カスハラ防止条例案 全国初「カスハラで氏名公表」の制裁措置も 来年4月の施行目指す 三重・桑名市
客から従業員などへのいやがらせ=「カスタマーハラスメント」略して「カスハラ」について、三重県桑名市が氏名の公表を盛り込んだ条例案を議会に提出しました。その狙いと市民の受け止めは?
最近話題に上ることが多い「カスタマーハラスメント」
実際に、労働組合に寄せられたアンケートでは――
「接触したかしないかで、謝罪はしたものの、謝罪がないとSNSで名指しで投稿された」
「『女には話が通じないからお前じゃダメだ。男の責任者を呼んで来い』と言われた」
そんな中、三重県桑名市では――
「まもなく桑名市議会が始まります。きょう桑名市はカスハラ防止条例案に関する議案を提出します」(上坂嵩アナ)
桑名市では4日、12月定例議会が開会。
全国から注目を集める「カスハラ防止条例案」が提出されました。
全国で初めてカスハラをした人の氏名を公表できる、とする内容が盛り込まれています。
「桑名市カスタマーハラスメント防止条例の制定につきましては、従業員が安心して働ける環境を確保し、事業者等が安心して事業活動を行うことができるよう条例を制定するものです」(桑名市 伊藤徳宇 市長)
氏名公表の制裁措置が含まれているのは全国初
カスハラ防止条例案は、桑名市内の事業所で働く従業員に対する客からの「カスハラ」、カスタマーハラスメントの防止をねらったものです。
被害者側から訴えがあると、市長は弁護士らを含む第三者機関に伝達。
第三者機関は行為をした人への聞き取りなどをして、実際にカスハラにあたるかどうかを判断します。
カスハラと判断された場合には、市長が行為をした人に警告。
警告に従わない場合には、氏名など行為者を特定できる情報の公表に踏み切ることができる、とする内容です。
桑名市によりますと、氏名公表の制裁措置が含まれているのは“全国初”だということです。
条例案について「実効性」を求める声も
今回の条例について担当部署に話を聞くと、市内の事業者が安心して経済活動を行うため、カスハラ発生の抑止力になることを期待しているということです。
条例案を担当する商工課は、氏名公表が条例案の目的ではないと強調します。
それでは、なぜ「全国初」となる制裁措置を盛り込んだのか。出てきたキーワードは「実効性」でした。
桑名市が条例案を提出する前に行ったアンケートによりますと、回答した市内で働く従業員226人のうち、「カスハラと思えるような言動があったか」について約37%は「威圧的な言動」があったと回答。
また、32%が「脅迫や中傷などの精神的な攻撃」があったと回答したということです。
一方、このアンケートでは、カスハラ防止をめざす条例案について「実効性」を求める声も多く寄せられたといいます。
市はアンケート結果を踏まえて条例案の内容を検討。
最終的にカスハラをためらう「抑止効果」を期待して、氏名公表までを盛り込んだ内容になったといいます。
街の人はどう感じているか
「全国初」となる氏名公表の制裁措置を盛り込んだカスハラ防止条例案について、桑名の街の人はどのように感じているのでしょうか――
「学生なので駅前の居酒屋でバイトしています。条例があるだけでカスハラをする人も少なくなると思うので、広まってくれたら、いろいろやりやすいかなと思います」(大学生)
「バイトを始めたての人は、どうすればいいか分からないと思うので、学生にとってはいいのかなと思います」(大学生)
「名前はあまり公表しない方がいいと思う。出入り禁止などそこそこで、個々にその人に『来ないで』と言うくらいならいいのでは。名前が皆に知れ渡ったら、いじめにあうのでは」(70代)
桑名市の商店街で飲食店を営む人に「カスハラ」について聞いてみると――
「もう1軒、居酒屋をやっているが、カスハラはめちゃくちゃあります。店と客の立場が店側はイーブンだと思っているが、お客さんは立場が上だと思っているので、名前を公表されることを恐れるから、理不尽な人も考えてから話すようになるのでないですか。今まで言った者勝ちだったので」(FRUITS SNOW. オーナー 長田潤太さん)
全国初となる「氏名公表」措置を盛り込んだ桑名市のカスハラ防止条例案は、12月25日に市議会での採決が予定されています。
市は、来年4月の施行を目指していてます。