甚大な被害を受けた2018年の西日本豪雨がきっかけで、水害予測への用途を見出したスタートアップがあります。水流データを低価格、メンテ不要で収集する「振り子式の泳ぐ発電機」とは?
豪雨で頻発する「内水氾濫」の脅威、観測データ不足の課題に挑む

激甚化する豪雨被害。降水量が1時間50ミリ以上の非常に激しい雨は、50年前の1.5倍ほどに増えています。2018年の西日本豪雨では観測史上最大の雨量、災害関連死を含め95人が亡くなりました。

テレビせとうち 中島有香さん:
「岡山市内でも西日本豪雨の被害を受けました。水があふれ出したのは、コンクリートで整備された市内の用水路からでした」

取材したこの日も、雨が降った後で水位が上がっていました。用水路、下水道などの排水能力を超えて水があふれる内水氾濫。

西日本豪雨でも、被害の多くがこれによるものでした。国や自治体が管理する大規模河川であれば、水位などのデータを観測する設備がありますが、内水氾濫が起きやすい用水路や下水道にはそれがなく、危険を察知しにくいのです。

この問題に挑むのが、岡山市のスタートアップ「ハイドロヴィーナス」の上田さんです。
ハイドロヴィーナス 上田剛慈代表:
「市街地の用水路や下水道のような場所は電源もなく、ほとんど水位とか流速とか、そういったデータは取れていないというのが実情です」

そこで、彼らの拠点・岡山大学で開発しているのが、大学内の小川に浮かべた円筒形の装置です。電源がないところでも水の流れを監視し続ける装置だと言います。
ハイドロヴィーナス 上田代表:
「この装置が動きながら発電して、水深、水量を測りながらデータを取得しています」

大学内の研究室では、画面に小川の装置から水位や流速、流量のデータが数分に一度届いています。

日本経済新聞社 岡山支局 眞鍋正巳支局長:
「データに裏付けられたエビデンスがあれば、避難の呼びかけにも説得力が増します。装置は河川氾濫リスクをより早く察知し、命を守る行動を訴えて被害を抑える役割が期待されます」
電源不要!「振り子の振動」で発電しデータを送信する仕組み

しかしこの装置、データを送るための電力をどうやって作っているのか。この仕組みを発明した、共同創業者の比江島教授によると以下の通りです。
岡山大学 比江島慎二教授:
「水中に吊るした振り子の周りに渦が出るのです。その渦によってまず、この振り子を振動させます」

筒から下に突き出た金属製の棒に水流が当たると、左右交互に渦が生まれます。それに引っ張られ、振り子のように半回転。この動きで発電します。

発電すると、電圧の強さから流速が割り出せます。水位は付属のセンサーで把握し、それに川幅と流速を掛け合わせれば、流量も分かります。

そうしたデータを自己発電した電力を使い、無線通信でクラウドサーバーに送信します。すると、予測が可能だそうです。

ハイドロヴィーナス 上田代表
「例えば山で雨が降った後、下流ではどれくらい後で水が増えるかがを予測できるようになります」
全国50カ所以上で実証実験、2026年秋の量産化を目指す

実際、愛媛県西条市で行った実証実験では、上流から下流にかけての複数箇所に半年間装置を設置したところ、雨が降ってから上流では18時間後、下流では29時間後に増水することが分かりました。これまで全国50カ所以上で実験。参加者は、以下のように話します。

富山県の農業用水路 管理者 森康範さん:
「水害対策という面では、事前にあふれそうだなという時にはすぐ止めちゃうんで、それの判断が早くできます」

2026年秋には装置の量産を始め、1台20万円前後で販売する計画です。
ハイドロヴィーナス 上田代表:
「防災に役立てたいと考えています。ただ、それだけではなく、これまで人が行けなかった場所、山の中とか海の中とか、そういったところに人が行かなくてもデータが取れるとか、そういったところに役立てていけるのではないでしょうか」


