきっかけがありました。 2015年に看護学校を卒業し、病院で実習をしていたときに起きたマグニチュード7.8の「ネパール大地震」。約9000人の犠牲者が出てサビナさんも対応に追われる中で助けに入ったのが、日本赤十字社の医療支援チームでした。

サビナさん: 「その時に日本の赤十字の方たちが助けに来てくれて。優しくて丁寧に対応してくれて恩人だと思ってる。ありがとうって感謝の気持ちしかなかったね。日本ってどんな国だろう、行ってみたいなって。恩返しもしたい気持ちがあって」 ネパール人初の介護技能実習生の1期生として、2019年に来日したサビナさん。ネパール大地震で目の前の人に徹底的に寄り添う日本式の医療や福祉を目の当たりにし、関心を抱いたといいます。

2018年にサビナさんを始めとしたネパール人を1期生として受け入れた管理団体『ふたご協同組合』の代表・石田徳義さん(78)。サビナさんにとって石田さんは「日本で一番お世話になった人で、日本のお父さん」だといいます。 石田さんは、ネパールから介護職の希望者を受け入れ、指導しています。2026年春には、ネパールから17人が施設にやってきました。 サビナさんが1期生として切り開いた道は今、10期生へと受け継がれています。実習や座学など1カ月間の研修の後、介護現場で3年間の経験を積み、「介護福祉士」の合格を目指します。

ふたご協同組合 石田徳義理事長: 「人材が不足することはもう明らかでしたので、人材確保のためにはどうしても外国からの人材を求めないといけない。特にネパールは、高齢者とかそういう人たちを敬う性格、家族を大事にするという、それが介護現場ではぴったりじゃないかなと」

■介護業界の人手不足は待ったなし「あと5年持つのか」

 介護業界の人手不足は日本の大きな課題で、厚労省によると、2040年には約57万人が不足すると予想されています。 そんな中、「介護福祉士」の外国人受験者数は、2026年に過去最多を更新しました。名古屋の専門学校では「外国人専用クラス」を増設し、その需要に応えています。 一方、政府は外国人労働者への過度の依存を防ぐため、2027年から受け入れ人数の上限を設けるほか、在留許可に関する手数料の引き上げも進めていて、日本で働く外国人を取り巻く環境は厳しさを増しています。

ふたご協同組合 石田徳義理事長: 「どうしても外国の方に助けてもらわないと、人材不足分をどうやって補うか。AIとかロボットとか言われますけど、介護には人間の力や感覚がとっても大事で。諸外国の文化を日本人が、受け入れ側が理解をしないと、定着にも結びつかないし、外国の方に(日本を)選んでもらえるようにならなければ、あと5年持つのかという気がします」 サビナさんの背中を追いかける介護士たちも増えました。 介護士のラムナさん: 「(サビナさんは)リーダーもやっていますよね。利用者に対して優しくしてあげたり、ニーズに応じて対応しているところがすごいな」

サビナさんは、介護の現場に立つかたわら、日本人スタッフを含む4人のチームのリーダーを務め、利用者の情報共有を行う会議や勉強会も行っています。 今後は、「認知症ケア専門士」の資格をとってさらに知識を深めたいというサビナさん。「日本式介護」を極め、いつの日か母国ネパールに広めたいと考えています。 サビナさん: 「人とちゃんと向き合っていて、大切にして介助しているところが、本当にすごい良い仕事だな、日本式介護ってそういうところだなと。日本で頑張って、たくさんの経験を積みたいなと思っています。これから自分の国も高齢社会になっていくと思っているし、そうなると介護が絶対に必要となってくるから、日本式の介護を持っていって、みんなに提供したいし教えたいと思っています」 2026年6月3日放送

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