
6人乗った軽が横転し5人死亡の事故も…『定員オーバー』等の危険性を検証 人の重さで車の挙動はこれだけ変わる


2025年10月3日未明、三重県名張市で定員を超えて6人が乗った軽乗用車が横転し、5人が死亡しました。現場には花が手向けられ、事故の衝撃を物語っています。警察は、スピードの出しすぎやスタッドレスタイヤの使用などが事故の原因になった可能性があるとみて調べています。
■現場に残る“衝突の跡”… 若者6人乗車の軽自動車が横転
横転事故を起こした現場です。車には定員を超える16歳から23歳の男女6人が乗っていて、女子高校生2人を含む5人が死亡、16歳の男子高校生が大けがをしました。

記者: 「縁石には白い車が擦ったような跡が続いていて、この先の電柱には車がぶつかったような跡が残されています」

現場は片側1車線で、直線がしばらく続いた後にカーブに差し掛かっています。 警察への取材によると、車はカーブの少し手前で路肩の縁石をこすりながら走行し、その後、電柱に衝突。その弾みで横転したとみられています。 事故の衝撃で、6人全員が車の外に投げ出されたといいます。

警察は、軽乗用車は事故当時、制限速度を50キロ超えるスピードを出していたとみており、さらにゴムが柔らかく、通常のタイヤよりコーナリング性能が劣る“スタッドレスタイヤ”を装着していたとしています。
■「定員オーバー」がブレーキ性能に与える影響
「定員オーバー」と「シートベルトを正しく着用していなかったこと」が引き起こしかねない事故の危険について、JAFが行った実験をもとに検証します。車に乗った人数の違いで、ブレーキ性能にどのような差が出るのか。ドライバー以外の人の重量は重りで再現されました。

まず、ミニバンに運転手1人で乗っていた場合は、ブレーキを踏んでから27.2メートルで停止しました。 定員いっぱいの場合はどうでしょうか。同じ速度・同じ力でブレーキを踏みますが、停止するまでの距離は31.5メートル。 1人で乗っていた場合よりも制動距離が長くなりました。

続いては旋回テスト。 カーブに沿って走った場合、どのような差が出るのでしょうか。

軽自動車に1人で乗った場合と、定員いっぱいが乗車した場合を比較すると、定員いっぱいの場合の方が膨らんで曲がっています。 さらに正面から見ると、車の外側が遠心力で沈み込み、横転する可能性も高くなることがわかります。

JAFの担当者: 「(定員乗車時には)いつもと同じタイミングでブレーキ踏むと、思っていたラインで止まれない。カーブを曲がるときも、遠心力が大きくなり、さらにスピードが出ていると余計に曲がりきれず外側に膨らんでしまう」
■「シートベルト未着用」の衝撃
続いては、運転席側の後部座席に座った人形だけがシートベルトをしていない状態で障壁にぶつかる実験。シートベルトをしていない人形だけが前方へ投げ出され、激しく顔を打ちつけ、その衝撃で運転席を押しつぶしています。

JAFの担当者: 「(シートベルト非着用の)3つの危険として、“自分が致命傷を負ってしまう”、“同乗者にも致命傷を負わせてしまう”、“自分が車外に放出されてしまう”ことが挙げられます」

警察庁によりますと、後部座席のシートベルトを着用しなかった場合、約26%が車の外に放り出されて亡くなっているということです。

この実験は、シートベルト着用の大切さを改めて実感させるものとなりました。 2025年10月10日放送