
30年で半減した短期大学 少子化や高学歴志向の影響で…2025年度は20校が学生募集を停止 名古屋文理大の短期大学部も約60年の歴史に幕

少子化と高学歴志向の波に飲まれ、全国で姿を消していく短期大学。約30年で半減という状況の中、名古屋文理大学短期大学部も60年の歴史に幕を下ろす決断をしました。国の教育政策や社会構造の変化により、短期大学は変革を迫られているようです。
定員割れが続いていた名古屋文理大学短期大学部

名古屋文理大学は、短期大学部について2027年度以降の学生募集を停止すると発表しました。
2028年3月をもって終了する予定で、2年制課程での栄養士養成は名古屋文理栄養士専門学校に引き継ぎ、これまでの教育研究の成果は名古屋文理大学の発展に役立てるとしています。
1966年に名古屋栄養短期大学として開学してから約60年にわたり「食」や「栄養」の教育研究を実施してきた名古屋文理大学短期大学部。
2020年度ごろから入学希望者の減少が見え始め、入学者数は定員割れの状況が続き、2020年は101人、2021年は104人、2022年は109人、2023年は73人、2024年は64人でした。2024年には定員を190人から150人に変更しています。
同大学の担当者は、18歳人口の減少や高学歴志向、高等教育の修学支援新制度が開始されたことなどが、短期大学部の入学者数が減少した要因ではないかと話しています。
一方で、同大学では2025年度から大学院を開設。さらに、2028年度には4年制大学の学部・学科の改組も検討されていて、現行の「4年制大学+短期大学部」から「大学院+4年制大学」へとワンランク上の教育環境へシフトするとしています。
なぜ短期大学は進学先として選ばれなくなったのか?
阿部俊子文部科学大臣が4月4日の会見で、「短期大学は、各大学において社会変化や地域のニーズを踏まえた改革を進めていくとともに、他の高等教育機関との連携も進めていくことが重要」と述べているように、短期大学は今、岐路に立たされているようです。
全国的に短期大学は減少し続けていて、文部科学省の学校基本調査によると、1995年には596校ありましたが、2005年には488校、2015年には346校、2024年には297校となり、約30年で半減しています。国立の短期大学は2010年以降なくなりました。
さらに、2025年度に学生募集を停止した短期大学は20校あったということです。

名古屋文理大学の担当者も指摘するように、こうした背景には少子化や高学歴志向の影響があるようです。
18歳人口は1992年の205万人をピークに減少を続けていますが、今後も歯止めはかからず、同省が公表する「18歳人口の将来推計」では、2035年には18歳の人口は初めて100万人を割り、2040年には約82万人にまで減少すると推計されています。
子どもの人口が減少する一方で、共働き世帯の増加やジェンダー意識の変化により、女性の高学歴志向は高まりをみせています。従来、短期大学は2年間という短期間で高等教育を受けられる場として、特に女性の進学先として人気がありましたが、近年はより専門性の高い教育や就職の優位性を求めて4年制大学を選択する傾向が強まっています。
国の教育政策としても、授業料などの免除や減額、返還不要な給付型奨学金によって大学・短期大学・専門学校などを無償化する「高等教育の修学支援新制度」が2020年4月に開始し、4年制大学へ進学しやすい環境が整備されました。
また、教育政策に関する意見交換などを行う中央教育審議会は2025年2月の答申で、今後の高等教育政策の方向性として「質の更なる高度化」「高等教育全体の規模の適正化」「地理的・社会経済的観点からのアクセス確保」を挙げていて、学生への修学支援とともに規模を縮小・撤退する学校への支援も進める方針を示しています。
こうした国の指針も短期大学の減少を加速させているのかもしれません。
社会人の学び直しなど新たな可能性も広がるなか、このまま減少の一途をたどるのか、この変革期を乗り越えて進化を遂げるのか、短期大学の存在意義が問われています。