
台風や大雨の時に車で避難 要注意ポイントは?【暮らしの防災】

8月初旬、九州地方で線状降水帯が発生し、9月初旬の台風15号では東海地方でも浸水被害がありました。九州の豪雨では、複数の方が車で避難中に亡くなりました。車ごと川に流されたり、家族で乗り込んだ車が土砂崩れに襲われたりなど、命を守るための行動中に命を落としました。痛ましい限りです。確かに車で避難すれば雨で濡れることはありません。しかし車で避難することに伴う危険もあります。大雨・台風時の「車での避難」の、注意点をまとめました。
事前に避難場所を調べる

避難場所を事前に調べて決めておきます。その避難先に十分な駐車スペースはあるのか?避難したら自分たちはどう時間を過ごすのか?何が必要なのか?も調べて準備します。
避難経路を実際に走って予習

避難経路を調べます。途中に浸水想定域はないか?土砂崩れの恐れがある場所を通らないか?自宅からの距離・所要時間を調べます。ハザードマップでチェック、実際に走って予習します。
浸水想定域・土砂災害警戒区域は避けてください。いざという時に“初めて走る”のは危険です。事前に走って、そこを走る注意点などを把握します。
浸水が始まったら車避難は危険

浸水した道路を車で走るのは危険です。家の周りが浸水し始めたら車による避難は危険です。ほかの安全確保方法を検討して下さい。
道路は冠水したり、アンダーパスに水が溜まったりしていたら、進入は止めてください。車は水に弱いですし、冠水した道路では脇にある側溝や水路との境がわかりません。脱輪・転落の恐れもあります。
緊急脱出用ハンマーを

殆どの車は、水深が深い場所を走るようには作られていません。冠水した場所を走ると動かなくなる可能性があります。動かなくなったら脱出が必要です。水圧でドアが開かないこともあります。
緊急脱出用ハンマーを備えておきましょう。シートベルトを切ることができるカッターつきのものもあります。水没などで動かなくなった時は慌てず、まずシートベルトを外します。窓ガラスが水面より高い位置にある状態なら、窓を開けて屋根に上るようにして脱出します。
しかしパワーウインドウは電気系統のトラブルなどで開かなくなる場合がありますし、ドアも水圧で開かなくなることがあります。その場合、緊急脱出用ハンマーで窓ガラスを割って脱出します。
言うまでもなく早めに避難を

とにかく「早めの避難」です。これが最も効果的な対策です。早めに避難しても「大災害にならなかった」=避難が空振りでも、「はずれて良かったね」です。
避難を決めるための情報は…
1:気象庁と国土交通省の合同会見
気象庁と国土交通省は、災害が想定され危険な状態になる前に合同で記者会見を行い、警戒や早期避難を呼びかけます。この会見の情報で、避難のタイミングを見極めます。
2:警戒レベル3 高齢者等避難(大雨洪水警報 氾濫警戒情報)
避難に時間がかかる高齢の方や障害のある方、避難を支援する方などは危険な場所から安全な場所へ避難してください。土砂災害の危険性がある区域や急激な水位上昇の恐れがある川などの近くに住んでいる人も、この段階での避難が望まれます。それ以外の方も行動を見合わせたり、いつでも避難できるよう準備をしたり、危険を感じたら自主的に避難してください。
3:警戒レベル4 避難指示(土砂災害警戒情報 氾濫危険情報)
警戒レベル4で全員避難です。すみやかに危険な場所を離れ、安全が確保できる場所に移動してください。
「警戒レベル5 緊急安全確保」「特別警報」は、既に災害が発生していたり災害が発生直前だったり、またどこかで既に発生していてもおかしくない状況です。かなり危険な段階です。この状況で離れた場所への移動・避難は危険です。予定していた避難場所への避難が危険な場合は、自宅の上の階や、崖から離れた部屋に移動するなど、その場でできる身の安全を確保するための行動をとります。
事前の備え、そして早めの避難。このコラムで何度も書いていますが、これが最善の対策です。
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被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。
■五十嵐 信裕
東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。