
高騰マンションなぜ売れる?都市部で続く建設ラッシュ 価格を抑える“秘策”と供給過剰の未来は?【大石邦彦が聞く】

物事の核心に迫る「大石が聞く」。今回はコメと同じく高騰が続くマンション事情についてです。価格を抑える、あの手この手。さらに、こんなにマンションを建てて大丈夫なのかも考えます。
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(大石邦彦アンカーマン)
「名古屋市内にある、こちらの建物。実は超高級マンションのモデルルームらしいんですね。こちらは、どんなマンションになりますか?」
(名鉄都市開発 執行役員 鬼武光さん)
「富裕層向けのマンションです。安くても1億円くらいがメインになります」
(大石)
「安くても1億ですか」
名古屋の高級住宅街として知られる東区の橦木町に、ことし1月に完成した「橦木町レジデンス ザ・フューデ」、標準的な部屋でも1億円は超える超高級マンションです。その最上階の部屋が間取りは2LDK、内装は木目を取り入れたナチュラルなデザインです。
(大石)「広さは、どのぐらいですか?」
(鬼武さん)
「124平米です。富裕層の方には100平米は一つの基準になりますので。これくらいないと、ご満足いただけない」
そのお値段は?
(鬼武さん)「約2億4000万円」
(大石)「売れるんですか?」
(鬼武さん)
「売れています。7割くらいは売れています。古くから名古屋で事業をしている方がやっている方が、一番多いお客さまですね」
新築マンションの平均価格は東京で1億円超、名古屋でも5800万円に
新築マンションの平均価格は東京で1億円を超え、名古屋でも5800万円と上昇が続いています。背景にあるのは建築資材に燃料費、人件費などの高騰。建築の原価は過去最高水準になっています。それでも富裕層や共働き世帯を中心に売れ行きは好調だというから驚きです。シニア世代などに人気なのが駅近のマンション。名古屋市中村区にある「レ・ジェイド名古屋」は名鉄栄生駅から徒歩2分の好立地。
(日本エスコン 遠藤和洋さん)
「全戸完売しておりまして。実はここがキャンセル住戸で限定の1戸になります」
老後を見据え郊外の一戸建てから住み替える人も多く、70平米3LDKの間取りで、価格は6290万円。利便性が良いことはもちろん、何より駅近は資産価値が下がりにくく県外の資産家が購入するケースも増えているといいます。
(大石)「なぜ駅近は人気なんですか?」
(新東通信 不動産エグゼクティブ 山元照彦さん)
「やはり資産価値、利便性。あれは20年近く前のマンションですが、今は当時と比べて値段が倍くらいになっている。特に名古屋駅周辺はリニア期待もありますし、東京の方が資産として購入する話はある」
(大石)「名古屋以外の方も購入している?」
(山元さん)「名古屋市や三重、岐阜、東京の方」
価格高騰を抑えるコスト削減の動きも
一方、業界ではマンションの価格高騰を抑えるコスト削減の動きも。
(大石)
「この部屋は真っ黒で何もありませんね」
見たい間取りを選択すると、急に目の前に部屋が登場しました。実は、これが最新のモデルルーム。黒い壁と床はLEDのディスプレイで、様々なタイプの間取りが実寸大で映し出され、家具の配置や窓からの景色を確認できます。
(タカラレーベン 伊藤秀司さん)
「実際に存在する全てのタイプの間取りが再現できるので、すごく検討していただきやすくなるだろうと」
モデルルームの設置には数千万円のコストがかかりますが、それを大幅に削減できるため価格高騰の抑制にもつながるということです。
また、全く違う形で価格を安く抑える物件も増えています。
(大石)
「愛知県日進市に来ています。赤池駅のほど近く、そして近くには人気の商業施設もあるんですよね。非常に立地の良い場所です。ここに今後注目を集めそうな物件があります。それがこちらです」
3LDKで3000万円台からと若い世代にも手が届く価格帯ですが、これには理由が。
(住友不動産ステップ 金月智也さん)
「定期借地というマンション」
定期借地権付き物件とはマンション業者が地主から数十年の期限付きで土地を借りて、そこに建てるマンションのこと。土地購入の必要がないためコストは大幅に抑えられますが、期限が来れば取り壊して更地にする仕組みです。このマンションの期限は60年。
都心部に建設が続くマンション、供給過剰の恐れは?
(大石)
「土地も購入して建てると、いくらくらいプラスになるんですか?」
(金月さん)
「1500万円前後くらいはプラスになる」
ただ、期限付きということで…
(金月さん)
「30歳の方が60年後となると90歳になるので、90歳には建物を明け渡さないといけないという不安はあると思います」
(大石)「次の世代に資産を残すことはできない?」
(金月さん)「できない」
若い世代には分譲と同じクオリティの超高級賃貸として、高齢世帯には「ついのすみか」としてニーズは確実にあるそうです。
しかし、ここまでの取材を通して一つの疑問が…
(大石)
「都心部でマンションがバンバン建っているが、一方で人口減少局面に入っている。こんなに建てて大丈夫?」
(新東通信 不動産エグゼクティブ 山元照彦さん)
「都心部は、これからもどんどんシニアの方が住んで、地方からも人は来るので心配はないと思う。郊外の利便性の悪い所の空き家問題は避けては通れないと思う」
人口減少に超高齢社会の中でも、都心部に建ち続けるマンション。投資目的や新築人気に今は支えられていますが供給過剰にならないのか。日本社会の本質的な課題が待ち受けています。