
「こども誰でも通園制度」全国に先駆け本格導入の名古屋市 保護者から好評も保育園側は2つの課題指摘

保護者の事情に関わらず、保育園などに小さな子どもを預けられる、「こども誰でも通園制度」。全国での実施に先駆けて導入した名古屋市。早くも見えてきた課題とは?

名古屋市瑞穂区の「たんぽぽ保育園」。仕事や入院、家族の介護など、急な保護者事情に対応できる「24時間緊急一時保育」を行う全国でも数少ない保育園で、乳幼児、約100人が通っています。
新たな制度への対応を、先月から始めています。それが、来年4月から全国で実施が予定されている「こども誰でも通園制度」。
仕事の有無など、保護者の事情に関わらず、生後6カ月から3歳未満の子どもを月に最大10時間、保育園や幼稚園などに預けることができます。
名古屋市では、先月から全国に先駆けて本格導入しています。
この日、3回目の利用となる2歳の女の子がやってきました。
利用料は子ども1人につき、1時間あたり300円。たんぽぽ保育園では、1日最大2時間利用できるようになっています。
子どもを預けた、30代の母親は…。
「この近くお店とか多いので、美容院に行ったりだとか。あと近くの歯医者さんにいったりだとか、子どもがいるといけないところにやっぱり時間を使って、またリフレッシュもしてという形で使っている」(30代母親)
県外から引っ越しするときに通っていた保育園をやめ、現在は名古屋市内で自宅保育中。
子どもにとっても、新たな環境で過ごすことはプラスになると話します。
「(娘も)保育園になれてきてすごく来るのも楽しみにしていて、子どもの成長にもいいかなと感じています。自分もリフレッシュしていいのかな?という罪悪感も実際あったんですが、預けてみるとやっぱり保育士さんの皆さんもすごく安全に見てくださるし、自分もすごくやっぱりフレッシュの時間にもなるのでとても助かっている」(30代母親)
保護者には好評も、保育園側には2つの課題

保護者にとってはおおむね好評のこの制度。ただ、受け入れる園側に話を聞いてみると…。
「(保護者の)ニーズに応えられるようになるにはまだまだ課題が多いかな」(たんぽぽ保育園 加藤雅美園長)
加藤園長が指摘する「課題」は大きく2つです。
まず1つは「費用面」。
「国からの補助金もあるんですけど、その保育以外の事務作業だったり準備だったりそういうところにも相当時間や保育者が動くところがたくさんあるが、補助金がついていないところはやっぱり課題に感じている」(たんぽぽ保育園 加藤園長)
保育園では、保護者から支払われる利用料のほか、子どもの年齢・時間に応じて「補助金」を受け取ることができます。
しかし、補助金の対象は「保育時間」のみ。事前の保護者との面談や、保育のための準備や記録など、保育時間以外に職員がやることはたくさんありますが、この”仕事分”に対する財政的な措置がないのが現状です。
「保育をする上で必要なものをそろえたりとか、記録とかも丁寧にして次の保育がスムーズにできるようにというところで、まったく保育時間とは別のところでやっているので、そこもきちんと目を向けてもらいたいなと思う」(たんぽぽ保育園 加藤園長)
また今回、新たな子どもを受け入れるため、「食堂」に使っている部屋を保育部屋として使用するため、棚や仕切りをつける工事をしましたが、その費用は補助金だけでは足りなかったといいます。
そして、2点目は「導入のハードル」。
先月からの制度の導入にあたり、名古屋市は市内600の保育園や幼稚園、認定こども園に呼びかけましたが、実施に手を挙げたのは23カ所のみでした。
中区や天白区、熱田区など6つの区では現状、制度を利用できる施設が1つもない状況です。
瑞穂区内に1カ所 利用が集中する傾向に

「たんぽぽ保育園」のある瑞穂区。制度を導入しているのはここ1カ所だけで、利用予約が集中する傾向にあるといいます。
「もっとやってくれる園を増やしてほしいけど、うちはたまたまこういうスペースがあるからなんとかできるし、いつ誰がきてもいいよというオープンな保育ができているんだけど、そういうことがやれていないと、突然(新しい)子どもが来て、どうやって保育するの?というふうに保育園側としてはそういう不安が大きんじゃないかと思う」(たんぼぼ保育園の従業員)
利用に慣れていない子どもを一時的に預かる場合、十分な対応ができるのか。園側の負担に対するハードルが背景にあるとみられます。
すでに一部の自治体で先行的に始まっているこの制度。来年4月からは、全国で導入されますが、多くの園で実施するには、国からのさらなる支援が求められています。
「全国で始まる前にやっぱり今、各地で行っているこの制度を、実際のところを知っていただくということが必要だと思っている」(たんぽぽ保育園 加藤園長)





