「ごりごり」「まったり」「さくっと」 SNSの普及で日本語の単語はより短く感覚的に変化
「ごりごりの車好き」。「ごりごり」とは本来、固いものを噛んだときに歯応えがある様子を表す擬態語ですが、最近は “筋金入りの”という意味で辞書に載っています。
文化庁が9月17日に発表した「国語に関する世論調査」によると、「“筋金入りの”の意味でごりごりを使うことがある」と答えた人は、全体の20%でした。しかし「他人が使うのが気にならない」と答えた人は59.4%。6割ほどの人が、新たな意味を受け入れています。
SNSの普及で新しい日本語の誕生が加速
ほかにも「ゆっくり、のんびりとした」という意味の“まったり”や、「時間や手間をかけない」ことを意味する“さくっと”なども、気にならないと答えた方は8割以上いました。
三省堂の「現代新国語辞典」の編集主幹を務めている、明治大学文学部の小野正弘教授に話を聞くと、新しい日本語の登場は「SNSの普及で加速した」との見解を示しています。
SNSでは「ごりごり」「まったり」「さくっと」といった言葉は文字数が少なく、感覚に訴えかけるような擬態語がよく使われる傾向にあります。若者の間で日常的に生活の中でも使われるようになり、その後、辞書に載ることで認知度が上がってきているのです。
しかもSNSには、画像や動画も一緒に載せることができます。小野教授は「すべての情報を言葉だけで伝えなくていいという、SNSの特性も短くて感覚的な新しい日本語を生み出す土壌になっている」と話していました。
「失笑」「うがった見方をする」の意味は?
さらに「失笑」という言葉、本来は「こらえ切れず、吹き出して笑う」の意味ですが、この意味を知っていた人は26.4%。つまり4人に1人の67%の人が「笑いも出ないくらい、あきれる」という意味だと認識していました。
そのほか「うがった見方をする」は、「物事の本質をとらえた見方をする」が本来の意味。しかし6割以上が「疑ってかかるような見方をする」と回答しています。
なぜ、本来とは違う意味が浸透するのでしょうか。
「本来の意味への過度なこだわりはしなくていい」
小野教授はこれにもSNSが関係しているといいます。「失笑する」「うがった見方をする」といった書き言葉のような表現は、SNSであまり目にしません。特に若い世代は、普段使用しない言葉を難しいと感じて拒絶する傾向にあるそうです。こうした世代が増えてくると、これまで使われていた日本語や本来の意味が淘汰されていきます。
小野教授は「何が正しい日本語なのかは時代によって、変わっていく」としたうえで、「本来の意味への過度なこだわりや新たな言葉の拒絶はしなくていい」と話していました。
小野教授は講義中に、泣いている様子を表す擬態語「ぴえん」を使って、学生の興味を引いているそうです。もちろん、本来の正しい意味や使い方を知っておくのは大切ですが、言葉の意味について共通の認識があれば、新しい言葉はコミュニケーションを円滑にするツールになるのではないでしょうか。