
愛犬・愛猫の防災対策「していない」が8割 大切な“家族”どう守る?避難先の確保は? 専門家に聞く備え

地震や台風などの自然災害が起きたとき、愛犬・愛猫などペットを飼っている方はどのように行動したらいいか理解していますか?災害時に何を準備し、どう行動すればペットを守れるのか、専門家に話を聞きました。

災害はいつ、どこで起きるかわかりません。
備えることは私たち自身だけでなく、大切な家族であるペットにとっても重要です。
地震や台風、洪水、火事などの自然災害は、私たちに予想外の事態をもたらします。
そのため、ペットの安全を確保するための適切な防災対策を、事前に準備しておくことが必要不可欠です。
では実際にペットを飼っている人の中で、防災について対策している人はどれくらいいるのでしょうか。
ペット飼育者の防災対策は、あまり進んでいない

犬や猫などのペット保険を取り扱っているアイペット損保が、犬猫飼育者の1,000人を対象に「ペットのための防災対策」に関するアンケート調査を実施したところ、災害を想定してペットに関する防災対策を行っているかについて、「全くしていない」が39.8%、「あまりしていない」の39.9%と合わせると約80%が防災対策を進められていないという結果でした。
調査から、多くのペット飼育者が防災対策の具体的な準備ができていないことが分かります。では、どのように準備を進めれば良いのでしょうか。
最寄りの指定避難所では、ペットを受け入れてもらえない可能性も…

環境省がまとめた「人とペットの災害対策ガイドライン」によると、まずは飼い主自身の安全を確保した上で、避難方法を検討することを基本としています。
避難には、主に自宅で過ごす“在宅避難”、またはペットと共に避難所などに避難する“同行避難”という方法があります。地域によって推奨される避難方法が異なる場合があるため、住んでいる自治体の防災計画や避難方法を確認しておくことが大切です。
さらに、「最寄りの指定避難所のペット受け入れ体制について知っていますか?」の調査では、全体の80%以上が「知らない」という結果となっています。
「誰もが命を守る行動ができる社会に」

避難について、動物避難所が当たり前にある社会を目指している団体があります。岐阜市にある「NPO法人 全国動物避難所協会」です。
代表の奥田順之理事長は「ペットを飼っている人も飼っていない人も、誰もが命を守る行動ができる社会に」と、“うちトコ動物避難所マップ”を作成しました。
「災害時にペットとの同行避難を希望する飼い主は非常に多いものの、既存の指定避難所ではペットの受け入れ体制が必ずしも整っていません。ペットを連れた避難をためらい、適切な避難行動が取れないケースがあります。適切な避難行動を促すためには、飼い主自身とペットの避難の『選択肢』を増やす必要があります。また、飼い主も飼い主以外も安心して避難できる社会を目指しています」(NPO法人 全国動物避難所協会 奥田順之 理事長)
うちトコ動物避難所マップとは、家(うち)からトコトコ歩いて行ける近くの場所に、動物避難所が当たりにある社会を目指し、全国の事業者と共に動物避難所をマッピングすることで、災害時に機能する動物避難所を紹介するプラットフォームのこと。
公式サイトから「動物の種類・住んでいる地域・避難所の形態」を入力することで、近くの動物避難所を検索することができます。
民間動物避難所は有料の場所も

中にはペットホテルや動物病院、ペット同伴可の宿泊施設など、民間で避難所として設定している所もあり、有料の場合もあるといいます。
「民間の動物避難所については、運営事業者自身が自主的に避難所を設置開設します。災害の規模によっては、運営事業者自身も被災をしている場合があります。経済的に持続可能な活動となるよう、利用料については無料を含め、適宜設定を各避難所にお願いしています。また、当協会の動物避難基金による支援も行っています」(奥田理事長)
現時点で「うちトコ動物避難所マップ」に登録されているのは全国で76件です。そのうち東海3県では、8件の団体が動物避難所として登録されています。
災害時ペットと飼い主が取るべき行動は?

いざ災害が発生したら、飼い主とペットはどのように行動すればよいのでしょうか。
「災害が起きた場合、飼い主は原則としてペットと一緒に避難(同行避難)しましょう。避難=指定避難所への避難と考えず、在宅避難や親類知人宅への分散避難も選択肢です。避難の際は、 飼い主とペットの安全を確保することが第一です。何より災害が起きる前に、災害の種類や、在宅中、外出中のシチュエーションごとにアクションプランを家族で話をして、どういう行動をとるのかを想定しておくことが大切です」(奥田理事長)
平時から防災について周りと話し合い、ペットにとってストレスの少ない「避難先」を確保することが、災害時に命を守るために必要なことの一つだと奥田理事長は言います。
「避難先」が確保できたら、非常用持ち出し袋(人用・ペット用)を準備し、クレートに入る練習をするなど、ペットと一緒に避難先まで移動する練習をすることが大切です。
ペットが安心して避難できる環境を

全国動物避難所協会は、「うちトコ動物避難所マップ」のWEBサイト運営以外に、飼い主の防災への心構えを記述した“ペット防災カレンダー”を毎年発行するなど、啓発活動にも力を入れています。
奥田理事長は今後、全国の動物避難所のネットワーク化のため、顔の見える共助の仕組み作りを強化していきたいとしています。
(メ~テレ 飯田莉穂)