
都市の死角「空き家」の現実 380万戸超の衝撃 なぜ増え続けるのか? 名古屋の強制撤去から見えた街の“悩みのタネ”

日本全国に380万戸以上。いまや他人事ではない空き家の実態です。人口減少を背景に、都市部でも広がり続ける空き家。その内部を取材しました。
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崩壊寸前の空き家に、重機のアームが突き刺さります。ことし2月、名古屋で行われた行政による「空き家」の強制撤去。
その様子を心配そうに見守る近隣住民の姿も。
(近隣住民)「(トタンが)が飛んでくるんですよ。剥がれて。いつ壊れるかという心配はありました」
危険な空き家があったのは、JR名古屋駅から西へ3キロの住宅街の一角。築65年で屋根には穴が開き、建物を支える柱は腐っていました。倒壊や環境の悪化が懸念され、市は所有者の男性に撤去を求めてきましたが応じてもらえず。
最後の手段、「行政代執行」による強制撤去に踏み切りました。
この空き家の危険性を以前から訴えてきた町内会長は。
地域で悩みのタネ… 危険な“空き家”
(町内会長 秋田敏行さん)
Q:空き家は地域でどんな存在?
「悩みのタネの一つでした。子どもが中に入ってケガをすると困ると話題になっていた」
取り壊しにかかった費用は200万円。行政代執行は、費用を一時的に立て替えるだけで、後から所有者に請求しますが、名古屋市内には、こうした危険な空き家がほかにも30軒あります。
年々、増え続ける空き家。放置される理由も様々です。
関西地方にある築54年の空き家の中を特別に見せてもらいました。
(不動産会社「めりーほーむ」 川村隼太代表)
「床は見ての通り(沈んでいる)。気を付けて来てください」
一家5人が暮らしていた住宅は放置されて10年以上。
最近になってリノベーションを得意とする地元の不動産会社「めりーほーむ」が買い取りましたが、壁には黒カビが広がり、天井にも雨漏りの跡が。
なぜ今まで放置してしまったのか?
(川村隼太代表)「何十年選手ですね。この瓶の具合とか…、オリーブオイル(の賞味期限)は、2015年5月…。このカバンは何十年モノ。青サビを見てもらえば…。あっ、セリーヌですよ、高級ブランドバッグ…」
あちこちに生活の名残も。さらに…
(川村隼太代表)「これは…!骨ですね。小動物か何かの一部ですね」
ここで暮らしていた70代の女性は。
(この家で暮らしていた 70代女性)
Q:10年ぶりの自宅はどう?
「きれいだったら住みたいぐらい。思い出深い」
なぜ10年も放置していたのかを尋ねると…
(この家で暮らしていた 70代女性)「新しい家に引っ越すために、やることに精いっぱいで今になった。10年前にやった方が良かったかもしれないけど、アドバイスしてくれる人がいれば良かった」
今後も増える“空き家”…深刻な問題に
新しい生活に追われる中、古い家の整理に手が回らず。放置したまま10年が経ったといいます。高齢になり、ようやく売却を決意しましたが、不動産会社によると、この10年で不動産価値は半分以下に落ち込んでいると話します。
(川村隼太代表)「もう少し早く手を打っていればと思う。相談する相手がいればこの状態まで放置することはなかった」
総務省の最新の調査では、放置された空き家の数はおととし時点で385万戸。この20年で160万戸も増加し、今後も増える見通しです。
名古屋市が強制撤去した中村区の空き家。更地となって4か月が経ち、雑草が生えないようシートで覆われていました。市が立て替えた撤去費用の回収はまだ進んでいません。町内会長は別の心配を口にします。
(町内会長 秋田敏行さん)「隣の家も完全に空き家ではないが、人が住んでいない。同じ町内にも空き家になった所は何軒かある。そういった所が今後どうなるか、地域の管理をする観点でも難しい問題」
都市部にも広がる深刻な空き家問題。静かに、しかし確実に進行している社会の課題です。