関西風や広島風と違う愛知独自の“2つ折りお好み焼き” ルーツを徹底調査『チャント!特集』
キャベツに卵、豚肉を乗せてソースをたっぷりと塗り、最後に折りたたむ「愛知のお好み焼き」。しかしお好み焼きの本場、広島と大阪では折りたたんでいません。なぜ、「愛知のお好み焼き」は折りたたむのでしょうか。その“謎”を徹底調査しました。
40年前、食べ歩きのために銀紙で包むスタイルを考案
愛知のお好み焼きの謎を解くべく訪れたのは、名古屋市にある創業43年の「大潮屋」。折りたたんだお好み焼きを手際よくアルミシートに包んでいきます。
お客さんに二つ折りのお好み焼きに違和感があるかを聞いてみると、
「特にない」「箸とか使わずに気軽に食べられる」「テイクアウトだとたいがい二つ折りじゃないですか?」2つ折りのお好み焼きに疑問を持っていませんでした。
名古屋市西区の円頓寺商店街で60年以上続く「甘太郎本舗(あまたろうほんぽ)」。このお店も、2つ折りにしてアルミシートで包むスタイルです。
円頓寺七夕祭りというお祭りで、食べ歩いてもらうために考案したのは鈴木延久店主の母親、多美子(たみこ)さん。40年ほど前、当時流行していたハンバーガーのように包めば食べ歩きしやすいのでは…と始めました。
鈴木さん「銀紙で包むスタイルは、うちが発祥かなと思っている」
「2つ折り」スタイルをどの店が始めたのかははっきりしませんが、「アルミシート」で包むようになったのは甘太郎本舗が発祥でした。
お好み焼き専用のアルミシートを作る会社もあります。お好み焼き専用のアルミシートは、通常の半分の厚みでやわらかく、価格も安いです。購入者は愛知県の飲食店が圧倒的に多く、お好み焼きを安く販売したいというニーズにマッチしていることがわかりました。通常の容器とフタのセットが約30円~60円するのに対し、アルミシートだと4~5円ですみます。「節約好き」ともいわれる愛知の県民性がこのスタイルを生んだ一因のようです。
広島と大阪の良いところ取り?
お好み焼きには主に2つの作り方があります。1つ目は広島の「重ね焼き」。クレープのように薄く伸ばした生地に具材と麺を重ねて焼いていきます。2つめは関西の「混ぜ焼き」。具材を混ぜ込み、分厚く広げるため、もっちりした食感です。
愛知の作り方は、広島のように生地を引き、具材を重ねる「重ね焼き」ですが、生地を伸ばさないため、食感はもっちりとした関西のお好み焼きに似ています。広島と大阪の良いところどり、それが愛知のお好み焼きでした。
日本や海外のお好み焼き店などで構成される「お好み焼きアカデミー」松本重訓専務理事に話を聞きました。
「昔は広島でも、お好み焼きを折って出していた。そばが入るようになると、ボリュームが出て折りにくくなるので、そのまま提供するようになった。元々のお好み焼きはおそらく一緒じゃないか」
お好み焼きの前身と言われるのが、一銭洋食です。大正時代から昭和初期に西日本中心で作られており、1銭で買えたことからその名が付きました。薄い生地を引き、ネギやとろろ昆布、天かすなどを入れて2つに折り、新聞紙に包んで食べていたと言われています。愛知にはこの「一銭洋食」の形が脈々と残っていたのではないかと推測できます。
愛知の2つ折りお好み焼には文化的価値があった!?
日本コナモン協会の熊谷真菜会長に、「愛知の2つ折りスタイルお好み焼き」について聞きましたが、初めて聞いたと驚きます。
熊谷さん「古い形が名古屋に顕在していたことがびっくりというか、大発見。(2つ折りスタイル)があったということが、文化的な価値があるものだと思いました」
愛知の2つ折りスタイルこそが、お好み焼きの原型だったことが判明しました。本場を自負する、広島と大阪のみなさんに食べてもらいました。
「食べやすいですね。食感もいいし、おいしい」
「クレープみたいな感覚で食べられるから『名古屋焼き』みたいな形で売ったら(大阪でも)けっこうはねる(売れる)んちゃうかな」
名古屋メシが定着したように、お好み焼きも関西風・広島風の二大勢力に名古屋風が割って入る日が遠くないかもしれません。
CBCテレビ「チャント!」4月28日の放送より。