岐阜県知事選で江崎氏が初当選 “相乗り”功罪は? 専門家「県民の機会奪われた」
26日に投開票された岐阜県知事選は、新人の江崎禎英氏(60)が初当選。主要政党がほぼ相乗りで推薦するなか、議会との緊張関係は。
26日に投開票が行われた、岐阜県知事選。
元内閣府大臣官房審議官の江崎禎英氏(60)が初当選しました。
岐阜県で、新しい知事が誕生するのは20年ぶりです。
「子どもたちが岐阜県を誇りをもってふるさとだと名乗り、日本や世界の人が岐阜県に訪れたいと思うような未来に向かって、誠心誠意がんばっていく」(自民・立憲・国民・公明 推薦 江崎禎英氏)
江崎氏の知事選挑戦は、初出馬だった前回2021年に続き2回目です。
5期目の古田知事は、任期限りで引退を表明。
幅広い支援を得た江崎氏は「若い女性や子育て世帯が安心して働ける環境づくり」や「災害などに強い医療・防災システムの整備」などを訴え、共産党が推薦する和田玲子さんに約30万票の大差をつけて、新人同士の一騎打ちを制しました。
投票率は過去2番目の低さに
ただ投票率は36.21%で、前回の知事選を11.83ポイント下回り、過去2番目の低さとなりました。
一夜明けた27日、江崎さんは岐阜駅前で有権者に感謝を伝え、今後の抱負を語りました。
「いよいよという感じと、いつもと変わらない部分もあって、ちょっと不思議な気持ちです」(江崎氏)
一方、有権者の3人に1人しか投票しなかったことについては――。
「投票率が低いのは『誰がやっても変わらないのでは』という気持ちの表れ。今回は行かなくても、どうせ決まっているだろうという中でも、多くの方が名前を書いていただいて、力強いことだと思っているし、そういった方の思いも背負って、一緒に頑張っていきたい」(江崎氏)
県民は、今回の選挙をどう見る?
県民は、今回の選挙をどう見ていたのでしょうか――。
「20年ぶりということで、子どもが25歳と19歳の子がいるが、本当に20年は長いなというのがあったので、(江崎県政を)楽しみにしている」(自営業・50代)
「(投票率の低さは)やはり残念だなと思う。一人一人の意識がちょっとないのでは。岐阜を盛り上げようとか、岐阜の生活をもう少し真剣に考えてほしいと思う」(会社員・70代)
「もっと分かりやすく、この人が岐阜県に対してやりたいと思っていることを、若い人にも分かりやすくしてもらえるといいのかなと思った」(専門学校生・10代)
県民の関心が高まらなかった要因は
県民の関心が必ずしも高まらなかった知事選。その要因は――。
前回の岐阜県知事選は、自民党が「古田派」と「江崎派」に分かれ、55年ぶりの保守分裂に。激しい選挙戦となりました。
ところが、今回は構図が一転しました。
自民は、いったん出馬を表明した参院議員が立候補を断念。
江崎氏を推薦することでまとまりました。
立憲民主・国民民主・公明の各党も江崎さんへの推薦を決め、“相乗り”の構図が固まりました。
構図の変化が投票率に影響したと指摘
専門家は、構図の変化が投票率の低下に影響したと指摘します。
「相乗りの選挙になってしまいましたので、岐阜県民は主権者として、県民の意思を表明する機会を実質的に奪われた」(名城大学 昇秀樹教授)
“相乗り”で懸念されるのは、投票率の低下だけではありません。
江崎陣営の幹部は、当選が決まったあとの支援者へのあいさつで――。
「県議会議員46人おりますが、45人が我々の味方です」(江崎陣営 猫田孝県議)
議会の大多数が、新知事の支援に回ったことを強調しました。
議会のチェック機能に影響は?
"相乗り"に支えられた、今回の選挙戦。
議会のチェック機能に影響はないのでしょうか。
「相乗りしても、相乗りで"なぁなぁ"になることは全くないと思います。江崎県政が議会として、『県政自民クラブ』として納得できない場合は、当然議論して、いろいろな結論を出す形にしたいなと。全てオールイエスはない」(岐阜県議会『県政自民クラブ』 村下貴夫県議)
「"相乗り"というのは、たまたま同じ船に乗ったという意味合いだと思っていて、これから各党が協議をしながら、江崎氏をどのようにもり立てて、岐阜県づくりをどのようにやっていくのか決めていけばいい」(岐阜県議会『県民クラブ』 渡辺嘉山議員)
岐阜県政の今後はどうなるのか。専門家は――。
「議会は議会の立場で、知事をチェックするのが本来望まれていることで。知事の提案することに対して、違うんじゃないかとか、あるいはこうすればもっといいんじゃないかを、まさに議論し合う場所としての議会を心がけていただきたいというふうに思います。もし素通りするようなことがあったら、県民はがっかりしますし」(昇教授)