オフィスで手軽に菓子や食品が購入できるサービスが広がる中、愛知県豊橋市にある創業200年の老舗企業が新たなジャンルの食べ物を提案しています。仕事中に食べても罪悪感がない食べ物とは?
【オフィスに「冷凍ちくわ」常備】1827年創業『ヤマサちくわ』が展開する新規事業の狙い

JR名古屋駅前。こちらのオフィスビルに入っているNTTデータ東海です。新規事業のアイデア出しが行われていました。一通り意見を出し合い、議論が行き詰まったところで、社員の一人が何かを配り始めました。

お菓子?と思いきや、なんとちくわ。それもタンパク質を多めに含んだプロテインちくわでした。それぞれちくわをかじりながら、会議再開です。

女性社員:
「さっきまで真面目な打ち合わせをしていたのに、一瞬空気になごむ感じがする」
男性社員:
「罪悪感は全くないですね。タンパク質も豊富なので」

実はこれ、会社が導入したオフィスちくわ。一つ270円で社員がその都度購入する仕組みです。冷凍保存されていて、電子レンジで1分少々温めればすぐに食べられます。

NTTデータ東海 第二事業部 石原雅也課長代理:
「オフィスちくわというものが非常に意外性があるので、それ自体が話題になって会話のきっかけになったという効果が一番大きいです」
【事業者がピーク時の57社から3社へ激減】解凍後も9割の弾力を保つ「急速凍結」で賞味期限1年を実現

このユニークな事業を始めたのは、愛知県豊橋市のヤマサちくわ。1827年創業の練り物メーカーです。2026年9月、オフィスちくわの本格展開に乗り出しましたが、その背景にはある危機感がありました。

ヤマサちくわ 蔵野泰輔専務:
「豊橋のちくわというのは存在感や大きなパワーがあったのですが、事業者さんの数も減ってきています」

全国有数のちくわの名産地である豊橋市。しかし、ピーク時に57社あった市内の事業者は、今や3社にまで減少しています。

ちくわの需要喚起に目をつけたのが、近年増えているオフィスワーカー向けのサービスでした。

ただ、賞味期限は通常1週間ほど。オフィスに常備してもらうには冷凍が一番ですが……。

ヤマサちくわ 蔵野泰輔専務:
「単に冷凍するだけでは、パサパサした食感になり、ちくわ本来の歯ごたえや弾力が失われてしまう」

どうやったら冷凍でも食感を保てるのか。ヤマサちくわがたどり着いたのは、ちくわの食感を保つ最適な凍らせ方、急速凍結です。

マイナス50度から60度で1時間ほど凍らせます。通常、凍らせると氷の膨張で細胞が壊れて食感が落ちます。

しかしマイナス50度〜60度で一気に凍らせる急速凍結技術を用いれば、水分が膨張する隙を与えず細胞の破砕を防ぐため、解凍後も生のちくわに近い弾力を保持できます。

ヤマサちくわ 開発部 安食俊秀次長:
「『美味しいちくわしか商品として提供できない』というこだわりから、開発まで試行錯誤を重ねてきました」

では実際の食感はどうなのか。ちくわの弾力を測って比べてみると、弾力を示す数値は生のちくわが310だったのに対し、家庭用で冷凍したちくわは解凍後に180まで低下。一方、急速凍結なら9割近い弾力をキープしています。

冷凍で賞味期限が1年に伸び、長期保存も可能になりました。
【1年後に40社導入目指す】間食やスポーツ向けなどオフィス外への需要拡大に期待

オフィスちくわの導入先は現在1社ですが、1年後に40社へ導入してもらうのが目標です。

ヤマサちくわ 蔵野泰輔専務:
「オフィスの中でちょっと小腹が空いたときに一口ちくわを味わうような習慣や文化が少しずつ広がっていくと非常にありがたい。今まで販売をしてこなかったエリアでも積極販売していきたい」

日本経済新聞社 名古屋支社 山名直花記者:
「プロテインちくわはスポーツジムの要望から生まれました。長期保存が可能で、手軽にタンパク質をとれる強みを活かせば、オフィスだけではなく部活生や高齢者の間食といったように、活躍の場をさらに広げられそうです」


