「社長になりたい」元ゴールドマン・松井雅章さんが助言 AI時代の「1人起業」という選択肢

名古屋証券取引所とテレビ愛知が共同で運営するYouTubeチャンネル「あしたのマネー」。
今回は、元ゴールドマン・サックス証券で、現在は「金融経済アカデミー」の共同代表を務める実業家・松井雅章さんを迎え、「資本主義とは何か」という少し大きなテーマから、私たち一人ひとりのお金の使い方、投資、そしてAI時代の働き方まで話を聞きました。
番組では、SKE48の松本慈子さんが「将来の夢は社長」と告白。そんな松本さんに松井さんが提案したのは、AIを活用した「1人起業」という新しい選択肢でした。

「資本主義は人類を前に進める道具」

松井雅章さん

「資本主義の本質って何だと思いますか?」
岡田アナの問いかけに、松井さんは「とても根が深くて難しいテーマ」と前置きした上で、世界的な富豪であるイーロン・マスク氏を例に挙げました。
資本主義について語られるとき、しばしば問題になるのが「格差」です。大きな富を持つ人から税金を取り、より多くの人に分配した方がよいのではないか――。そんな議論もあります。
一方で松井さんは、社会に新しい価値を生み出した人に利益が集まり、その利益がさらに次の挑戦へ投じられることも、資本主義の重要な側面だと話します。
例に挙げたのが、マスク氏が率いる宇宙開発企業「SpaceX」です。
ロケットの再利用など、かつては難しいと考えられていた技術の実用化に挑み、失敗を繰り返しながら事業を成長させてきました。

松井さんは、社会に価値を提供したことへの「報酬」として得たお金を、さらに新しい事業や技術に投じる。その循環が結果として社会を前に進めることにつながると説明します。
「ベストかどうかは分からないけれど、資本主義は人類を前に進める道具として、よく考えられた社会システムなんじゃないかなと思います」

格差などの問題があるからといって、すぐに「資本主義そのものが悪い」と結論づけるのではなく、社会を動かす仕組みとして考えてみることが大切だと話しました。

株や国債を買えば、私たちも「資本家」

「資本家」の定義とは

では、普通に働きながら暮らす私たちは、資本主義とどのように関わっているのでしょうか。
「資本家」と聞くと、大企業や工場を所有する大富豪を想像する人もいるかもしれません。
しかし松井さんは、そんな特別な存在だけが資本家なのではないと話します。
例えば、貯めたお金で国債を購入することは、国にお金を貸すことです。株式を購入すれば、その企業の事業に自分のお金を投じ、企業が抱えるリスクの一部を引き受けることになります。

「規模は違っても、一人ひとりがそのお金をどこに資産配分するか。それでお金が回るようになれば、立派な資本家の第一歩だと思います」
銀行口座にあるお金をどう使うのか。どの企業や事業にお金を託すのか。
投資とは単に「値上がりして儲かるものを探すこと」だけではなく、社会のどこに自分のお金を振り向けるのかを選ぶ行為でもあると説明しました。

SKE48松本慈子「将来の夢が社長なので」

「将来は社長になりたい」と松本慈子さん

話はここから、松本慈子さんの将来へ。
岡田アナから「社長になりたいもんね?」と振られた松本さんは、
「将来の夢が社長なので」と即答しました。
松井さんが「どうして社長になりたいんですか?」と尋ねると、返ってきた理由は実にシンプル。
「かっこいいから!」
名刺を渡すときに「社長です」と言ってみたい――。そんな憧れがあるといいます。

松本さんは中学2年生でアイドルの世界に飛び込み、活動は12年目を迎えました。当時も「アイドルがかわいい。自分もなりたい」という憧れから、一歩を踏み出したそうです。
一方で、長く活動を続ける中で、その先の人生について考えるようになりました。
「長くアイドルはできない。自分の中でも何歳までできるか分からないし、新しい子も入ってくる。現実的に考えたときに、次の道って何だろうとなって」
「あしたのマネー」でお金について学ぶ中で、次にやってみたいこととして浮かんできたのが「社長」でした。
ただ、アイドルになりたいと思ったときとは違い、何から始めればよいのか分からないといいます。

「まず会社を作ってみるのもいいんじゃないですか?」

AIの急速な進化によりソロアントレプレナーが増えている

そんな松本さんに対する松井さんの答えは、意外なほどシンプルでした。
「そしたら、会社を作ってみるのもいいんじゃないですか? まずは社長に」
その背景にあるのが、AIの急速な進化です。

