名物「飛騨牛乳」がなくなる? 製造元が3月廃業へ、給食や土産に影響も 飼料高騰に苦しむ酪農業
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岐阜県の飛騨地域を中心に愛されていた「飛騨牛乳」の製造元が廃業することがわかりました。慣れ親しんだ人たちからは惜しむ声が聞かれますが、いま酪農業界全体が苦境に立たされているといいます。
岐阜県高山市で子どもたちからも愛されているのが「飛騨牛乳」です。
飛騨地方の多くの学校で飲まれているといいます。
そんな「飛騨牛乳」というブランドが、姿を消すかもしれない危機に直面しているといいます。
設立75年、名古屋や東京にも出荷

飛騨牛乳を製造販売する「飛騨酪農農業協同組合」が、3月末に解散することがわかりました。
設立から75年の歴史を持ち、高山市や下呂市の酪農家などで組織・運営されていたこの組合。飛騨産100%の「顔の見える牛乳」と掲げ、地元だけでなく、名古屋や東京などにも商品を卸していました。
過大投資と円安、高齢化が破綻の要因
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経営破綻の大きな原因となったのが、「工場の建設」でした。
飛騨酪農農業協同組合によると、約15年前に完成した今の工場の建設に過大投資をしたことで、多額の借金を抱えることになったといいます。
それに加え、円安でエサ代の高騰や高齢化により、農家の数も減少。現在は工場建設前と比べると半数以下の11戸になってしまったといいます。
組合長「ブランドを残すよう話を進めている」
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組合の解散に高山市民は…。
「突然の話という感じだった。なくなるのは寂しい」
「毎日牛乳を健康のために飲んでいるので、地元の牛乳がいい」
飛騨牛乳の商品を販売している土産物店「飛騨物産館」。
牛乳だけでなく、飛騨牛乳を使ったヨーグルトやアイスなどを販売していて、観光客からも人気が高いといいます。
「飛騨物産館が始まってからずっと取引をさせてもらっている。50年近くになりますかね」(飛騨物産館 蒲正巳さん)
こちらの店には今月、組合から連絡があったといいます。
「組合を解散して終了させていただきますとお知らせしてもらった。長らく続いてきたところだったので非常に残念な思い」(蒲さん)
飛騨酪農農業協同組合の岩長明宏組合長は、メ~テレの取材に対して、解散後について「ブランドを残すために現在他社と協議していて、何品か『飛騨牛乳』という名前を残してもらえるように話を進めている」と話しています。
今年の夏以降をめどに復活を目指しているということです。
酪農家「経営難の最大の要因はエサ代高騰」
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牛乳を取り巻く環境の変化。
酪農業界では数年前から厳しい状況が続いており、愛知県でも廃業する酪農家が後を絶たないといいます。
愛知県田原市にある鈴木牧場。経営危機の一番の理由となっているのがエサ代の高騰です。
「飼料の高騰や、資材関係も上がっていますし、それに対して牛乳の価格が上がってこない。特に愛知県は輸入飼料が多いので、為替の影響で大きく左右されてしまう」(鈴木牧場 鈴木雅隆さん)
愛知県によりますと、10年前に355戸あった酪農家は現在199戸に激減しています。
鈴木牧場では約300頭の牛を飼育していて、10年前と比較すると、1日のエサ代は約9万円上がったといいます。
少しでもエサ代にかかるコストを抑えるため、ビールかすや、おからを使うなどして対策していますが、厳しい状況が続いています。
「先が見えないのがすごく不安です。消費が進んで牛乳の価格が上がれば将来の光じゃないですけど…。できるだけ多く飲んでもらえると幸いです」(鈴木さん)
エサ代高騰、牛乳価格に転嫁できず
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帝国データバンクの調査によると、2023年度における酪農業者の約4割が業績は「赤字」と回答し、約7割が「業績悪化」と回答しました。
エサ代の高騰も著しく、牧草が最も高騰した2022年度は2020年度に比べて1.6倍。
これに対して、パック牛乳の価格は、2020年度とほとんど変わっていません。
エサ代は上がっても、商品価格に転嫁できない状況にあります。