
津島のウナギは陸で育つ⁉ 放置された農業用温室を利活用し、ウナギの陸上養殖を手がける「つしま鰻」。約1年間で事業を本格化し次々と出荷 愛知・津島市

ウナギは通常、養殖池で育てられます。しかし、愛知県津島市では、事情の異なるウナギ養殖が行われていました。
過去に花を栽培していた廃温室の室内にタンクを設置して、大塲(おおば)良太郎さんを代表者とする「つしま鰻株式会社」が、ウナギの陸上養殖に取り組んでいます。津島産の陸上養殖されたウナギが今年、次々と市場に出荷。評判を呼んでいるということです。
つしま鰻株式会社は、大塲さんが経営する通信回線工事の「中部デジタル通信」を含め、津島市内に営業拠点をもつ3社が出資して2024年7月に設立されました。
津島市内では、農業従事者の高齢化や後継者不足などで放置され廃虚となっている農業用の温室が増加しています。
タンクを用いたウナギの陸上養殖は、市内で放置されている温室を有効活用できるのでは、という出資者らの提案から始まりました。

約14年前、仕事で韓国に出張する機会の多かった大塲さんは、韓国でウナギの陸上養殖が盛んに行われていることを知りました。
大塲さんは通信回線の工事を本業として続けながら、韓国の知人とのつながりからウナギの売買も手がけるようになります。
その中で、養殖池での育成中に体長15~20センチメートルで成長が止まってしまうウナギの幼魚が多く、そうした魚は市場に出荷されずに廃棄されている現状を知ったと大塲さんは言います。
ウナギという貴重な資源をもっと有効に育てることはできないかと、大塲さんは考えました。
つしま鰻の設立と同時に、大塲さんは、タンクを用いたウナギの陸上養殖を開始。サイズが小さく市場に出回らないウナギの幼魚を引き取って育て始めます。
そこで大塲さんは、従来の養殖池でのウナギ養殖にはなかった、独自の工夫を加えました。

木曽川からの地下水を引き、酸素を2倍に濃縮して加え、成長を促しています。
水温も28℃と高めに設定し、成長を促進させる工夫をさらに加えました。
飼料は地元の酒蔵から調達した酒粕を配合して使い、栄養価を重視しているといいます。

養殖場では、深さ1・2メートル、直径2~5メートルのさまざまな大きさのタンク16基が水温管理され、約4万匹が飼育されているということです。

今年4月から始まった出荷は約200キログラムずつ行い、すでに4回実施。主に三河地方の問屋に卸しています。7月は約700キログラムの出荷を予定しているといい、出荷量が安定しないのが現状の課題だと大塲さんは指摘します。
大塲さんは「放置された農業用ハウスなどを活用し、養殖施設を増やしていきたい」と話しています。