
町内会盛り上げに“花魁道中”イベント開催 加入率促進にカード提示で「飲食代が安くなる」サービスも

町内会主催の秋まつりシーズン真っ盛り。「わっしょい!わっしょい!!」と元気な掛け声とともに神輿を担ぐ子どもたちの姿に、顔がほころぶ。こうした昔と変わらぬ町内会の風景が残る地域もあれば、加入率の低下や役員の高齢化で存続が危ぶまれるところも。そんな中、独自の盛り上げ策を考える町内会もある。

町内会への加入率の減少は、名古屋市も同様。市の地域振興課によると、約20年前の2006年度の加入率は市内16区全体で84.6%だったが、2016年度には74.4%に、2024年度は66.0%に落ち込んでいる。(数字はすべて推計)
中でも、中心市街地の中区では加入率が著しく低く、直近の2024年度は44.2%にとどまっている。名古屋市の担当者はこうした背景について…。
「中区については、単身世帯、外国人、転出入の割合が高いことから、加入率が低い状態にあると考えている」(名古屋市地域振興課 山田紘輝 課長補佐)
町内会や自治会の加入はあくまで任意で、行政としては強制できないものの、チラシを作成して、区役所の窓口に掲示するなど加入促進に向けた取り組みを進めているという。
その理由は。
「町内会・自治会、地域コミュニティーを形成する意義は(促進する理由)一個人ではできない防災対策、防犯対策などができること、また地域との繋がりができ、孤立感が解消できたり、いざという時に助け合える関係が築けたりすることだと考えている」(名古屋市地域振興課 山田課長補佐)
「町内の誇り」を取り戻そうと祭開催

市内で町内会・自治会への加入率が最も落ち込んでいる中区で、独自の取り組みで「町内の誇り」を取り戻そうと活動しているのが「御園通町内会」。
歌舞伎や演劇の“聖地”「御園座」を含むエリアで、劇場周辺は、昔ながらの商店(兼住宅)と、新しい飲食店が共存している。
「御園通町内会」には、商店、飲食店など70ほどの建物があるうち、現在の加入数は60で、昔から大きな増減はないという。
町内会が、御園通商店街振興組合とともに計画を進めているのが、11月1日(土)に開催する「花魁百狐夜行(おいらんひゃっきやこう)」というイベント。
狐の面をかぶった花魁が町内をねり歩く「花魁道中」で、商店街を盛り上げ町内会の一体感を創出しようというのだ。
町内会長は、イベント開催の目的をこう説明する。
「エリアには商売をしている人が多く、店の入れかわりもよくある。そのたびに、加入を呼びかける活動もしている。新規出店するような若い世代にとって、毎月の町内会費が高いなどの理由で理解してもらえないこともあるので、年に1度のイベントを実施することで、会費の使いみちを知ってもらうことも大事だと思っている。結果的に商売が潤うことにもなると思う」(御園通町内会 勝野英一会長)
「名古屋は観光先がない」イベント楽しんで

町内会では、去年、一昨年と狐のお面を被った「お狐さんの盆踊り」を開催。周辺のホテルの外国人観光客なども巻き込んで、町内や商店街を盛り上げてきた。
旧御園座の屋上に「御園稲荷」を祭るほこらがあり、毎年商店街の人たちでお参りしてきたが、その風習もなくなってしまったそうだ。「狐」をテーマにするのは、商売繁盛の神様「狐」を敬う気持ちを忘れないように…との思いが込められているという。
共に主催する、商店街組合理事長の伊藤博章さん(62)。理事長を5年務めていて、なり手不足から町内会役員を兼任した時代もあったと言う。
今回、花魁道中を実施する狙いをこう話す。
「今年は『花魁』はとてもタイムリーで、大河ドラマ、鬼滅の刃、(御園座では)歌舞伎と言えば花魁で、他の場所でやるのと意味がちがう。花魁が狐の面をかぶっての行列は聞いたことがない。世界で注目を集めると、変わった事をやっているところが名古屋にあると思ってもらえる。名古屋は観光先がない、見るところがないと言われているけれど、こうしたイベントを体験することも楽しんでほしい」(御園通商店街振興組合 伊藤博章 理事長)
イベント開催は「一番の防犯」

町内で「顔の見える関係」を大切にしてきたという伊藤さん。回覧板をまわす際は、可能な限り直接顔を見て渡すなど、隣近所との繋がりを意識している。
さらに、地域の安全にも繋がると話す。
「交通規制の相談で警察の方と話しをすると、『イベントをやって連携することが、一番の防犯につながる』という事をよく耳にする。隣が何をやっているか知ることが大事で、顔の見える関係は安全や防災にも役立っていくと思う」(御園通商店街振興組合 伊藤理事長)
加入するとお得なサービス「Eまっちカード」事業

「加入のメリットがわからない」と敬遠されがちな町内会だが、新たなメリットの創出に向けた取り組みもある。名古屋市東区の町内会・自治会を応援する事業「Eまっちカード」だ。
町内会や自治会に加入する世帯が「Eまっちカード」を提示すると、協力店独自のお得な特典が受けられるというもの。協力店(2025年10月時点で141店舗)によって異なるが、カードを事前に提示することで、会計時に割引されたり、ドリンク1杯無料などのサービスが受けられたりする仕組みだ。
2023年3月から始まったこの取り組み。東区役所地域力推進課によると、カードの発行や協力店に掲示するポスター作成などに毎年予算があてられている。
担当者は、課題についてこう説明する。
「課題は『Eまっちカード』の認知不足。広報誌への掲載や祭などにブース出展しPRするなど、事業の周知と加入促進を効果的に実施できるよう進めていく」
(メ~テレ・加藤歩)