高齢化や労働時間の規制強化で、物流業界のドライバー不足は深刻です。そんな中、福岡県で自動車学校を運営する会社が、国外での人手確保に乗り出しました。狙いを定めたのはカンボジアです。
在留資格「特定技能」で働くカンボジア人ドライバー

熊本の運送会社のトラック。運転しているのは、カンボジア人のキゴウンさんです。
スン・キゴウンさん
「運転の方が好きだから、運転、嬉しいですね」

日本車が好きだというキゴウンさん。在留資格「特定技能」で、2025年10月からこの会社で働いています。日本のトラック運転免許の取得や、来日手続きをサポートしたのは、福岡県で自動車学校を経営するミナミホールディングスです。カンボジアにあるミナミの現地法人が運営する自動車学校。2025年頃、キゴウンさんは入校。現地で240時間、運転や日本の交通ルールを学びました。その現地法人を通じて熊本の運送会社の内定をもらい、2025年7月に来日しました。

キゴウンさんは、カンボジアの免許を日本の免許に切り替えた後、南福岡自動車学校で2カ月の教習を受け、9月に大型免許を取得しました。指導員の指示に真剣に耳を傾けています。
背景にある自動車学校の「外国人ドライバー支援ビジネス」

カンボジア人が日本でトラックドライバーとして働くには、来日前までに就職先を決めておく必要があります。来日後は、6カ月以内に普通免許を取得し、在留資格「特定技能」に切り替えます。

その後、運転するトラックの大きさに応じて、中型や大型などの免許を取得します。ミナミのグループ会社「外国人ドライバー支援機構」が、一連の手続きをすべて引き受けるビジネスを2024年5月に始めました。ミナミがカンボジアに自動車学校を作ったのは8年前。日本のドライバー不足を見据えてのものでした。

ミナミホールディングス 江上喜朗社長:
「法律的に難しい国もたくさんある中で、カンボジアは外資規制がない。ここでこそ我々の培った力が活かせる、日本流の安全教育をしっかりと現地の教習所でも行って、安全なドライバーを日本に輩出させていこうと考えた」

カンボジアの信号や道路標識は日本と似ています。日本がカンボジアのインフラ整備に関わってきた歴史的背景があるためです。日本の法律・制度が整い、ミナミが初めてカンボジア人を日本に受け入れたのは、2025年7月。それ以来、カンボジア人6人が日本で就労しました。今後5年間で4,000人の斡旋を目指しています。
安全教育の充実と就労後のサポート体制がカギ

運転手を数多く輩出するために投資も。カンボジアに2025年12月、日本式の教習コースを作りました。来日前に日本式の教習の一部をしておくことで、来日後の合格率をアップさせる狙いです。支援機構のサポートは就労後も続きます。

支援機構の担当者:
「運転は慣れてきた?」
スン・キゴウンさん:
「慣れてきました。運転の方は大丈夫」

特定技能制度では、生活支援や行政手続きの補助などが義務づけられています。支援機構はその業務を担うことで、受け入れ企業から1人あたり月3万円の手数料を受け取り、継続収入とする仕組みです。ミナミホールディングスはこれを、自動車教習需要の減少を補う、新たな収益の柱に育てようとしています。

日本経済新聞 西部支社 内藤怜央記者:
「日本の賃金だけで人を呼べる時代ではありません。それでもカンボジアの若者が日本を選ぶ背景には、長年の協力の積み重ねもあります。日本で安全に走れる人材教育を民間企業が進めている点が注目したいポイントです」
物流業界の人手不足のなか、外国人ドライバーに期待が集まってはいるのですが、安全教育や日本の交通ルールへの理解を深めてもらうことや生活面の支援など、受け入れ側の体制づくりは、欠かせません。今後、外国人ドライバーが物流の担い手として定着していくのか注目です。


