「2時間食べ飲み放題」のはずが… 執拗な客引きにぼったくり 歓楽街にある居酒屋の実態とは 名古屋・栄

名古屋の歓楽街で、ぼったくりや客引きなどの問題が増えています。記者の潜入取材で明らかになったその実態とは。
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多くの飲食店が建ち並ぶ名古屋の歓楽街・栄3丁目、通称「住吉」。
9月29日の夜、数人に取り囲まれていた一人の男。私服の警察官に逮捕されたのは、田丸詩音容疑者30歳。店長を務める居酒屋へ執拗に客引きをした、愛知県の迷惑防止条例違反の容疑です。
田丸容疑者の店は、不当な料金請求などのトラブルが相次いでいて、警察が以前からマークしていました。
席に着いたばかりなのに…飲み放題“残り54分”
店の名はその名も…「八百長」。摘発の3日前、記者3人で潜入取材を試みました。
(客引き)
「居酒屋ですか?任せていただきたいです。どういうお店がいいですか?」
(記者)
「食べ飲み放題があったらいいな」
(客引き)
「食べ飲み放題がこの辺で最安だと2500円。これが2500円のプランなんですけど」
(記者)
「なんていう店ですか?」
(客引き)
「八百長」
客引きの説明では、『2時間の食べ飲み放題で税抜き2500円』となっていましたが、店に入って席に着くと、さっそく説明との食い違いが…
(記者)
「飲み放題“残り54分”っておかしくない?」
残り時間2時間のはずが、注文するスマホ画面には“残り53分”という表示が。さらに…
席にいられるのが2時間で“注文は1時間だけ”
(記者)
「(料理が)全然こないですね」「全然来ない」
待つこと約20分…
(店員)
「お待たせしました。ラーメンになります」
ようやく一品目のラーメンが到着。この時点で残り時間は30分ほどに。頼んだ品を食べきらないと次が注文できない決まりで、3人で9品頼んだところでオーダーストップになりました。
店員に時間のことを尋ねると…
(記者)
「まだ入店して1時間なんですけど、4分ってラストオーダーまで残り4分?」
(店員)
「そうですね」
(記者)
「席はあと1時間あるってことですか?2時間って聞いていたんですけど…」
(店員)
「席はあと1時間です。ラストオーダーがあと4分」
(記者)
「ドリンクも食べ物も?」
(店員)
「はいそうです、お願いします」
席にいられるのが2時間で、“注文は1時間だけ”だと説明し、質問は受け付けず立ち去りました。
2時間の食べ飲み放題で税抜き2500円のはずが…
さらに会計の際にも…
(店員)「お会計が1万890円になります」
(記者)「『週末料金』って金土日だから?」
(店員)「そうです。」
(記者)「言ってましたっけ…」
客引きが言っていたとおり、税抜き1人2500円なら、3人で税込み8250円のはずが…1万890円。
説明にはなかった「週末料金」の名目で、1人800円が加算されていたのです。
他の客に聞くと…
(「八百長」を利用した人)
「『八百長』という名前だけあって、しっかり八百長されました」
捜査関係者によれば、「八百長」を巡っては、「客引きの説明と違う」「頼んでいない商品が会計に含まれている」といった料金トラブルの相談が警察に相次いでいたと言います。消費者トラブルに詳しい弁護士に聞くと。
『説明不足でした』と言い逃れることもある
(加藤光弁護士)
「2時間じゃなくて1時間になっているのは、契約の重要な要素が合致していないので、契約が成立していないという解釈もできる。錯誤で契約が無効ということも法律的には言える」
一方で説明なしに、週末料金を加算していたことについては、違法性を証明することが難しく、泣き寝入りがほとんどだと言います。
(加藤弁護士)
「『説明不足でした』と言い逃れることもある。法に引っかからないギリギリのラインを狙っているのかなと」
愛知県警には今年に入り、ぼったくりなど料金トラブルに関する相談が180件と、過去10年で最多になり、被害総額は1億2000万円にのぼっています。警察は取り締まりを強化するとともに、ぼったくり被害の多くは客引きがきっかけだとして、安易について行かないよう注意を呼びかけています。