「ひっ迫した財政状況を目の当たりに」 公約の実現はいつ?名古屋市の広沢一郎市長の就任から1年で直撃

2024年11月に、河村たかし前市長の後継者として名古屋市長選挙に初当選した広沢一郎市長。名古屋市で15年ぶりに新市長が誕生してから1年が経ちました。公約で掲げた「市民税減税の拡大」や「名古屋城の木造復元」はいつ実現するのか。そして、この1年をどのように振り返るのでしょうか。広沢市長に直撃しました。
15年ぶりの新市長、どんな1年だったのか

広沢一郎市長:
「印象に残っていることは、半年くらい前に記者会見中に倒れたことですね。あれは想定外でした。就任して間もないころに、結構忙しいんだなと、昼も夜も予定が入るので。こんなことやっていたら倒れるのではないか、と思っていたら本当に倒れたという、そんな感じでした」

また、この1年で名古屋市の非常にひっ迫した財政状況を目の当たりにして驚いたと話します。
広沢市長:
「選挙前には知らなかった名古屋の今の非常にひっ迫した財政状況を目の当たりにしたこと。こんなに悪化していたんだと素直に驚きました」
名古屋市は令和8年度の予算で、922億円の収支不足となる見通しを示しています。特に2026年、愛知・名古屋で開かれるアジア・アジアパラ競技大会の関連経費が、市の財政を圧迫し、22年ぶりに公債償還基金の借り入れを決めました。
公約に掲げていた10%減税、財源の確保が困難に

広沢市長は、こうした財政状況から2025年10月、公約に掲げていた10%減税を令和8年度は断念。減税率を10%に引き上げるために必要な約100億円の財源を確保するのが難しいと判断しました。

果たして、残りの任期3年で実現できるのでしょうか。
広沢市長:
「できるように最大限努力をしていく。まず減税をやる前にお金をつくらないといけない、というプロセスをこれからしっかりやっていきたいです」

――残りの任期3年で、10%減税が実現すると断言できますか。
広沢市長:
「いや、これは断言できないですね。なんと言ってもお金のかかることなので、100%の確証を持って言えることではないです」
名古屋城の木造復元は「リニアが来る前にはできるのではないか」

もう1つの公約、名古屋城天守の木造復元をめぐっては、2023年の市民討論会で障害者への差別発言が問題となり、事業がストップしています。こうした中、11月には初めて、広沢市長と障害者団体の意見交換会が行われました。ただ、大型のエレベーター設置を要望する障害者団体に対して、広沢市長は小型昇降機の設置を提案。議論は平行線をたどっています。

広沢市長:
「山で例えると、まだまだ裾野のほうなので先は長いと思います。ただ、着実に登っている状況ではないか。予定ではあと1年くらいかけて障害者団体の意見を聴取しながら、バリアフリー方針を固めて、ちゃんとした計画にして文化庁に持っていきます。
文化庁から許可がもらえればあとは、実際の工事にかかれば最短で4~5年くらいでできるかなと。リニアが来る前にはできるのではないかなと考えています」
河村市政を引き継いだ広沢市長。一方で、この1年で議会との関係性には変化がみられました。
議会に歩み寄る姿勢をみせた広沢市長

河村前市長は、政策をめぐって議会と対立する場面が多くありましたが、広沢市長は議会に歩み寄る姿勢をみせる場面も。市議会の最大会派自民党市議団の藤田前団長は、広沢市長の姿勢をどのようにみているのでしょうか。

自民党市議団 藤田和秀前団長:
「いろいろな政策で議論していても、まずは相手の話を聞く。それを自分なりに分析をして、その中でベストな折衷点を見つけて提案してくる。市長のスタンスを基本として、議論の準備ができるので、時間が有効に使えるやり取りになりました」
これには広沢市長も、「割としっかり議論ができるようにはなってきたかなと思う」と話します。

広沢市長:
「『ちゃんと話ができるようになった』という声を議会からもらうことがあるので、その点においては前進があったのではないかなと思います。
名古屋城も当時は行政側と議会側で意見が対立することが多くありましたが、今では『一緒にやろうか』という雰囲気になってきました」
就任2年目の目標は「アジア大会・アジアパラ大会を成功させること」

就任2年目の目標を聞くと、「来年は何をおいてもアジア大会・アジアパラ大会があるので、あれをとにかく成功させることに尽きる」と力を込めます。
広沢市長:
「お金はかかったみたいだけど、やってよかったなと市民に思ってもらえるようにすることが目標です」

インタビューの最後には、東山動植物園である施策を考えていると教えてくれました。
広沢市長:
「東山動植物園は非常に高いポテンシャルがありながら、“課題”もいくつかあるので、その課題をチャンスに変える。そうした施策を打っていきたいです」
――その“課題”とはなんでしょう?
「何かを言ってしまうとバレてしまうので、期待していてほしいです」





