野菜高騰のウラで急増する“規格外” 捨てられる野菜で新商品「味をより強く」
夏の猛暑や少ない雨などが理由で、今も高値が続く野菜。
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その裏で、食べられるのに出荷できない「規格外野菜」が増えています。
さらに、魚にも“商品価値がない”として捨てられてきた「未利用魚」があります。
捨てられる食材で急成長した地元企業を徹底取材しました。
食べられるのに…捨てられる野菜
傷がついていたり、サイズが合わなかったりして出荷できない「規格外野菜」。
愛知県田原市にあるJA愛知みなみ田原集荷センターで、農家の皆さんに聞いてみると、様々な声が聞かれました。
(ブロッコリー・カリフラワー農家)
「(規格外野菜は)畑に捨てています。畑に捨てたり、親戚に配ったり。病気が少し出ているだけで出荷できないが、生産者からしたら『その部分をとれば食べられるじゃん』とギャップはある」
(サニーレタスなどの農家)
「圃場(畑)で切り捨てます。今年は夏から秋の高温の影響で多かった。今は順調だが、出荷始めは3割くらい規格外が出た。消費者に良い物を届けたいという気持ちなので、ロスは仕方ない」
(ブロッコリー農家)
「規格外野菜は道の駅にカットした物を持って行く」
「ちょっとの儲けで手間かけていては捨てたくなってくる。(今の仕事に加え)自分たちで加工まで行うのは難しい」
愛知県田原市でトマトを育てる鈴木教広さんは、「規格外トマト」について次のように話します。
(トマト農家 鈴木教広さん)
「手に乗せて見た時に、横から割れ目が見えた時点でアウト」
傷がついていたり、段ボールの大きさに合わなかったりして出荷できない「規格外トマト」は全体の1割程度出てしまうといいます。そこには、近年の異常気象の影響も…
(トマト農家 鈴木教広さん)
「年々規格外が増えている。暑すぎて、管理は気をつけているが、割れちゃいます。(昔は)ハウスの隅に捨てて、それが当たり前の光景になっていた」
規格外野菜で“新たな価値”をつくる
そうした捨てられる野菜を活用しようと取り組んでいるのが、田原市の食品加工会社「雅風」の代表・藤井恵美子さんです。
藤井さんが作っているのは、野菜や果物を乾燥させた「ドライサラダ」です。
「ドライサラダ」は、おやつ感覚でそのまま食べても、生野菜にのせてもおいしい新感覚サラダで、おいしく食べられるのに出荷できない野菜を藤井さんが買い取り、ドライサラダに生まれ変わらせています。
(トマト農家 鈴木教広さん)
「手間も経費もかけて、味は変わらない。どうにかしたいなっていうのがずっとあった。廃棄が減るのはすごく助かる」
藤井さんのもとには、ブロッコリーなど他の規格外野菜も集まってきます。
「捨てることに慣れたくない!」に応える
(ブロッコリー農家で働く鈴木祥花さん)
「かさぶたみたいな状態になると出荷はできない。あとは単に数が合わなくて出荷ができないとか」
「畑に捨てることに慣れたくはない。加工して使ってもらえるのはめちゃくちゃ嬉しいです」
道の駅などで販売し、多いときには月に1000袋以上売れるというドライサラダ。野菜ごとに乾燥させる温度や時間を変え、無添加で作っていて、水分を抜くことで野菜の味をより強く感じられるといいます。
2018年に取材した時には、「もっともっと大きくして工場を作りたい。今は小さな加工場でやっているが、工場にして、もっともっと皆さんに野菜を食べていただけるような会社ができたら」と話していた藤井さん。
その言葉の通り、はじめは自宅兼加工場で始めたこの事業も、今では独立した工場が持てるようになりました。
(雅風 藤井恵美子代表)
「正規に出荷されたものと規格外野菜は価値は変わらないし、手をかければそれ以上にもなるよって願いを込めて、いろんなものを作りたい」
生まれ変わる“捨てられた魚”
生まれ変わった「規格外」は野菜だけではありません。
そのひとつが、10センチ以下の深海魚です。深海魚は鮮度が落ちやすいため、鮮魚として広く流通しにくく、商品価値の低い小さなサイズのものは漁場で廃棄されていました。
そこで立ち上がったのが、蒲郡市の加工会社「喜栄丸カベヤ水産加工」。作っているのは、ニギスという深海魚を使ったふりかけです。
仕入れたニギスをその日のうちに干物にして、焼いたあとに頭や骨を取って細かくします。醤油などの調味液と混ぜながら煎った後、乾燥させ、蒲郡みかんの皮などと合わせて、ふりかけは完成です。
ふりかけを作ったきっかけは、深海魚を獲る「喜栄丸」という漁船を持っていた当時、船員に言われた一言でした。
(喜栄丸カベヤ水産加工 中西美智子さん)
「最初は船員さんが『揚がってきた魚を海に廃棄するのはもったいない』と言っていた。これをなんとか活用できないかと」
2019年に販売を始めたこのふりかけは、竹島水族館やスーパーなどで売られているだけでなく、今では給食にも使われるようになりました。
「もったいない」を減らしたい!
1月18日に愛知県蒲郡市の商業施設で開かれたイベントでは、子どもたちが深海魚のふりかけ作りに挑戦しました。ニギスのふりかけに、あられや青のりなどお好みの具材を合わせて完成です。自分で作ったふりかけのお味は…?
(子どもたち)
「魚っぽい感じがすごく強くておいしい」
「うまい」「ご飯にかけて食べる」
(母親)
「すごく良いことだと思う。捨てられちゃうなら、いっぱい使った方が良い」
子どもたちからも大好評です。会場には、ふりかけ作りを体験しようと集まった多くの人で、長い列ができました。
(喜栄丸カベヤ水産加工 中西美智子さん)
「並んでいただけて、本当にありがたい気持ちでいっぱい。もっと頑張って、深海魚のもったいないを減らしていきたい、おいしいところをもっと知ってもらいたいですね」