
車暴走で歩行者3人死傷の事故 どう防ぐ…70歳以上は「義務」高齢者講習の現場を取材 名古屋

15日、名古屋駅の近くで車が暴走し、歩行者3人が死傷した事故。71歳の男が運転していた車は、制御できない状態に陥るほどのスピードが出ていたとみられます。

事故が起きたのとほぼ同じ時間帯の名古屋駅前。多くの通勤客が行き交ういつもの光景の中に、手を合わせる男性がいました。
「(亡くなった方は)本当に不運ですよね。一瞬だったと思いますけど」(通勤する男性)
15日朝、名古屋駅にほど近い交差点で歩行者3人が車にはねられ死傷しました。
運転していたのは、名古屋市北区に住む鳴海洋容疑者、71歳です。当時の映像を見ると、車は勢いよく縁石に乗り上げ反対車線に入り、そのまま横断歩道へ。歩いていた男女3人がはねられました。
この事故で、稲沢市の会社員、田中幸子さん(49)が亡くなり、男女2人が大けがをしました。
「いつもにこっと笑ってあいさつしてくれた」

亡くなった田中さんを知る人は…。
「いつもにこっと笑ってあいさつしてくれて、感じのいい人」「お母さんも(田中さんが)頼りだったと思う。お母さんは元気な人じゃないから」(田中さんを知る人)
警察は、鳴海容疑者を「過失運転致傷」の疑いで現行犯逮捕しましたが、より罰則の重い「危険運転致死傷」に容疑を切り替えて16日朝、送検しました。
調べに対し、鳴海容疑者は「人にぶつかっていない」と話しているということです。
制限速度の2倍を超えるスピードでカーブに進入か

捜査関係者は、車が事故の直前、下り坂の左カーブに制限速度の2倍を超える時速60キロほどで進入したとみています。
さらに警察に調べに対し…
「縁石に当たったかもしれない」(鳴海容疑者)
警察は、スピードの出し過ぎにより車が制御できない状態に陥り事故を起こしたとみて調べています。
71歳の鳴海容疑者。運転免許を更新をしたのは、おととし、69歳の時でした。
高齢者講習…その内容は

70歳以上の人が、免許を更新するときに、義務付けられているのが、「高齢者講習」です。
「名古屋市内の自動車学校です。高齢者向けの講習が行われています。座学のあと検査や実技が行われるということです」(石神愛子フィールドキャスター)
普通免許を持っている場合、原則、講習は2時間。内容は「安全運転の知識に関する講義」「動体視力や視野などを見る適性検査」、そして「指導員が同乗する実車指導」です。
「(運転歴は)ことしで54年。(車は)なくてはならないというかないと生活が維持できない。買い物もいけないし」(受講者の男性 72歳)
男性は優良ドライバーの証、ゴールド免許ですが。
「(15日の事故も)71歳の人でひとごとじゃないと。事故を起こしてからじゃ遅いのでどういうときに (免許返納を)判断したらいいのか、事故を見て余計思った」(受講者の男性 72歳)
運転免許を保有する人のうち70歳以上は全体の17.0%

警察庁によりますと、国内で運転免許を保有する人は去年8000万人以上、そのうち70歳以上の人は全体の17.0%にあたる1389万人にのぼります。
高齢者講習ではどんな実車指導を行うのか様子を取材しました。
さきほどの72歳の男性。アクセルを踏み込み、段差を乗り上げた瞬間にブレーキを踏んで車を停止させます。
続いて見通しの悪い場所から一時停止をして広い道へ進入させます。男性は2つの実技を問題なく行えました。
「自身の衰え」自覚することが重要

高齢者の運転で重要な3要素があると城北自動車学校の副校長、久保博之さんは言います。
「見て・考え・動かすの3要素これらが正しくできているか。事故は、見てない、判断が遅いとかできないことで起きる」(城北自動車学校 久保博之副校長)
一時停止からの進入については…。
「確実に停止 ジリジリと前に出ていく。ペダルをちょっとずつ操作、2~3ミリの微調節が難しくなる」(久保副校長)
自分自身だけでなく、周囲の安全を守るためにも重要な「高齢者講習」。事故を防ぐため車の安全技術の向上も大切ですが、久保さんはまず「自身の衰え」を自覚することが重要だと言います。
「車の性能が良くなってきても人間の性能が良くなるわけではないので、この反応時間であったりだとか目の視力のことであったりとか、自分の衰えをしっかりと自覚するという、こういった役割が自動車教習所にあるなという自覚をしながら日々教習している」(城北自動車学校 久保博之副校長)