保育園より遅い登校時間の悩み「小1の壁」を解決 愛知県大府市が地域の高齢者と進める小学校の早朝開放

4月1日、新年度を迎えます。そんな中、新1年生の保護者に立ちはだかるある問題があります。「朝の小1の壁」と呼ばれる問題です。「朝の小1の壁」とは、どんな問題なのか、説明したいと思います。

会社に早く行かないといけない保護者は、保育園の場合、朝7時以降に園に預けて仕事に行くことができていました。しかし、小学校の場合は、登校時間が8時以降になります。よって、朝早く出勤する保護者の家庭では、子どもが1人で家で過ごす時間ができてしまい、仕事と育児の両立が難しくなります。

朝の小1の壁対策として体育館を朝7時から開放

利用した保護者

この問題について、順調に対策が進んでいる自治体が愛知県内にありました。愛知県初の取り組みを取材しました。

大府市の共和西小学校です。時刻は朝7時すぎです。親子が向かった先は体育館です。これは、市が2025年9月から始めた早朝の居場所づくりの取り組みで、市内の小学校2校の体育館を朝7時から1時間開放しています。

高齢者:「元気ですか?」
子ども:「はーい」

児童を見守る人は、先生ではありません。運営は地域のシルバー人材センターに委託していて、1校につき地域の高齢者3人が児童を見守ります。これまでは教員の負担が増えるということはありませんでした。児童1人の利用料は新年度から1学期で1000円です。

利用した保護者は:
「早朝利用がないときは、家で50分くらい一緒に待機しないといけない時間があった。7時から利用できることで、私も早く会社に出勤できてありがたい」

保護者からも好評だということで、市は2026年度から市内の9校すべてにこの取り組みを広げることを決めています。

早朝開門の成否を決めるのは行政の対応

大府市の取り組み

ーー大府市の朝の「小1の壁」解消の取り組みについて、ここからは学校現場に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授にお話を聞いていきます。内田さん、よろしくお願いします。まず大府市の取り組み、どのように評価されますか?

名古屋大学大学院 内田良教授:
「素晴らしい取り組みだと思いますね。小1の壁対策としてはもちろんなんですけれども、教員の負荷がかからないように、しっかりとその点バランスをとって、ちゃんとシルバー人材にもお任せしているところも大事かなと思います。というのも、実は教員の勤務の開始時刻というのは、子どもの登校が終わってから、終わったと同時に教員の勤務を開始するという、これが割と一般的な状況です。つまり逆に言うと、子どもは登校してきている15分、20分の間ですね、その間は実は教員がただ働き、善意で子どもを受け入れてきたという状況があるんですね。そういった状況があると、さらにそこで開門を早めるとなると、さらに教員たちの負担が増えるんじゃないのかと。教員は今、長時間労働の問題が非常に大きな問題になっていますので、その点で、この開門を早めることで教員の負担が増えるのではないかという懸念があると。そこをどこまで明確に区切って、しっかりと、そういった教員の負担が増えない形にして運営していくということが大事だというふうに思いますね」

ーーあくまでも仕組み上は、完全に教職員のお仕事ではないという風に区切られてはいますが、現場ではなし崩し的にそういった業務が発生する懸念がある。それについては、しっかり行政が対応しなきゃいけないと、そういうことですか。

名古屋大学大学院 内田教授:
「そうなんですね。本当に教員がすでに、現時点でただ働きで受け入れていると。私はこういった教員の善意に委ねて、いろんなことお願いしてしまうのを『学校依存社会』という風に呼んでいるんですけれども。本当に、この先生であればなんとかやってくれるでしょうという期待が、結局は長時間労働とリンクしているわけなんですね。そういったところで、そこはしっかりと区別をして、教員の勤務時間はここだと。で、その前はもう教員は関わらないということを明確に、どこまで明確にできるかというところが、この早朝開門の成否を決めるのかなというふうに思いますね」

大府市の取り組みは全国に広がっていく可能性がある

内田良教授

ーーただ、保護者の視点に立てば、学校の教職員の皆さんも関わっていると、その方がより安全、安心につながる、そんな気持ちにも繋がるかなという気もあるんですけどね。そのあたりどうですか?

名古屋大学大学院 内田教授:
「そうですね。だからこそ、その教員じゃない人たちが関わるときに、その質の保証をどうするのかという意味では、誰でも入っていいというわけではなくて、しっかりとどういった人材が、早朝開門の時に子どもにつくのかということも、行政として管理していかないと、誰でもいいという風に考えてはならないと思いますね」

ーーそのあたりはしっかり行政が入っていくというのは大前提だとは思うんですけども、その大前提があった上での大府市の取り組みというのはどうなんでしょう。今後全国に広がっていくんでしょうか。

名古屋大学大学院 内田教授:
「実際に子どもを早く学校に登校してほしいと思っている保護者、現状でまさに小1の壁を感じている保護者ってたくさんいるんですね。そういった意味では、おそらくこれから広がっていくだろうなと。全国にこの大府市の取り組み広がっていくという風に思いますね。ただ一方で、行政に丸投げするという形ではなくて、子育て世代の働き方をどうするかというのは、これ企業としてもしっかりと考えていかないと。行政がお金を使って準備してくれた。じゃあ企業はもう何も考えなくていいっていうことではなくて、やっぱり社会全体で子育てをどうするのかという風なことを考えていくべきだというふうに思いますね」

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