かすれた白線をAIで自動検知 人の目だけに頼らない 効率化に向け実証実験 名古屋

車を運転すれば必ず目にする路面標示ですが、1年も経てば消えかけて危険な状態に。これまでは人の目で「チェック」していましたが、名古屋市では、それだけに頼らない取り組みを進めています。活用するのは、「AI」です。
名古屋市内の道路を走る車。
フロントガラスには、スマートフォンが取り付けられています。
ドライブレコーダーのようにも見えますが、その撮影目的は――
「区画線が薄いところを自動で検知して、今後の区画線の引き直し、調査や解析に役立てる取り組みをしている」(パトロールの担当者)
人々の移動や物流を支える道路網が広がる名古屋市。
市が管理する道路は、約6600kmにも及びます。
職員が目を光らせるのは、その劣化状況です。
例えばこうした「白線」がかすれてしまうと、事故を招く危険もあることから、道路やその周辺の状況に異変がないか毎日のようにパトロールしているといいますが――
「管理している対象自体が、道路の路面そのもののみではなく、区画線はもちろん、ガードレールや街路樹など、道路に付属するものすべてを私たちが管理をしている。人間の目で見ていくことによって、どうしてもムラが出てきてしまう」(名古屋市 道路維持課 可児誠課長補佐)
かすれ度合いを4段階で自動で検知

これまで「人の目」に頼っていた道路のパトロール。
感覚に左右される部分もあるため、点検に携わる職員全員が同じ評価基準で判断することには限界があり、市は「点検の正確性をいかに上げるか」が課題だと考えていました。
そこで、名古屋市が導入を検討しているのが、「AI」です。
東京大学発のベンチャー企業「スマートシティ技術研究所」などとともに、去年から始めた実証実験が、この「新しいパトロール」です。
まずは、計測アプリが搭載されたスマートフォンをパトロール車に取り付け、走りながら道路を撮影。
その動画をパソコンに取り込むと――
「黄色い枠AIで検知した結果。『かすれていますよ』という意味。AIで全部10mごとに画像に対して評価をしている」(スマートシティ技術研究所 趙博宇社長)
AIによるチェックの対象は車線境界線などの区画線や停止線のほか、横断歩道など15種類の路面上の標示で、かすれ度合いを4段階で自動で検知します。
パトロール車の走ったルートと組み合わせてかすれ度合いを地図に表示することで、どこを優先的に修繕すればいいのか、一目瞭然です。
「目視で判定できるものは、基本的には全部AIで置き換えができる時代になった。赤(一番かすれている)が集中しているところは、重点的に見ることができる」(趙社長)
すべてのパトロールにAI導入を検討

広くて車線が多い道路が多数ある、名古屋の状況に合わせてシステムを改良。
一度に最大3車線まで、白線のかすれを検知できるようになりました。
まだ一部のエリアでしか行われていない実証実験の段階ですが、AIの活用で、市職員の負担軽減や区画線の品質を均一に保つことに期待が寄せられています。
このAI技術は、路面標示の「かすれ」を検知するだけではありません。
去年1月に発生した能登半島地震で、道路が大きく損傷した石川県の「のと里山海道」でも活用されました。
道路のひび割れなどを撮影し、どの箇所を修繕するべきか判断するのに役立ったといいます。
「道路の修繕の費用も限られているので、限られている予算の中で、どちらを優先的になおすべきか。意思決定に大変役に立ったと聞いている」(趙社長)
名古屋市は今後、すべてのパトロールにAIを導入することも検討し、白線の管理に努めたいとしています。