近年は「ソロアントレプレナー」「ソロプレナー」などと呼ばれる、従業員を大勢抱えず、1人を中心に事業を運営するスタイルが広がりつつあると松井さんはいいます。
文章や資料の作成、調査、分析など、これまで人に頼んでいた仕事の一部をAIに任せられるようになったことで、1人でもできる仕事の範囲が大きく広がっています。

松井さんは冗談を交えながら、
「AIって24時間働いてくれて、夜中にディープリサーチさせても淡々とやってくれる」
と話します。
もちろん、会社を作ればそれだけで事業が成功するわけではありません。
松井さんが重視するのは、実際に一歩を踏み出すことで「自分が本当にやりたいこと」の解像度を上げることです。

「なぜ社長になりたいのか」を考える

思いが形になれば解像度があがる

松井さんは松本さんに、もう一度問いかけました。
「なぜ社長がかっこいいと思うのか」
松本さんが挙げたのは、バリバリと仕事をする女性への憧れ。そして「誰かに憧れられる存在になりたい」という気持ちでした。
松井さんは、その思いは現在のアイドルという仕事にも通じているのではないかと指摘します。
単に「社長」という肩書が欲しいのではなく、自分自身で新しいプロジェクトを動かし、その責任者として「ドライバーズシート」に座りたいのではないか。
そう考えれば、次にするべきことも少しずつ見えてきます。

「思いが形になって解像度が上がると、行動につながっていく。そうすると、いつの間にか前に進んでいますよね」
やってみた結果、「思っていた社長と違った」と感じる可能性もあります。
しかし、それも失敗ではありません。
実際に行動したからこそ、自分が求めていたものとの違いに気づくことができ、次の進路が見えてくるといいます。
「どうやったら社長になれますか?というより、なぜ自分が社長になりたいと思ったのか。その解像度を上げたら、自ずと道が開けるんじゃないかと思います」
松本さんは「また相談させてください」と笑顔で答えていました。

元ゴールドマン松井雅章氏が薦める「お金と経済の4冊」

松井さんおすすめの書籍を紹介

番組後半では、松井さんが自身の考え方や資産形成にも影響を与えた4冊を紹介しました。

『お金のむこうに人がいる』田内学 著
元ゴールドマン・サックスのトレーダーで、松井さんの元同僚でもある田内学さんの著書です。
松井さんが特に評価するのは、「お金そのもの」に価値があるのではなく、その先にいる人や社会を見るという視点。
お金を通じて、人がどう動き、社会がどう成り立っているのかを考え直すことができる一冊で、「大人が読んでも、中高生が読んでも忘れられない経験になる」と薦めました。

『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』唐鎌大輔 著
なぜ円安が続いているのかを、お金の流れから読み解く一冊です。
日本はエネルギーや食料など、多くのものを海外から輸入しています。海外からモノやサービスを買い続ける一方で、世界が欲しがるものを日本から十分に提供できなければ、お金は海外へ流れていきます。
ニュースで日々目にする「円安」を、一時的な為替の上下だけでなく、日本経済の構造から考えるための本として紹介しました。

『バフェットとソロス 勝利の投資学』マーク・ティアー 著
長期投資で知られるウォーレン・バフェット氏と、世界的な「投機家」ジョージ・ソロス氏。
一見まったく異なる投資スタイルを持つ2人ですが、その考え方や行動には共通点があります。
松井さん自身も時折読み返し、「原点に戻れる」一冊だといいます。

『天才たちの誤算[ドキュメント]LTCM破綻』ロジャー・ローウェンスタイン 著
ノーベル経済学賞受賞者らも参加し、「天才集団」と呼ばれた巨大ヘッジファンドLTCMが、なぜ破綻へ追い込まれたのかを描いたノンフィクションです。
松井さんは、ウォール街の歴史や金融市場の人間関係を理解する上でも興味深い一冊だと紹介。
自身が金融の現場にいた際にも、この本で読んだ過去の出来事と目の前の出来事の「点と点」がつながることがあったと振り返りました。

お金を知ることは、社会の仕組みを知ること

お金を知ることは社会の仕組みをしること

株を買えば、私たちも小さな「資本家」になる。
社会に価値を提供した人にお金が集まり、そのお金がまた新しい挑戦へ向かう。
AIが進化すれば、会社や働き方の姿そのものも変わっていく。
今回の「あしたのマネー」で語られたのは、単なる投資テクニックではありませんでした。
自分が持つお金をどこに使うのか。どんな仕事を選ぶのか。そして、自分はこれから何をしたいのか。
一見別々に見えるテーマも、「自分の人生をどう選ぶか」というところでつながっています。
「社長になりたい」という松本さんの素朴な一言から始まった話は、AI時代を生きる私たち自身の働き方にも通じるものになりました。

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