“アイドル顔負け”の影響力 米農家・近藤匠さんが米づくしイベントを仕掛ける 消費拡大へ奮闘中 愛知・半田市
“アイドル顔負け”の影響力をもつ米農家が仕掛ける米づくしイベントは、子どもたちが米や稲作に接する機会を増やし、米の消費拡大につなげようと企画されました。
子どもたちに米の触れ合いを… 仕掛け人は“アイドル顔負け”の米農家
11月上旬、愛知県半田市で開かれた稲の収穫を体験できるイベント。
「いえーい、刈れた~」「取れた!」「キャ~」と子どもたちの歓声が響きわたりました。
幸田町から参加した小学生の親:
「どうやってお米ができて食卓に並ぶかまでを、子どもに体験してほしかった」
炊きたてほかほかのごはんに、子どもたちは「うんまっ!」とご満悦。
大人向けには、地元の酒蔵が収穫された米を使って作った日本酒のふるまい酒も。
米へのこだわりが詰まったこのイベントを仕掛けたのが、米農家の近藤匠(たくみ)さん(32)。
実は今、近藤さんをはじめとする若手の米農家が注目を集めています。
米農家の3人がステージに上がると……高い注目度。
トークショーの後は、一緒に写真撮影タイム!
さながらアイドルのような人気です。
車で15時間かけて来た参加者:
「長崎県の佐世保市から来ました。お米農家の3人の方が、インスタでイベントについて言っていて、私たちも勉強したくて来ました」
注目を集めるきっかけとなったのは、SNSでの情報発信です。
2年半前から近藤さんは、農家の高齢化や農業の担い手不足など農業が抱えるさまざまな課題をSNSで取り上げており、今ではインスタのフォロワーは8万人に近づくほど。
こうした活動を続けるのは、なぜなのでしょうか。
米農家・近藤匠さん:
「米離れが長年にわたって起きています。単純に米の消費量を上げていきたいなと思いますので、まずは知ってもらって、食べてみておいしいなどを感じてほしい」
米の消費拡大のために、SNS発信を続けていく近藤匠さん
米離れは年々進み、国内の1人当たりの年間消費量は1962年度をピークに減少。
昨年度は、ピーク時の半分以下となりました。
街の人々に米食の機会について聞いてみました。
80代の男性:
「モーニングセットを注文すれば、パンが出るじゃない? 昔は(朝食に)お米を味噌汁と漬物で食べていたよね。私も」
高校生:
「食事を早く済ませたい時にすぐ食べられるので、パンを食べることが多くなったなと思います」
「学校に売っているのはパンが多いです。おにぎりも売っていますけど、買った印象はあまりないです」
食の多様化なども背景にあるとされる“米離れ”。
稲の生育などを研究する学生や研究者からは、複雑な声も聞かれました。
稲の生育を研究する学生:
「米を食べてくれる人が減っちゃうと、稲の栽培が発展につながっていかないかな……」
名古屋大学大学院生命農学研究科・江原宏教授:
「もちろん食の多様性があるので、それぞれのニーズに合った食を選んでもらえればいいと思うんですけれども、世界が認める和食の素晴らしさ、それを我々がしっかりと伝承していかなければ」
今年は“令和の米騒動”を背景に、米の買い取り価格が上がりました。
農家にとっては追い風ですが、さらなる米の消費低迷が懸念されるため、近藤さんは米の消費拡大につなげる活動にいっそう力を入れています。
イベントに参加した人:
「自分の今食べたいものばかりを選んでしまい、ご飯を意識して食べようというのはあまりなかった。食べて生産者さんを支えるのは大事なことですね」
「(若手農家が)未来を見据えて頑張っている姿に、すごく応援したい気持ちになりました」
米農家・近藤匠さん:
「お米とか稲作といった日本の文化を通して、いろんな表情になって何かを持ち帰っていただくのが、イベントの一番の目的です。目的は達成されたかなと思います。いろんなものがある中で、米も負けてないよね、という新しい魅力を発見する提案ができればいいな」
近藤さんによると、「農家のKT」というアカウント名でSNSでの発信を続けていきつつ、イベントへの登壇や米にまつわるイベントを今後も開催していくということです。