地域の特産品を生地に練り込んだ、ご当地バウムクーヘンが全国で人気になっています。わが町からもバウムクーヘンを売り出したい。そんな地域の思いを叶えてくれるかもしれない、老舗の職人の技を学んだ専用オーブンがあります。
職人の技をAIが継承、広がる「ご当地バウムクーヘン」の輪

滋賀県産「土山抹茶」を使ったバウムクーヘンや、鹿児島県産の爽やかな柑橘が香るバウムクーヘン。町おこしの新名物として、ご当地バウムクーヘンが全国で誕生しています。

ご当地バウムクーヘンブームを影で支えているのが1909年創業の老舗洋菓子メーカー「ユーハイム」。バウムクーヘンを日本に広めた立役者です。

専用オーブン「THEO(テオ)」から、香ばしくいい焼き色のついたバウムクーヘンが次々と焼き上がります。
バウムクーヘンAIロボット「THEO」は、1メートル四方のスペースに設置できるコンパクトなオーブンで、小さな店舗にも導入しやすいのが特徴です。

その断面は非常に美しく、均一な年輪が刻まれています。AIが焼いたとは思えない、まさにプロの技が再現されています。
THEOはAI(人工知能)を搭載。職人の焼き具合を各層ごとに画像センサーで解析し、その技術をAIに機械学習させて継承しました。
バウムクーヘンは、回転させながら生地を塗り、焼く工程を繰り返し、何層も重ねていきます。生地の厚さを均一に保ち、綺麗な年輪を作るには長い修行と経験が必要です。
THEOは搭載されたカメラで職人のように状態を見極め、最適な取り出しタイミングをAIが判断。ご当地食材を使っても、焼き色を分析してその生地に合った焼き加減に自動調整します。従来の自動オーブンはタイマー式で、生地の状態に応じた調整はできませんでした。
卵農家の挑戦を支えた「未経験でも焼ける」技術

宮崎県都城市にある「ユウヒテラス」。看板商品は、地元の卵や九州産の食材にこだわったご当地バウムクーヘンです。同店の厨房には、バウムクーヘン専用AIロボットTHEOが導入されています。

ユウヒテラス 冨田大輔店長:
「お菓子作りを全くやったことがなくて、シンプルに養鶏業をやっていただけです。バウムクーヘン作りは本当に全く未経験でした」
冨田さんは卵農家の4代目。1日に約1万個の卵を生産しますが、そのうち3%が売り物にならない規格外の卵になってしまいます。その活用策を考えていた時、THEOの存在を知りました。新鮮な卵の風味と素材を活かした味は、地元でも支持を集めています。
ユウヒテラス 冨田店長:
「バウムクーヘンは卵のクオリティがそのまま味のクオリティになる。そこに勝ち目があるかなと思いました」
ロイヤリティ制で広がる市場と職人との共存

ユーハイムは全国20箇所以上にTHEOを貸し出しています。2026年度中には70台の導入が目標です。THEOの本体貸し出し料金は無料のため、導入しやすいのが特徴です。
ユーハイムはバウムクーヘン1本を製造するごとに3,060円からのロイヤリティを受け取る仕組み。一方、貸し出し先の店舗の収入は1本あたり6,000円から1万円程度となります。

ユーハイム BX事業開発室 岩本遼主任:
「バウムクーヘンを扱ったことがないお客様に対して、生地の作り方や販売方法などのアドバイスも行っています」

ユーハイムは、地方の菓子店の商品開発やPR戦略をサポート。また、2016年から全国の人気バウムクーヘンが集まるイベントを主催するなど、市場の拡大に力を入れています。
日本経済新聞社 神戸支社 大沢友菜記者:
「レシピを作った職人に還元されるような仕組みを、ユーハイムは検討しているようです。職人が自分の技術を込めて物を作る、それをAIができるようになる。一緒に技術を高め合える間柄になれるのではないでしょうか」


