
味は南伊勢の海の恵みそのもの…『鯛ラーメン』が名物の人気食堂 夫婦二人三脚で40年以上守り続ける暖簾


三重県南伊勢町の港にある食堂「ありすえ」の名物は、鯛の旨味を凝縮した「鯛ラーメン」。シメはお茶漬けにして楽しめ、伊勢まぐろ丼も人気です。夫婦で営む店は地元客や観光客で賑わっています。
■シメはお茶漬けに…お茶葉鯛を使った“鯛ラーメン”
昭和57年創業の「ありすえ」は、南伊勢町の港町で地域の人はもちろん観光客にも親しまれる食堂です。メニューは30種類以上ありますが、看板は「鯛ラーメン」(1350円)。

客: 「海の香りがいっぱい詰まったラーメン」 別の客: 「染みわたりました。スープ完食です」

午前9時、店主の有末聡(73)さんは、長年付き合いのある鯛の養殖業者を訪ねます。 聡さん: 「ここのは、お茶葉鯛」 南伊勢町の海域は潮の流れが速く、鯛の運動量が増えるため身が締まり味もよくなるといいます。さらに、養殖特有の臭みを抑えるためエサにお茶の粉末を配合しており、「お茶葉鯛」と呼ばれています。 養殖業者の男性: 「お茶のカテキンの作用で脂肪分が少ない。抗酸化作用で菌が湧きにくい」

午前10時、仕入れたお茶葉鯛3匹を妻のむつみさん(71)がさばきます。 むつみさん: 「今日のはきれい。新鮮でピクピクしている」 続いて鯛のアラを炙り、出汁の準備へ。 聡さん: 「丸々煮ると脂が出てくる。脂抜きをする」 目指すのは、あっさりとした透明なスープ。炙ることで余分な脂を落とし、雑味のない澄んだ出汁に仕上げます。

聡さん: 「弱火でゆっくり。濁らせてはダメ。鯛ラーメンだけは、(客が)どんぶりがキレイになるまで飲んでくれて、ほとんどスープが残っていない」 スープ作りで欠かせないのがアク取り。1時間ほど煮込む間、鍋から目を離さず丁寧に仕上げます。こうして完成した鯛のスープに、豚骨と鶏ガラの出汁を合わせます。

麺は中太ストレート。たっぷりの野菜に三重名産の「あおさのり」を添え、仕上げにバターでソテーした鯛の切り身をトッピング。夫婦で作るこだわりの「あっぱれ鯛ラーメン」(1350円)。シメはご飯を加えて、お茶漬け風に楽しめます。
■もう一つの名物は地元ブランドの“伊勢まぐろ”
午前11時半に店はオープン。 客: 「鯛ラーメンは優しい味。魚介の出汁がおいしい」 別の客: 「鯛ラーメン。後でお茶漬けを食べられるのがいい」

多くの客の目当ては鯛ラーメンですが、もう一つの名物が地元ブランドの「伊勢まぐろ」。身の締まった赤身は特においしいと評判です。その伊勢まぐろを「漬け」「ネギトロ」「ユッケ」の3種類で味わえる「神前丼(かみさきどん)」(2000円)は、鯛ラーメンに次ぐ人気メニューです。

客: 「すごくとろける」 別の客: 「やわらかくて臭みもなくおいしかった」

さらに「まぐろの串カツ」(600円)や、地元でも珍しい「まぐろの心臓」(350円)、特製醤油ダレに漬け込んだ「まぐろの漬け丼」(1500円)も好評です。
■夫婦二人三脚で守る…常連客に支えられた40年
聡さんは大阪生まれ。高校卒業後は名古屋でサラリーマンをしていましたが、結婚を機に妻・むつみさんの故郷・南伊勢町へ。ラーメン店を開くため近くの飲食店で修業を始めました。当時は包丁を握ったこともなかったといいます。

聡さん: 「教えてもらいながら、朝から晩までピーマンを切っていた」 昭和57年に念願のお店をオープン。当初は苦戦しましたが、少しずつ常連客が増えていきました。 聡さん: 「今は楽しい。ラーメン作ってやることは単調だけど、ひとくち食べて『うまい』って言われたら、こんなうれしいことはない」 夫婦二人三脚で営んできた「ありすえ」ですが、気が付けば開店から40年以上が経ちました。

聡さん: 「常連さんが『店をつぶしてはいかんよ』って。自分ではまだまだやれるつもりでいる。ひとりでは無理。妻がいないと」 夫婦二人三脚で守り続けてきた「ありすえ」の味は、南伊勢の海の恵みそのもの。40年を超えた今も、人々を笑顔にする一杯を作り続けています。 2025年9月17日放送