
今年の名古屋は暑かった 猛暑日・熱帯夜が過去最多 「熱中症特別警戒アラート」東海3県で発表の可能性は

記録ずくめ「名古屋の暑さ」

9月下旬になり、ようやく暑さも一段落の気配が漂い始めています。それにしても、今年の夏は暑かった。名古屋は8月31日に最高気温40.0℃を観測、今季の猛暑日(最高気温35℃以上)は52日、熱帯夜(最低気温が25℃以上)は73日にのぼり(いずれも9月18日まで)猛暑日、熱帯夜ともに過去最多となっています。
メ~テレの放送エリアの愛知・岐阜・三重の東海3県では「熱中症警戒アラート」が多く発表されました。
実は熱中症への注意を呼び掛ける情報には、「熱中症警戒アラート」のワンランク上に「熱中症特別警戒アラート」があります。「これだけ暑かったのだから熱中症特別警戒アラートが出てもいいのでは?」と思う人もいるのではないでしょうか。
その「熱中症特別警戒アラート」を紐解いてみます。
「熱中症警戒アラート」とワンランク上の「熱中症特別警戒アラート」
私たちがよく耳にする「熱中症警戒アラート」は、当日・翌日の「暑さ指数」が33以上(予測値)になったときに環境省と気象庁が発表します。「暑さ指数」は気温の他に湿度なども加味した指数です。
天気予報を行う府県予報区の中で、1カ所でも「暑さ指数」33以上の観測地点があると、その予報区全体に「熱中症警戒アラート」が発表されます。
例えば、「名古屋」の暑さ指数が33以上になると、「熱中症警戒アラート」は「愛知県」に発表されます。そのとき、愛知県内の観測点で「暑さ指数」が33に達していない場所があったとしても、熱中症警戒アラートは「愛知県全体」に発表されるのです。多くの人に熱中症への気づきを促そうというわけです。
これに対してワンランク上の「熱中症特別警戒アラート」は、発表の基準が厳しくなります。環境省のHPには「都道府県内のすべての観測地点で翌日の暑さ指数が35に達すると予想される場合などに発表される」と記載されています。
「すべての観測地点で暑さ指数が35を超える」。東海3県でこの「熱中症特別警戒アラート」が発表される可能性はあるのでしょうか。
「熱中症特別警戒アラート」発表の可能性は極めて低い?

暑さ指数を観測する地点は愛知県内に11カ所、岐阜県内に23カ所、三重県内に12カ所あります。それぞれの県で「熱中症特別警戒アラート」が発表されるケースは、各県のすべての観測点で、「暑さ指数」が35以上になったときです。
暑さ指数のデータを考察してみると、「すべての観測点で35以上になる可能性はかなり低い」と考えられます。なぜか?山間部などに気温が低い地点があり、相当暑くならないと、「暑さ指数35」には到達しないからです。
例えば、岐阜県高山市六厩の「暑さ指数」のグラフ。9月13日から18日までの間で、「暑さ指数」の最高は9月17日の26.0(最高気温は27.4℃)です。この日は岐阜・多治見の最高気温が35.0℃の猛暑日、「暑さ指数」は32.9でした。多治見と六厩では、気温も暑さ指数も大きな差があります。
今年8月の六厩の「暑さ指数」の最高値は8月3日の29.2です。発表基準の35とはかなりの差があります。岐阜県の場合、すべての地点で「暑さ指数」が35以上になるのは相当ハードルが高いと言えます。
同様に愛知県では豊田市稲武が夏も比較的涼しい場所で、8月の「暑さ指数」の最大は31.0です。愛知県も「熱中症特別警戒アラート」が出る可能性は非常に低いと考えられます。一方、三重県の観測点には愛知、岐阜のように気温が比較的低い観測地点はありません。
そこで今季最高気温が40℃を超えた桑名の「暑さ指数」を見てみると、8月の最高は34.3です。気温が高い観測点でも、「暑さ指数」が35以上になることは、なかなかないことが分かります。
「熱中症特別警戒アラート」が発表されるケースは?

この「熱中症特別警戒アラート」の運用は2024年4月から始まっています。この夏は連日、「暑さ指数」とにらめっこをしながら「熱中症特別警戒アラート」が発表されるケースはどんな状況の時だろう、と考えてきました。
「都道府県内のすべての地点で暑さ指数が35以上になる」というケースは、東海3県以外の都道府県でもなかなかないケースでは?という印象を私は持っています。とはいえ、最近の暑さは異常です。いつかこの「熱中症特別警戒アラート」が発表される日が来てしまうのか?その時は、これまで以上に過去に例がなく、命に危険を及ぼす暑さが迫ってきたときです。
(メ~テレ 災害担当デスク・気象予報士 柴田正登志)