男性ばかりというイメージの強い町工場を引っ張る女性社長。ほかの業種に比べて圧倒的に女性が少ない日本の製造業。それを切り盛りする秘訣を取材しました。
【写真を見る】倒産寸前→3年で黒字化 32歳で社長になった元専業主婦 260円の社食や子育て支援…町工場を変える女性社長たち
愛知県愛西市の工場。ズラリと機械が並ぶ中、声をかけて回る女性は、社長の水谷架緒莉さん(48)。
もとは専業主婦でしたが、ワケあって社長を引き継ぎました。
(朝日工業 水谷架緒莉社長)
「前夫がやっていた事業の一部が廃業することになったので、その一部を引き継いでやるようになった」
当時は社員2人の赤字企業…
ここ「朝日工業」は、機械の回転部分を支える「ベアリング」のメーカー。今でこそ高い技術力で知られていますが、16年前、元夫から引き継いだ時は、社員2人、倒産寸前の赤字企業でした。
(水谷社長)
「お客様や社員もいたので、なんとか継続していかなければということで、借金を含めてやっていくという話し合いをした」
製造業どころか会社経営も全くの未経験。それでもベアリング一本で勝負すると決め銀行と掛け合って最新の工作機械も導入し、朝日工業を再スタートさせました。
(水谷社長)
「業界の常識も分からないし、経営するという意味を理解していないままとにかく目の前のことを必死にやっていたのが4年くらい続いた」
高い品質が評判となって、世界トップシェアのベアリングメーカーから受注を増やし3年で黒字化。借金も5年で完済し、今や売り上げは10倍です。
(水谷社長)
「社長になった時は32歳だったので(現場から)『何しに来たの?』という雰囲気だったと思うけれど、みんなに助けてもらいながら、売り上げも社員数も増えていったと感じている」
社員の3分の1が女性 短時間勤務や時差出勤など 子育て支援も充実化
ここの特徴は、女性社員が多いこと。
(水谷社長)
「社長になってから入ってもらった人ばかり。工場長も事務の方々も女性」
社員は現在39人になりましたが、3分の1が女性です。
そのため、短時間勤務や時差出勤など子育て支援の働き方も導入しました。
(社員)
「働きやすかった。(子どもが)小さい頃は、社長も子育て経験者なので理解してもらえて、助かっている」
社食は今も1食260円 交流の場に
水谷社長がもう一つ重視したのが「食事」です。社員食堂を充実させ、1食なんと260円。ここが社員との交流の場にもなっています。
(社員)
「とてもおいしいです。毎日おいしいもの作ってくれて、ありがとうございます」
Q.社長はどんな人?
「すごい人ですよ、決断力と行動力がある」
(水谷社長)
「女性にも少しずつでいいから、無理のない範囲で、社会で活躍できるようになってもらうことが自分自身がより豊かな人生を送れるのではと思う」
そもそも女性経営者が少ない日本で、製造業の女性社長は5.8%と、とりわけ少ない実情があります。
(名古屋商工会議所 企画部 久野幹太さん)
「(製造業で働く)女性の人数が少ないので、社長も少ない状況。小さい頃から将来仕事するイメージがあるかないかが、大きな影響があるのではないかと思う」
製造業はコロナ禍が終わった後も、相次ぐ戦争や円安で景気が安定せず、倒産が少しずつ増えている厳しい状況も。こうした中、先日 町工場の社長に就任した女性が。
「祖父・父が守ってきた会社を“守りたい”」
名古屋市緑区にある「神穂工業所」の3代目・代表取締役 竹内麻莉江さん(37)。
(神穂工業所 竹内麻莉江社長)
「ただがむしゃらに自分がやれること、自分がやるべきことを必死に毎日もがいている」
大学卒業後一般企業に就職しましたが、先代の社長である父親が体調を崩したことがきっかけで、6年前ここで働き始めました。
金属加工や、工作機械の組み立てを手掛ける会社は厳しい経営状況でしたが、あえて事業承継を決めました。
(竹内社長)
「祖父がつくって、父が守ってきた会社を“守りたい”という思いが自分の中で強かった。70年続いてきた会社をなくしてしまうのがすごく嫌だった」
社長だけど営業担当 1日10件以上回ることも
会社の創立70年を迎えた今年3月に社長に就任。
(竹内社長)
「今、製造業は厳しい所が多いし、父親も継いでくれて嬉しい反面、やらせていいのかなという心配はあったと思う」
(竹内社長)
「では、営業行ってきます」
立場は社長ですが、今も営業担当として多い時で1日10件以上の会社を回ります。
(竹内社長)
Q.今日は何する?
「仕事の相談。あとは仕事があればと様子伺いに」
向かった場所は、中川区にある鉄工所。
(小出鉄工所 担当者)
「加工工場の人は気難しい人が多い。その中で明るく振る舞って、話せるのは彼女の強み」
地元の経済団体や、経営者の勉強会にも通い、人脈を作りながら新規の取引先を開拓しています。
(竹内社長)
「(ことし3月に)航空宇宙産業の案件を受注することができた。創業70年やってきて初めての分野なので、今までやってきたものも大事にしながら、新しく代も替わったので、どんどん挑戦して会社を変えていきたい」
シャッターはピンク色に “会社かわいい計画”
社長になったのを機に、会社のシャッターも、ピンク色に変えました。
(竹内社長)
「製造業でシャッターをピンク色に塗っている会社はなかなかないかなと思ったので、差別化。社長が私に変わったので、私の色が出るようにピンク色に。“会社かわいい計画”をしようかなと」
今の目標は…
(竹内社長)
「100年企業にしたい。会社のポテンシャルとか、社員の技術は信用できるし信頼に足るものがある。そこは自信をもって前向きにアピールして、いい会社にしていきたい」
「ものづくりのまち」愛知を下支えする街の製造業。先頭に立って引っ張る女性が少しずつ増えています。


