減税で「税収が増えたのは全くの間違い」名古屋市議会“最大会派“の自民党市議団長 リコールもけん制
河村たかし前市長の失職に伴う名古屋市長選挙で誕生した広沢一郎新市長。自民党名古屋市議団の藤田和秀団長に、広沢新市長とどう相対するのか、また広沢新市長が掲げる市民税10%減税への向き合い方について聞きました。
――広沢新市長の議場での挨拶を見てどのような印象を受けましたか。
「広沢新市長とは県会議員時代も、副市長時代もやり取りをしてきました。今日は非常に緊張をしていると感じました」
――普段はもう少し違った様子ですか。
「朗らかな、比較的おおらかな印象が私にはあったので、少し硬い雰囲気でしたね」
――公私共に親交があったからこそのお話だったのですね。
「これからの自分が置かれていく立場を意識していることをとても感じました」
10%減税、財源は行政改革と公債償還基金
――自民党名古屋市議団として「10%減税」の公約について、どのような姿勢で議会に臨まれますか。
「すでに10%の減税は15年前にも議論していて、5%減税の決着をしています。改めてそれを議論することになれば、まずは財源、10%減税の効果、そして本当に10%が適切なのかという税率の規模、実施する時期を丁寧に議論して結論を出していくことになると思います。議論してみないと、是非は分からないと思います」
――広沢新市長は約100億円かかるという規模の10%減税を実現するために「行政改革」と「公債償還基金」の2つを財源にしようと考えていますね。この2つで、100億円を現実に生み出すことは可能でしょうか。
「15年前の議論を思い起こせば、当時10%減税の議論をしたときに行政改革から生み出す財源となると、当然事業を洗い直すことになります。当時は保育料の値上げや、現在好評を博している『自動車図書館』の廃止といった、市民生活に非常に影響が大きいものも行政改革に入っていました。
それを議論した結果、最終的には河村前市長は5%で妥協したのが現状です。これからさらに100億を生み出すというのは、相当厳しい行政改革になるのではないかと思います」
――以前の話し合いの中で行政改革は進めているので、その余地がどれだけあるか不透明なのですね。
「そうですね。ここから新たな行政改革はあると思います。また広沢市長は足らないところは『公債償還基金』と話しています。ですが、行政改革で減税財源を目指すというのがルールです。公債償還基金に手を入れると、今後の起債の発行に影響があります。新たな事業をやろうとしたときに、市債を発行した借り入れが難しくなるという問題があります。簡単に公債償還基金は使えないのではないかと思います」
●公債償還基金
借金返済に充てるための積立金。昨年度末の積立総額は約3000億円。
5%減税の効果は?
――これまでの5%減税されてきましたが、「効果」についてはどのようにお考えですか。
「減税をしたことによって税収が増えたのは全くの間違いです。税収は全国の政令指定都市で増えています。名古屋はまだ8位になるので、減税によって税収が増えたのは少し違いますね。そのため、効果はもう一度検証しなくてはいけないと思います。
減税10%をやるのであれば、相当慎重に時間をかけた議論をしないと結論は出せないのではないかな、と」
――「減税したから税収が増えた」との主張を展開して当選した広沢新市長ですが、根拠を議会に示す必要がありますね。
「相当明確なエビデンスを示していただかないと、まず減税の議論に入るところから始まると思います」
――リコールを「究極の手段」として選択肢も残しています。
「『究極の選択』は広沢ワードかなと思います。リコールについては後ろから言われている気がしています。というのも、15年前のリコールの成功体験がある方々が話していること。15年前とは政治の状況も、市民の意識も相当変わっています。それを強行することになれば、市民の混乱や市政の停滞は避けられないと思います。
相当言葉を選んでいただかないと、今後の議論に影響すると思います」