避難所はTKB「トイレ・キッチン・ベッド」48　災害関連死を0に!【暮らしの防災】

大災害から命を守れたのに、その後の避難生活の中で亡くなってしまう「災害関連死」。1995年阪神・淡路大震災の時からクローズアップされ、日本では未だに解決されていない問題です。2024年能登半島地震では592人が亡くなりこのうち関連死は364人で、直接死よりはるかに多くなっています（※2025年5月14日時点　メ～テレ調べ）。この災害関連死“0”を目指し、避難生活の環境を改善しようと活動を続けている団体があります。「避難所・避難生活学会」です。そのキーワードは「TKB48」です。T＝トイレ、K＝キッチン、B＝ベッド、48＝48時間以内です。

避難所・避難生活学会

「避難所・避難生活学会」は、避難所の環境改善を通じて「救い得た死とも言われる関連死」をなくすために設立されました。

　メンバーは、2011年東日本大震災はもちろん、いくつもの自然災害の被災地に支援に入り、被災者と向き合ってきた医療関係者、福祉関係者、防災の研究者、防災関連用品のメーカーの方などです。

　学会では「日本の避難所は、1923年関東大震災以来、大きな進歩は無い」と言います。そこで掲げたのが「TKB48」です。見てわかるとおり「あのグループの名前」を参考に、多くの人に覚えてもらうように考えたそうです。「少し笑いも取れれば」と冗談めかして言っていましたが、さすがに防災関係となるとねぇ、ちょっと。

TKB48

　TKBとは「トイレ・キッチン・ベッド」です。災害関連死にかかわる重要なポイントです。避難所の環境改善に取り組む「避難所・避難生活学会」は、「災害から48時間以内に充実した避難所を!」として、「TKB48」をスローガンに調査・研究活動、被災地支援をしています。TKBを詳しく説明すると…

　T（トイレ）：トイレは設置数が少ないことだけでなく、和式が多く高齢者・障害者に使い難いという問題があります。このためトイレの回数を減らそうと食事や水分摂取を減らし、その結果、脱水症状や栄養失調につながります。

　K（キッチン＝食事）：炊き出しや行政からの食料支援が安定するまで、少し時間がかかります。それまでは冷たい食事、冷えたおにぎり、菓子パンなどが続きます。充実した食事は元気の源です。
　
　B（ベッド）：避難所ではブルーシートかゴザで雑魚寝。この状態がしばらく続きます。パーティションも無いので「個人の空間」「家族の空間」がありません。ダンボールベッド、パーティションが入るまで数週間はかかっています。早い話が「土足で歩く床」で寝ているわけです。衛生上の問題もあります（この問題については後日、ダンボールベッド編で説明します）。

　こう書くと、「そんな事を言ってもこれが精一杯。行政機関やボランティアもみんな頑張っているのになぜそんな指摘をするのか」「48時間以内に、TKBを整備することなんてできない」と思う方が多いと思います。しかし、できている国があります。

避難所のことはイタリアに学べ

　日本の避難所は、1923年関東大震災から変わっていません。なぜ約100年前と変わっていないのか？その間にたくさんの大災害が起きているのに、大きな改善はみられていません。「カイゼン」が得意なニッポンが、なぜ「避難所」のカイゼンをしないのでしょうか。

イタリアのTKB48は超充実

　イタリアは日本と同じ災害大国です。イタリア半島（別名アペニン半島）はプレート境界にあり地震・火山災害は日本同様で、土砂災害も多いそうです。災害後、市民は避難所で暮らすのですが、その環境は超充実しています。TKB48が行われているのです。そして「災害関連死は０」。イタリアのTKBについても、回を改めてお伝えします。

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　被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐　信裕
　東京都出身。1990年メ～テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える！巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員　防災士。