
皮膚の難病「表皮水疱症」と闘う小学2年男児「少しの刺激で皮膚に水ぶくれが…」夏には“指の癒着”剥がす手術 新薬開発で治療に光も

三重県津市に住む男の子。「表皮水疱症」という皮膚に水ぶくれが出来て、その水ぶくれがはがれてしまう難病と闘っています。いつも笑顔で頑張る姿に密着しました。
【写真を見る】皮膚の難病「表皮水疱症」と闘う小学2年男児「少しの刺激で皮膚に水ぶくれが…」夏には“指の癒着”剥がす手術 新薬開発で治療に光も
(記者)「好きな食べ物は?」
(田邉柊くん)「ピーマン」
(記者)「え?ピーマン好きなの」
取材を始めたのは、2年前。三重県津市に住む、田邉柊くん。生まれた時からある病気と闘っています。
(母・光希さん)
「表皮水疱症という病気。少しの刺激で皮膚がめくれたり、水ぶくれができる」
表皮水疱症は、生まれつき皮膚のたんぱく質が正常に作られず、少しの刺激で水疱ができたり、剥がれたりする国指定の難病です。患者の数は全国で約500~1000人とされていて、根本的な治療法はまだ見つかっていません。
抗菌シートを全身に…剥がす際には痛みも
(父・昴秀さん)
「生まれた時は、今の病気という感覚は全くなく、出血が足についているくらいだと思っていた」
全身の皮膚にかゆみが出るほか、手足の指の癒着や変形も起きてしまいます。皮膚を保護するために、抗菌処理がされている専用のシートを全身に貼らなければなりません。
以前は、お風呂でお湯をかけながらシートをはがす時の痛みが、どうしても苦手でしたが…
(母・光希さん)
「だんだん痛くないというのがわかってきて、泣かなくなってきた」
真水よりはしみにくい生理食塩水を使うことで、お風呂も少しずつ好きになってきました。
夏休みには“指の癒着”を剥がすための手術も
去年4月には、小学校へ入学。満開の桜のもと、お母さんお父さんと一緒に入学式に出席しました。
(記者)「友達は何人くらい作りたい?」
(柊くん)「10人」
柊くんはいま、小学2年生。体育など一部の授業を除き、普通学級で過ごしていて夏休みには宿題も頑張っていました。
成長とともにできることも増えましたが、病気との闘いは、変わらず続いています。この夏休みには、右手の指の癒着を剥がすための手術を行いました。
(母・光希さん)
「右手は結構固まっちゃっていたので、10歳までには切って動かす手術をしないといけなかった。これからリハビリにも通う」
(記者)「痛かった?手術のとき」
(柊くん)「うん」
アメリカで新しい塗り薬を開発 国内でも承認
今は根本的な治療法がない「表皮水疱症」ですが、ことし7月、新たな動きがありました。アメリカで新しい塗り薬が開発され、承認されたのです。
(Krystal Biotech Japan 金子博明さん)
「塗り薬ではあるものの、遺伝子治療の薬で、ウイルスベクター製品です。傷を完全に塞ぐというところがこの製品の目的」
「バイジュベックゲル」というこの新しい塗り薬は、タンパク質を設計する遺伝子を患者の細胞に送り届けることで、必要な皮膚のタンパク質を作り出し傷を治す仕組みです。アメリカでの治験では、半年間投与すると、7割の患者で傷が治る効果が確認されています。
(Krystal Biotech Japan 金子博明さん)
「アメリカでも在宅投与が認められている。投与頻度に関しては、週に1回傷の部分に投与していただく」
日本でも承認され、近く販売が始まります。
(Krystal Biotech Japan 笠本浩社長)
「希少疾患の中でも表皮水疱症の患者さんの、痛みや苦痛のレベルは尋常じゃないと思って、これをなんとか助けないといけない」
柊くんの表皮水疱症はこの薬を使える型で、11月以降には治療を始められると、母・光希さんも期待を寄せます。
(母・光希さん)
「痛みもなく塗っていくだけなので、すごく手軽で、うちは(薬が使える)栄養障害型なので、ラッキーと思いました」
「柊くんが学級委員」
2学期を迎えた柊くん。きょうは大好きな英語の授業です。
友達に手伝ってもらいながら、積極的に発表もします。
柊くんがサッカーのジェスチャーをすると…
(クラスメイトたち)
「サッカー!」
そして、新たな挑戦も!
(友達)「(柊くんが)学級委員」
(記者)「立候補したの?」
(柊くん)「うん。1学期 手を挙げられなかったから」
運動会に遠足など、行事もいっぱいの2学期。楽しみにしています。
(柊くん)
「運動会の50メートル走を頑張って走る」
家族や学校の先生、たくさんの友達に支えられながら、1歩ずつ成長している柊くん。きょうも笑顔で生活を送っています。