テレビや自転車、何でも砕く!破砕機の製造工場「新居浜鉄工所」に潜入
テレビや扇風機、自転車など、何でも粉砕! “ライオン”と呼ばれる破砕機の製造工場「新居浜鉄工所」(愛知・大府市)に潜入。何でも砕く頑丈な刃は、実に繊細な手法で作られていた。
「破砕機」をつくる工場に潜入!
愛知・大府市は、名古屋、三河、知多地域を結ぶ交通の要衝。中京工業地帯にとっても重要拠点の一つで、さまざまなモノづくりの企業が集まっている。
今回の舞台は、そんな大府市にある「新居浜鉄工所」だ。
同社は、ゴミ処理場などにある「破砕機」をつくるメーカー。破砕機は家庭から出るゴミを細かくして、埋め立て・焼却・リサイクルをしやすくする。
破砕機が活躍する現場の一つ「八穂クリーンセンター」(愛知・弥富市)を取材すると、本棚やたんすなどの大型家具が、次々と破砕機に飲み込まれていた。
「新居浜鉄工所」が手掛けたこの破砕機、その名も「ライオンシュレッダー」は、大きな木製パレットや硬いフレームの自転車も、あっという間に粉々に。まさに「ライオン」と呼ぶにふさわしい豪快マシンだが、なんでも砕くその秘密は、強靱な“刃”にある。
強靱な“刃”を生む繊細工程
「ライオン」の破砕刃の原型は、硬い特殊合金鋼でつくられた特注品だ。
まずはショットブラストという方法で表面の酸化スケール(酸化した層)を取り除く。
直径約2ミリの鉄球を数十分間、高速でぶつけると…その違いは一目瞭然!
さらに刃を削り、形を整えていく。
表面がキラキラと輝き完成に近づいたように見えるが、よく見ると、バリや飛び出している部分が。これらをきれいにするために、ドリルで穴の内側を削っていく。
削る際にかけられる茶色い液体は、温度が上がらないように冷却するための工業用オイル。
六角加工が終わると、今度こそ完成したように見えるが、「新居浜鉄工所」の竹之内さんは、「この状態だと刃で言う『なまくら』(切れ味が悪い)。このまま機械につけると、割れたりあっという間に摩耗したりしてしまう」と話す。
破砕刃を熱処理
「新居浜鉄工所」で加工された刃は「桜井興産」(名古屋市港区)に運ばれ、今度は約900℃ある炉の中へ。ここで約3時間熱し続ける。
お次は冷却するため、油のプールへドボン。油につけた瞬間に炎が上がった!
これは刃を硬くするための「焼入れ」という作業で、高温の状態から一気に冷却することで、強度が3~5倍に。この工程を経て、やっと強靭な刃に生まれ変わるのだ。
焼入れを終えた刃は、再び「新居浜鉄工所」へ。最後に研磨機で100分の1ミリの精度で削っていく。規定の厚みにし、精度を保つため、2日間かけて慎重に作業する。
刃は丈夫なだけではなく、かみ合わせも重要だ。均一な隙間を作るためには、極めて高い精度での作業が求められる。追求する精度は100分の1ミリ。時間をかけて少しずつ表面を削り、必要な個数をつくる。
こうして、美しく光り輝く刃が完成した。大迫力の「ライオンシュレッダー」だが、刃の製造は繊細そのものだった。