
突然の車イス生活から見つけた新たな夢 “消防士”から“アスリート”へ転身し…パラリンピックを目指す! 驚異の腕力と不屈の精神で切り開く第二の人生【パラノルディックスキー・佐藤那奈選手】

愛知県大口町にある消防署で8年間働いていた岐阜県可児市出身の佐藤那奈さん(29)。トレードマークの笑顔で、周りのみんなから愛されていましたが、今年3月末で消防の仕事を辞める決断をしました。その理由は、パラノルディックスキーに本格的に打ち込み、パラリンピックを目指すため。消防署勤務からアスリートへ転身した那奈さんの挑戦に密着しました。
突然の車イス生活…「生きていくことに必死だった」

パラノルディックスキーとは、上肢や下肢・視覚に障害がある選手が雪上を滑走し、タイムを競うスポーツ。上半身のパワーと持久力が求められる過酷な競技です。
そんな競技に挑む那奈さんを支えるのが、鍛え抜かれた腕。腕ずもうでは、兄・慎一郎さん(30)と弟・奨之さん(25)も撃沈するほど圧巻の腕力です!

1996年5月15日、三人きょうだいの長女として誕生した那奈さん。きょうだいの中でただ一人の女の子ですが、幼い頃から家族の中で一番元気で、母・千津さんも「昔から動くことが大好きでじっとしていられない。このまま大きくなった感じで、大人になってもずっと動きづめ」と話すほど。
しかし、人生を大きく変える出来事が襲います。
23歳の時、趣味のサーフィンをしている途中で突然、下半身が動かなくなってしまったのです。背中を反らす動きにより、ごくまれに起きる脊髄損傷の疑いがあると診断されました。

この日を境に那奈さんの生活は一変しました。生きていくことや日々の生活を整えることに必死の毎日。そんなとき、支えになったのは身近な人たちの存在でした。
佐藤那奈さん(29):
「障害者手帳を取得します、車イスを作りますってなった時に実感が湧いて、落ち込むときもあるんですけど、周りがわたし以上に悲しんでくれていたり、励ましてくれる友達もいて、家族や友達のおかげで前向きになれた気がする」
そして、2年前に出会ったのが、下半身が動かなくても楽しめるスキー。すぐに夢中になり、周囲も驚く早さで上達しました。今の目標はパラリンピック出場です。
パラリンピックへの挑戦 武器は笑顔と圧倒的なパワー

バリアフリー対応の家で1人暮らしをしている那奈さん。練習場所への移動も、誰の助けも借りず自分1人でこなします。そんな生活も楽しんでいるようで、元消防士らしく「(車に乗るまでの)最高新記録は1分30秒です」と笑顔で話してくれました。

この日、那奈さんが訪れたのは河川敷。スキーシーズンが始まる前に競技に必要な筋力を徹底的に鍛え上げます。
パラノルディックスキーでは、“シットスキー”というスキー板に座面を付けた専用の滑走用具を使用しますが、雪がない河川敷などではローラーに換えてトレーニングを行います。

元々、スポーツマンで運動能力が高かった那奈さん。本格的な練習を積んだ今、そのパワーはコーチも驚くほど成長しました。
コーチ 丹羽咲乃さん:
「パワーがないとスピードが0の状態から加速していくって結構大変。(那奈さんは)パワーがある分そこが速いので、のっていくのが早い。日々のコツコツの努力がタイムに出ていると思います。始めて2年でこの成長スピードは速い。(4~8年後にはパラリンピックも)狙えます」

パラノルディックスキーで真剣に世界の舞台を目指す那奈さんに家族は…
母・千津さん:
「めちゃくちゃ大変できつそうなので、続けられるのかなって思うんですけど、楽しそうにやっているのが救い」
弟・奨之さん(25):
「熱中できるものが見つかってうれしい。那奈ちゃんならすごいところまで結果を出してくれるんじゃないかなと、ひそかに期待もしつつ、楽しくやってくれればいいかなと思っています」

消防署勤務からアスリートへ転身した那奈さん。周囲への感謝の気持ちを忘れず、自分の夢に向かって突き進みます。
佐藤那奈さん(29):
「一人でこの2年間続けられたわけではなくて、今日も一緒に練習したコーチや連盟の方だったり、応援してくれる家族や友達のためにも、どこまでできるかが分からないんですけど、パラリンピックに出場して恩返しができれば。そこが今、一番気持ちが強いです。目指しているところです」
驚異的な腕力と不屈の精神でパラリンピックを目指す那奈さんの姿は、多くの人に勇気と希望を与える存在となっているようです。